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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

忙中閑あり 秋の散策

2014-10-28 03:00:18 | 日記
 ちょっとまとまった郵便物を出す必要があったので、そのための通信用具などを買うために近くの郵便局へ徒歩で出かけた。
 ここんところ名古屋へ出かける用件が多く、自宅から自転車やバスで駅まで直行というケースが多かったため、近所を徒歩で巡るのは久しぶりである。

 何やかやとしなければならないことは多いのだが、自分の事務処理能力を信じて(過信?)、忙中閑ありで、のんびり散歩気分で出かけた。

 空は完全に秋のそれである。「天高く、馬肥ゆる候」という言い方は最近あまり聞かないから若い人には通じないかもしれない。だいたい、私が幼いころを過ごした田舎のように、人と馬とが身近な存在ではなくなったせいもあろう。

          
 
 そういえば田舎ばかりではない。街なかでも馬車が往来し、騎乗した軍人がとおりかかることがあった。その馬が、自分のうちの前で糞でもしようものなら、慌ててちりとりとほうきを持って飛んで出て、それを持ち帰ったものである。花壇などの肥料にするためである。
 今なら、憤慨(糞慨?)した輩が新聞に投稿したり、損害賠償を訴えかねないであろう。

 話が逸れた。
 道中見た植物などについて記そう。

 この辺りの秋の果物といったらなんといっても柿だろう。
 しかしこの柿はいわゆる渋柿で、このままでは食べられないと思う。皮を向いてしばらく天日干しにすると妙なる甘味を帯びるに至る。

          

 そのすぐ下にはヒメツルソバの群落がある。去年も書いた比喩であるが、まるで金平糖をぶちまけたような有り様である。
 この花、一つ一つは1cmに満たないほどの可愛いものであるが、その繁殖力たるや獰猛ともいえるもので、ここを起点に、舗装された道路脇の未舗装の僅かな土を占拠し、ン十メートルにわたる帯状の群落を為すに至っている。



 この花、英語では Victory Carpet というのだそうで、なぜそんな呼び名かというとその葉っぱに V の字がでているからだという。拡大したものを観てみると、たしかに褐色の V の字がでている。人間の想像というか連想は面白いものだ。

          

 しばらくゆくと、花自体が数十センチもあろうかという朝鮮朝顔の一種、シロバナヨウシュチョウセンアサガオ(白花洋種朝鮮朝顔、英名jimson weed, devil's trumpet, thorn apple, tolguacha, datura など)がいままさに開花しようとするのに出会った。 
 この花の「朝鮮」というのはとくに朝鮮が原産地ではなく、外来種というぐらいの意味だという。その他、この国には、やたら「唐」がつく植物があるが、これらもとくに唐の国が原産地だというわけではない。
 英名の devil's trumpet はただならぬネーミングだが、それはこの一族が漢方などの薬として用いられる一方、摂取が過剰だと毒物として機能するからだ。

              

 これはプラトンやソクラテスが用いたパルマコンという言葉が、毒をも薬をも意味し、その言葉をハイデガーが用い、さらにそれをデリダが脱構築の典型として用いたことなどを連想させて面白い。

 ついで出会ったのはお茶の花である。2cmほどの小さな花だがそれなりの貫禄がある。よく見ると、何かの花との共通性が見えてくる。そう、この花、椿の仲間なのである。そして中国語では椿のことを「山茶」というらしい。ちなみに「椿」は日本で生み出された文字だとのことである。

   

 私の散歩はいささか慌ただしい。うちへ帰って、必要な書類や葉書、封筒をプリントアウトし、郵便物を完成させねばならない。
 しかし、久々の散策は面白かった。しばらく会わなかったその自然は確実に違う様相を呈していた。まさに、「ひとはいざ、心もしらずふるさとは」である。

 前回の記事(10月22日)に記した全面倒伏した田は、まだ刈られないままである。

 






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2 コメント

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花の名前 (漂着者)
2014-10-28 23:20:00
 ヒメツルソバの群落、壮観ですね。ひとつひとつは可愛いのに。でもこれをVictory Carpetと名付ける連想の仕方が勇ましくて、たたかいの西洋文化を感じます。

 朝鮮、唐がこの国では外来一般をさすというのも、改めてナルホドです。からくりはもともと唐繰ですし、からくり山車の上で変身するのは唐子人形ですね。花はそれ自身きれいですが、名前にも文化の足跡や色彩があって面白いですね。
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「和製漢字」の妙 (六文銭)
2014-10-28 23:57:49
 花の名前ですが、最後の方に書いた「椿」が日本で作られた文字であることを知って少し驚きました。 
 そういえば、お寿司屋さんの大きな湯のみ茶碗に書いてある魚の名前なんかも大半は和製の漢字のようですね。
 漢字という精妙な表意文字は中国文化の偉大な発明ですが、その傍らにあって、最初はそれを表音文字として利用しながら(『古事記』など)、やがてひらがな・カタカナなどを発明し、独特の漢字仮名交じり文という表記を生み出したのは私たちの祖先の実に巧みな功績といえます。
 そしてついには、大陸とは違ったこの地の風情や情緒を表現するための「和製漢字」まで発明してしまったのですから大したものです。
 本場の中国がいわゆる簡体文字に移行してからというもの、漢字の持つ表意性はむしろ私たちが用いる漢字仮名交じり文のほうがよりよく保っているようです。
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