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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

大ナマズとポルシェの墓場

2009-06-29 14:44:08 | よしなしごと
 母の病院への往復、「見るべきものは見つ」といった愚痴を書きましたが(6月26日付拙日記)、気を取り直してより細心に辺りを見回すこととしました。
 午前中ですでに三十度以上、帽子嫌いの私にとっても自転車で行くには着用は致し方ないようです。
 
 私のように公明正大なる者、白昼、おのれの花のかんばせを帽子なんぞで隠したりはしないものですが、とはいえ、もとより薄い脳味噌、これ以上蒸発させてはなるものかと、仕方なしにそれを目深にかぶって出かけました。
 怪しいおじさんの出来上がりです。

 怪しいおじさんは自転車を漕ぎます。早く漕げば漕ぐほど、体に当たる風が豊富で涼感が得られます。ただし、早く漕げば漕ぐほど、肉体への負荷は増し、汗ばんでくるのです。
 この二律背反を止揚するには熟練が必要です・・・というほど大したことではなく、ほどほどのところにとどめればいいのです。

    
     この鳥、醍醐天皇から従五位の位を授かった偉い鳥だそうです

 川を渡るとき、ゴイサギを見かけました。実に忍耐強いハンターです。
 餌になるものが捕獲範囲内に至るまで、身じろぎもせず待ちます。
 このサギ、アオサギとともに結構人擦れがしていて、人が近くによってもあまりあたふたしません。反面、シラサギの仲間は警戒心が強く、カメラを向けただけでサッと飛び立ちます。サギ心・・・いや猜疑心が強いのでしょう。

 同じこの川で、ゴイサギとは少し離れた場所で大変なものを見ました。
 ゴイサギが狙うだけあって、小魚たちが群れています。オイカワでしょうか、橋の上からでもその婚姻色が分かります。ひときわ大きな雄が反転するごとに、コバルトとレッドの色合いがキララッと光るのです。

 それを見ていたときでした。川縁のえぐれた部分から、突然黒い影が躍り出たのでした。
 体長は五十センチほどあります。すわ、こんな街の郊外でオオサンショウウオがと思いました。しかし、よく見るとそれはナマズでした。たぶん、群れ遊ぶ魚群のうちから一尾をせしめたのでしょう。散り散りになった魚群を尻目に、悠然ともとのえぐれへと戻って行きました。

 ナマズの揺らめく尻尾がその住み処へ消えてからも、しばらくの間、息を飲んで見ていました。
 しかし、ナマズはとりあえずその一尾で満足したのか、もう現れませんでした。いつの間にやら、一瞬散り散りになったオイカワたちが、また群れをなして遊び始めました。まるで何ごともなかったかのように・・・。
 それもまた自然の摂理なのでしょうか、ここは危険だとして、場所を変えることはないようなのです。

 
               ポルシェのお尻

 私がポルシェの墓場と呼んでいる場所にさしかかりました。
 ここは二年ほど前に見つけたのですが、黒塗りの二台のポルシェが廃車状態で置かれています。
 こんなに形骸だけになっても、まだ外したり持ち帰るものがあるのか、どんどん惨めな形になって行きます。
 百恵ちゃんが歌っているような「真っ赤なポルシェ」でなくてよかったと思います。

 

          夏草や兵どもが夢のあと・・・でしょうか

 ついでながら、紅白に出た折、NHKはポルシェの固有名を許さず、百恵ちゃんはこの部分を、「真っ赤な」と歌ったのでした。しらけました。ポルシェ・フェチではありませんが、ポルシェは車一般やトヨタではないことによってあの詩が成り立っているのです。固有名詞はそれ自身のイメージとともにあり、普通名詞には還元できないものを持っているのです。
 「百恵ちゃん」が「真っ赤なポルシェ」と歌うところにこの歌のアウラが浮かび上がるのだと思います。

 あ、脱線ですね。
 もうひとつ見てきたものがあります。
 結構意外なところに蓮根畑があるのです。
 別に沼地でもなく、周りも畑ばかりで水田すらない場所にぽつんと蓮根畑があるのです。
 去年は花の時期にここを通ることがありませんでした。花の時期は七月から八月といいます。今年こそ、その花にお目にかかり、写真になど収めたいものです。

 
           深い緑の葉が重なり合うようにして

 といったわけで、病院への行き帰り、心を改めてものを見ようと思います。
 自然は、ものを見ようとするものに対しては、自分を開示してくれるのではないでしょうか。
 そう、あのゴイサギのように。
 あるいは、あの大ナマズのように。
 そしてまた、やがてその開花の瞬間を見せてくれるであろうハスの花のように。

    川辺には川辺の掟自転車を漕ぎ行く方にわたしの掟    六

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1 コメント

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Unknown (只今)
2009-06-30 10:09:25
 生き延びて
    見るべきほどのもの見つも
       かご深くして掟破れず
     
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