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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

腰痛のモルバランが掟の門を通りすぎる

2011-01-14 23:38:36 | ポエムのようなもの
 昨年末来の腰痛が一進一退するなか、
  こんな戯れ歌を作ってみました。

   
   モルバランは旅に出た
   黒い森を抜け
   滲むような泉の湿地を除け
   半透明な街を進んだ

   そのときモルバランは
   老人であり 少年であり
   少女ですらあった
   母の子でありその父であった

    

   だからすべてがモルバランの
   体内に宿ったのだが
   それらが重すぎたので
   モルバランの腰は激しく痛んだ

   腰の痛みは旅の友と
   モルバランはひるまず進む
 
   老人はあえぎ
   少年は飛躍し
   少女は戸惑いながら
   進む 進む 進む

    

   カフカの門が現れた
   モルバランは知っていた
   この門の不条理を
   だからひとまず立ち止まった

   彼の中の少年が
   立ち塞がる門番をなじった
   門番の冷笑は少年を
   しこたま傷つけた

   彼の中の少女は
   美しい詩を門番に捧げた
   門番はそれを懐中に収めたが
   それだけだった

    

   モルバランが近づいた
   この門を通って通らないのと
   通らなくて通るのと
   どちらがいいのかと尋ねた

   門番は動揺した
   上司に指示を仰ぐといい
   ダイアルのない黒い電話で
   交換手にそれを告げた

   モルバランは構わず進む
   門はあくまでも厚かったが
   するりと通り抜けることが出来た
   それはモルバランのための門だったから

    
 
   掟の門のはずなのに
   掟などは見あたらなかった
   掟はどこかに置かれる様なものではなく 
   だから新しい旅立ちだけがあった
 
   モルバランは今日も旅する
   少年と少女と老人と
   そして腰痛を連れて
   メルリッチェルの待つあの草原まで
 

 

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