先週水曜日から出張で大阪方面に行っておりましたが、仕事の合間に中学時代の友人と久しぶりに再会しました。
ほぼ10年ぶりでしたが、お互い同じペースで齢を重ねているせいか、あまり変化に気づきません。
「全然変わらんなぁ。元気そうやねぇ。」と言う挨拶で会話は始まったのですが、彼には大きな変化があったのです。
5年前に右目が見えにくくなり検査してもらったところ、脳に腫瘍が見つかり手術したのだそうです。
手術は成功したものの、不運なことに腫瘍のできた場所が右耳の聴神経のすぐ近くだったため、やむなく聴神経を含めて部位全体を切除することに・・・。。
結果的に、右の聴力を完全に失うことになりました。
彼は子供の頃から左耳が少し聴こえ難く、右耳でカヴァーしている状態でしたから、手術の日以来、その十分ではない左耳だけに頼って生活していることになります。
「障害者手帳も持っているよ。でもまったく聴こえないわけじゃないし。」と笑顔で話してくれた時は、さすがに胸がつまりました。
私の知人・友人の中でも、昔から飛びぬけて純朴で誠実な男でしたが、それは今も全く変わりません。
もう、特別天然記念物に指定したいくらい・・・。(笑)
しかも驚いたのは、大変な病魔に襲われたにもかかわらず、彼はとにかく明るいのです。
そんな彼の表情に私は救われた思いがしましたが、同時に、ネガティブに考えないで、まっすぐ前をみる勇気を教わった気がしました。
そんな彼から、突然「ベートーヴェンの皇帝で、何かいいCDある?」と聞かれました。
もともと筋金入りの読書家・映画好きで、音楽にも鋭い感性を持っていた彼のことですから、果たしてどんなディスクを推薦したものかと、しばし考えて回答したのがこのグルダの演奏。
バックハウスもブレンデルも勿論素晴らしいし、個人的に大好きなラローチャ盤やギレリスがルートヴィヒと組んだ盤にしようか迷った挙句、結局グルダ盤を推薦することにしました。
幸いグルダのディスクは持っていなかったようで、早速ショップに買いに行くとの由。
気に入ってくれるといいのですが・・・。
推薦した手前、私も久しぶりにじっくり聴いてみようと思い、ディスクを取り出して聴きはじめました。
第1楽章冒頭のカデンツァから魅力十分。
「変ホ長調の音楽というのは、こんな色で鳴ってほしい」という、まさに理想型。
明るく堂々としていて、しかも流れがスムーズ。湧き出てくる音楽の中に、常に弾力性が感じられます。
さすがグルダ!
そして、シュタイン率いるウィーンフィルも、豪快な中に、「ああ、ウィーンフィル!」と感じさせる素敵な音色と豊かな表情で、グルダを盛り立てています。
また、第2楽章で聴かせる弱音の美しさと、しなやかな表現力も特筆もの。
弱音でも、リズムの拍動が常に感じられるので、決して音楽が沈み込むことがありません。
あらためて、実に素晴らしい演奏だと感じ入りました。
このディスクを推薦してよかった。
少しだけ、ほっとしています。(笑)
<曲目>
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73『皇帝』
<演奏>
■フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
■ホルスト・シュタイン(指揮)
■ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<録音>1970年
ほぼ10年ぶりでしたが、お互い同じペースで齢を重ねているせいか、あまり変化に気づきません。
「全然変わらんなぁ。元気そうやねぇ。」と言う挨拶で会話は始まったのですが、彼には大きな変化があったのです。
5年前に右目が見えにくくなり検査してもらったところ、脳に腫瘍が見つかり手術したのだそうです。
手術は成功したものの、不運なことに腫瘍のできた場所が右耳の聴神経のすぐ近くだったため、やむなく聴神経を含めて部位全体を切除することに・・・。。
結果的に、右の聴力を完全に失うことになりました。
彼は子供の頃から左耳が少し聴こえ難く、右耳でカヴァーしている状態でしたから、手術の日以来、その十分ではない左耳だけに頼って生活していることになります。
「障害者手帳も持っているよ。でもまったく聴こえないわけじゃないし。」と笑顔で話してくれた時は、さすがに胸がつまりました。
私の知人・友人の中でも、昔から飛びぬけて純朴で誠実な男でしたが、それは今も全く変わりません。
もう、特別天然記念物に指定したいくらい・・・。(笑)
しかも驚いたのは、大変な病魔に襲われたにもかかわらず、彼はとにかく明るいのです。
そんな彼の表情に私は救われた思いがしましたが、同時に、ネガティブに考えないで、まっすぐ前をみる勇気を教わった気がしました。
そんな彼から、突然「ベートーヴェンの皇帝で、何かいいCDある?」と聞かれました。
もともと筋金入りの読書家・映画好きで、音楽にも鋭い感性を持っていた彼のことですから、果たしてどんなディスクを推薦したものかと、しばし考えて回答したのがこのグルダの演奏。
バックハウスもブレンデルも勿論素晴らしいし、個人的に大好きなラローチャ盤やギレリスがルートヴィヒと組んだ盤にしようか迷った挙句、結局グルダ盤を推薦することにしました。
幸いグルダのディスクは持っていなかったようで、早速ショップに買いに行くとの由。
気に入ってくれるといいのですが・・・。
推薦した手前、私も久しぶりにじっくり聴いてみようと思い、ディスクを取り出して聴きはじめました。
第1楽章冒頭のカデンツァから魅力十分。
「変ホ長調の音楽というのは、こんな色で鳴ってほしい」という、まさに理想型。
明るく堂々としていて、しかも流れがスムーズ。湧き出てくる音楽の中に、常に弾力性が感じられます。
さすがグルダ!
そして、シュタイン率いるウィーンフィルも、豪快な中に、「ああ、ウィーンフィル!」と感じさせる素敵な音色と豊かな表情で、グルダを盛り立てています。
また、第2楽章で聴かせる弱音の美しさと、しなやかな表現力も特筆もの。
弱音でも、リズムの拍動が常に感じられるので、決して音楽が沈み込むことがありません。
あらためて、実に素晴らしい演奏だと感じ入りました。
このディスクを推薦してよかった。
少しだけ、ほっとしています。(笑)
<曲目>
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73『皇帝』
<演奏>
■フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
■ホルスト・シュタイン(指揮)
■ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<録音>1970年
ご無沙汰してます・・。
すっかり春めいてまいりましたね。
皇帝といえば 20年前友人にミケランジェリとたぶんウィーンフィルの録音をテープにダビングしてもらい毎晩聴いていて すり切らせた大好きな演奏があります。
その友人も若くして亡くなり、テープもなくなり、それ以来 ぽっかり穴のあいた 私の「皇帝のポジション」です。
この曲のことをいつか書こうと思っていたので(いつになることやら・・・)、拝読させていただき、素通りできず(笑)ちょっと寄らせていただきました。
新しい季節 エネルギーいっぱいの堂々たる作品ですね。
困難にめげず がんばりましょう!と思います・・。
グルダのも全くもって素晴らしいですね。
では また。
ミケランジェリの皇帝ですか・・・。
ひょっとして、1980年代にジュリーニ&ウィーン響と組んだライブ録音かしら。
もしそうなら、私も大好きな演奏です。
確かこのメンバーで、1番、3番、5番の3曲をDGに録音していたはずです。
全く余談になりますが、以前B&Wの高級スピーカーを某オーディオショップで試聴させてもらっていた時に、まさにこのコンビの1番のコンチェルトの第2楽章(上記DG盤)がかかっていました。
店の人が「どうです。いい音でしょう」と話しかけてこられたので、「いい音だけど、ミケランジェリの音はこんなに重くないはず・・・」と言ったら、途端に本気モードに変わって、「そんな感想を言われたのは初めて!」とアンプもプレーヤーも、そしてケーブルまで、大汗かきながら全部とっかえてくれました。
そして出てきた音は、ほんとにほんとに素晴らしい音。
まさに私のイメージどおりのミケランジェリが、そこにありました。
脱線してしまいましたが、そのミケランジェリの素敵な「皇帝」をテープに録ってくださったご友人も亡くなってしまわれたのですね。
>それ以来 ぽっかり穴のあいた 私の「皇帝のポジション」です。
とてもよく分かります。
でも、空位になっている皇帝の席が、ある日突然、思いがけない人物で埋まるような気もします。
その日が早く来ますように・・・。
ありがとうございました。
人生には、喜びや楽しいことばかりでもなく、つらいことも多々あり、そうして人間は成熟していくのですね。
ジャン・ジャック=カントロフのコンサートで、補聴器をつけて聴いてらしたご老人を思い出しました。
音楽が、私たちの生活にもたらす様々な喜びを感じる春です。
romaniさまご推薦の「皇帝」は、きっと耳ではなくその方の心に届くと思っています。
50肩?の難からの回復も祈っております。
温かい励ましのお言葉、ありがとうございます。
>人生には、喜びや楽しいことばかりでもなく、つらいことも多々あり、そうして人間は成熟していくのですね。
本当にそう思います。「神様は、その人に背負いきれないほどの苦しみは与えない」と言われますが、自分の置かれた状況、あるいは運命に対して、逃げないで真っすぐに取り組むことで、きっと道は開けるのでしょうね。
しかし、正直に言いますと、自分にその試練がやってきたときに、果たしてそれだけの強さがあるか、いささか心もとない気持ちもします。
でも、どんな場合でも、しっかり目を開けて前を見ることで、少しでも自分を強くしていきたいと、今回実感しました。