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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

大聖堂と美術・博物館地域の散策 八五歳ヨーロッパ一人旅

2024-07-30 16:35:07 | 旅行

 登るまでにどれくらい待つかわからないTV塔でグズグズしている余裕はない。朝方歩いた方面へ少し戻るようにベルリン大聖堂最寄りの地下鉄駅で降りる。地上にに出るとそこは広場で、 左手には目的の大聖堂、そして右手には15世紀に建造された王宮で現在は博物館・美術館として運用しているフンボルトフォーラムのどんとした威容、そしてその間には、先程、登るのを諦めたTV塔がすっくと立っている。あの麓で、先程あった大嵐もどきは一体何だったかの風情だ。

        

     

 大聖堂に向かう。ここは比較的近年建て替えられた(といっても100年以上前だが)とはいえ、緑青の3つのドームを備えた貫禄ある教会である。
 中へ入る。教会特有の荘厳な雰囲気は、私のような無信仰の観光客が多いにもかかわらず、さして失われることはない。それだけ壮大な規模を誇るのだ。

      

          

 私は此の旅で、この他にライプチヒで2箇所、ワルシャワで1箇所と全部で4つの教会へ入ったが、 ワルシャワのそれを除いてはすべてプロテスタントの教会であった。さすがドイツは宗教改革の地である。しかしそれとは関係なく、この4つの教会のうち最も祭壇が華美で光り輝いていたのがこのベルリン大聖堂であった。この事実は、この教会が代々プロイセン王の墓所であったことと関連するのかもしれない。

      

          

 教会を出て驚いた。その出口がまさに教会裏のレストランになっていたからである。このレストランを通らずに教会から出ることができない。まさに聖と俗とが共存しているかのような様相である。しかもこのレストランは、教会裏を流れる運河を見下ろす位置にあって、その運河をひっきりなしに観光船が往来するという賑やかさである。教会の正面と裏、その対比の鮮やかさにいささか驚いた。

      

     

 大聖堂の周辺には、先程のフンボルトフォーラムを始めとする数々の美術館博物館あるいは歴史資料館などがひしめき合うように存在している。この辺り一帯が美術博物館地帯と呼ばれるのもむべなるからである。
 しかしそのどれにも入らない。観光地での美術館博物館の見学は、労多くしてその成果が少ないことを知っているからだ。
      

     


 ロンドンに行った折の大英博物館が そうだった。あまりにも多くのものを見すぎて、かえって何も覚えていない。唯一あのロゼッタストーンがあったといのう事実は覚えている。加えて、日本のどのようなものを展示しているのかを見ようと思ったのが、折悪しく東洋部門は工事中 のため入場不可であった。
 パリのルーブルもそうであった。ミロのヴィーナスとモナ・リザ周辺は押し寄せる群衆と騒然とした雰囲気で、なんでこんなところに自分がいるのかわからなくなりそうだった。

      

                     


 しかし、例外もある。ロンドンの近現代美術館、テート・ブリテンへ行った際には、ちょうど「ピカソ・1937展」を行っていたので、特別料金は要ったが、他は目もくれずそれだけを観た。ピカソの油の乗り切った時期、これほどまとめて彼の絵を観たのは始めてだった。しかもなんと、青の時代の絵画数点も参考として展示されていたのだった。
 それらを観たあと、テート最上階のテームズ川を見下ろす窓際のレストランで、川面を行き交う船を眺めて飲んだビールは美味かった。
 パリでも、ルーブルに比べ、オルセーの方が観やすかった。印象派を中心にした展示も集中して見やすかったのかも知れない。

      

 そんな事もあって、このベルリンの美術館・博物館の集中地域でも、中の展示物はともかく、それらの建造物そのものの外観を楽しむにとどめたのであった。

      

 この辺は、フラフラ歩いていても結構楽しい。運河の水辺があり、広場があり、草っぱらがあり、木立もあってそれらのあちこちに歴史的建造物が独自の様相をもって建っている、40度近い日本から来た身にはほぼ5月頃の快適な散策であった。
 

コメント
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