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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

生活保護は施しではなく権利です。その制限は傲慢です。

2013-07-07 15:47:07 | 社会評論
 私の前回の記事に対し「九条護。」さんという方から以下のようなコメントをいただきました。
 今回はそれに対する回答です。

九条護。さんのコメント===========================
 生活保護の問題にはかなり誤解があります。生活保護を受けている方にはその原因があるはずです(失業、病気、親族が助けない、など)。だったら、その原因を取り除くことを考えるべきでしょう。日本には、アメリカと違い、公的医療保険があり、年金制度があり、難病助成の制度があり、雇用保険や職業あっせんなどの制度があります。また、三親等内の親族には扶助義務があります。まず、それらを利用して、自活することを考えるべきではないでしょうか。管理人さんは、社会保障について様々な制度が日本にはあることを御存じなく、生活保護だけを金科玉条に考えておられる感じがします。生活保護の制度を利用する前に、まず、「自分で働くよう努力すること」、憲法には勤労の義務があります。さらに、日本の生活保護は現金支給でしかも医療保険は無料と、他国と比べて十分恵まれています。アメリカは現物支給、ドイツでは職業訓練が給付の条件です。日本では、生活保護を利用しなくても民事的に親族に扶助を求めることができます。なぜ、生活保護の制度を是正することで大騒ぎするのか理解できません。回答をお願いします。

 =======================================

        

 九条護。さんにお答えします。

1)「生活保護を受けている方にはその原因があるはずです」はその通りでそれが近年増加していることもご存知ですね。「だったら、その原因を取り除くことを考えるべきでしょう」もその通りです。その要因の大きなものとして格差社会が考えられますが、それが「一部の人間が貧乏になっても結構だが」という先般の九条護。さんのような立場によって増進されていることを付け加えておく必要があるかもしれませんね。

 とはいえ、格差の是正はそんなに簡単なものではありませんから、生活保護の増加がそれに起因することはひとまず抑えておき、「改定」内容について述べましょう。

2)ひとつは、これまでも問題になってきた申請者を窓口で追い払う「水際作戦」を、緩和するどころか一層強化する方向で検討されているということです。
 これまでは慣例として口頭でも良かった申請を、書類でもって、しかも厳格化しました。
 しかし、給与明細をもらえず収入がわからない、貯金通帳やキャッシュカードをなくしている、DV被害を受けているが保護命令が出ていない、 などのさまざまな事情で用意できない人たちはどうしたらいいのでしょう。
 
 また従来は、福祉事務所が手続きの当事者であったものが、「申請者自身」とされ、自らが保護を必要としている状態であることを証明しないと申請が認められない事態になります。ようするに、困窮度の高い人ほど申請しにくくハードルが高くなったのです。

3)もう一つは、九条護。さんも触れていらっしゃる「扶養義務の強化」です。
 今回の改定では、
(a)扶養義務者に対して資産や収入の状況についての報告を求めること
(b)扶養義務者の雇用主や金融機関などに対して、書類閲覧や資料提供・報告を求めること
 などが求められます。

 ようするに親族へ通知が行くのみならず、その親族の勤務先や取引銀行への紹介などが行われるとうことです。
 それを考えたら、「親族に迷惑が及ぶのは」とつい及び腰になりませんか?
 また、あなたに、行方不明の親族がいてある日突然そうした紹介があり、あなたの全財産が調べられたらたらどう思います?

4)その他にもいろいろ問題があります。
 医薬品はジェネリックに限定され、医療機関外の使用制限や介護関連の見直しなど受給者の健康面での差別も余儀なくされるのです。

5)これらが片山さつきの提起に端を発する「改正」の問題点ですが、その骨子は、いかに困窮している人を援助するかということよりも、いかにそれらを制限し、生活保護を受けさせないようにするかであるかは明らかです。
 ここで念の為に、先進諸国の人口あたりの生活保護対象者の比率を見ておきましょう。

 ・ドイツ 9.7% ・イギリス 9.2% ・フランス 5.7% ・スエーデン 4.5% 
  そして日本は、1.6%なのです。

 先進資本主義国はその体制が必然的に格差を生み出すものであることを十分知っており、そのための方策をとっているのですが、この国はそれすらも無視する野蛮な資本主義国だといえます。

6)片山さつきが吠えたて、今日の改正騒ぎになった不正受給率についてですが、それがどれほどだか御存知ですか?もちろん、あってはならないことですが、全支給額のうち、0.35%ほどなのです。
 そしてこれらは現行法でも十分取り締まることができるのです。

 この不正受給の阻止を言い立てる改正が、先にみた窓口での水際作戦の強化によって、あるいは親族との兼ね合いなどで、本来その対象者たる人々を追い払う比率は0.35%をはるかに越えると思うのですがどうでしょう。

7)最後にいい添えます。
 日本の生活保護適用者は年々増加し、現在では、200万人ほどだと言われています。
 しかし、この国には法で定める生活保護基準以下の所得しかない人が一千万近くいて、生活保護はそのわずか20%を補足しているにすぎないのです。そしてそれが受給者が1.6%しかないという数字によって現れているのです(ちなみにイギリスの捕捉率90%超です)。
 
8) 九条護。さんはおそらく、自分は絶対に生活保護の対象にならないとお考えなのでしょう。学歴にも地位にも恵まれていらっしゃるあなたは実際にそうかもしれません。
 で、あればこそ、想像力を働かせていただきたいのです。
 そして、経済的に困窮している人もお情けにすがったり、いわれなき義務に服するのではなく胸を張って生きてゆく権利があるということを認めるべきだと思うのです。
 それが人間の共同体の普通のあり方だと思うのですがいかがでしょうか。

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4 コメント

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Unknown (にんじん)
2013-07-07 17:36:43
 戦前日本の家庭は、
主人(父親)の稼ぎによって支えられ、「夫婦相和シ」と結婚することは当然の前提とすることによって成り立っていました。
 この家族制度は、結婚しない者、結婚しても子供を成さない者は不具者扱いをすることで維持され、これに加えて一旦緩急の場合は、村八分を伴う近隣の共助によって切り抜けてきました。

 基本的人権を謳った戦後の日本は、
個人の自主を確立拡大する中で、この家族と共同体は崩壊せざるを得なくなりました。
 同時に、従業員の家族までも面倒をみたかっての日本型経営も成り立たなくなり、多くの生活困窮者を生み出すことになりました。

 種々の事情(病になっても家族はいない独りだけ等等)で生活に困窮している人が、皆みな生活保護を申請したら200万人ではすまないでしょう。
 勿論、不当に生活保護を受けている不心得者はいますが、多くの人は生活保護を憲法上の基本的人権である生存権ととらえないで、お上からのお情けとしてとらえて受給することをヨシとしない人が殆どだからです。
 〈生活保護者を如何に減少させたか〉、これは研修会の議題です。

 そこで九条クンに伺いたいことがあのます。
 まず「結婚」ということをどうとらえ、
それと関係する「家族」というものをどう考えておられるか、ということ。
 私は少額であれ蓄財できることを幸せに思っている1人ですが、それは病気や老齢になった時に少しは周りに面倒をかけなくてもすむことになるのではないかとの淡い思い故ですが、そうしたことが充全とはいえない状況が年毎に増えていくでしょう。
 家族が崩壊して、みんなが独りひとりという時代になってきたわけですが、今後をどう考えたらいいと思いますか?
 「救済手段は講じられている」では不誠実です。
 なぜなら、年金始め社会保障システムは潰れつつあるからです。

 
返信する
Unknown (只今)
2013-07-07 18:49:47
◆「生活保護の申請手続きを簡素化し、
 かつ申請者が尊厳をもって扱われることを
確保するための措置をとる」
  以上は、この5月に国連の社会権規約委員会が日本 に求めた所見ですが、政府は知らんぷり。

★現在、生活保護の補足率(保護基準以下で生活保護を 受給している割合)は政府の発表でも17%に過ぎず、 本来受給できる人の6人に1人しか受給していません。

■生活保護法の基本理念ならびに制度の根幹である「無差 別平等の原則」「必要即応の原則」は、衆院厚生労働 委員会の審議で確認されました。
 にもかかわらずの、改悪案は?

☆お涙ちょうだいドラマは拒否するが、
 それに涙する人をせせら嗤う人
 これも敬遠したい。
 
 
返信する
Unknown (さんこ)
2013-07-08 09:54:18
九条護。さん

朝日訴訟というのをご存知ですか?

お得意のネットで、調べて下さい。
返信する
Unknown (六文錢)
2013-07-09 14:55:23
*前日の記事のコメント欄にも同様なものを載せました。

  上記の件についてですが、改めて九条護。さんからコメントがあり、そのコメントをそっくりそのまま、九条護。さんに反論された方にメールで転送いたしました。
 また、九条護。さんにもそのような措置を取らせていただいたことをメールいたしました。

 理由としてはおそらく平行線であり、それをこのブログで延々と続けたくはなかったからです。
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