六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

ブキッチョさんが「麦わらイサキ」を捌く。

2017-07-10 00:46:58 | よしなしごと
 釣り好きの知り合いから、釣果のおすそ分けをいただく。
 それも釣行の帰途のお立ち寄りだから、何時間か前までは泳ぎ回っていた鮮度抜群の代物だ。
 「わざわざお立ち寄りいただいてまで」と恐縮する私に、「どうせ帰り道ですから」とおっしゃるが、たしかに私の家は漁場の北陸とご自宅の間にあるとはいえ、高速で直行できるところをわざわざ降りてご持参いただくお手間を取らせたことには間違いない。

 今回の魚は旬のイサキ。産卵前のこの頃が一番美味しいとされ、「麦わらイサキ」「梅雨イサキ」などと呼ばれて珍重される。
 「うちは少人数ですから」と一番小さいのをいただいたが、それでも30センチは優に越える。

          

 夕食を済ませたあとだから、いただくのは明日になるが、捌くのは早いほうがと包丁を握る。
 飲食店を経営していたが板場ではなく、彼らの仕事の見よう見まねで、しかももともと手先が不器用な方だから、あまり自信はない。しかし、せっかくいただいたもの、少しでもうまく調理したいと集中する。

          

 方針としては、半身はその鮮度を活かしてお造りで、そして後の半身は火を通したムニエルかなんかで、そしてアラは煮付けでということにする。
 それに従い、まずは三枚におろす。
 おろす過程で、産卵前ということで卵があったので、これと肝とはアラと一緒に煮るということで捨てないでおく。

          

 頭からいわゆるカマの部分を外すが、これは中骨のアラと一緒に煮るつもり。また、両身ともに腹骨をすくうようにしてとるがこれもアラと一緒に煮るつもり。
 刺身にする方の片身は、背身と腹身を分かつ中ほどの血合の部分をとるが、これも捨てないでアラと煮るつもり。

          

 刺し身にする方の背身、腹身それぞれの皮をひいたら、背身の方にこの魚独特のきれいな縞模様が現れた。
 この短冊はそのままキッチンペーパーにくるみ、サランで巻いて冷蔵庫にしまう。
 刺身とムニエル、それにアラ煮、明日の食卓が楽しみだ。

 衣食住などの形而下的な欲望から目を背けていた時期がある。しかし、いまはそうではない。形而上的なものは、たしかに形而下的なものからの超越によって可能になるが、かといって形而下的なものを無化することはできない。それらはどこまでもついて回る。それを無視した形而上的なものやその命題には、たぶん、どこかに嘘が、時としてとても危険な嘘が仕込まれている。

 などというもって回ったことを考えなくとも、うまいものはうまい。ましてや、海なし県にいて、座して鮮魚を食らうなんて贅沢は理屈抜きに素晴らしい。
 Yさん、ありがとうございます。
 お礼は出世払いということで・・・・って、私にはもう出世のチャンスなんかはないのだが、さてどうしよう。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 風邪 | トップ | ブキッチョさんと「麦わらイ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。