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【寓話】 今に生きるデルフォイの神託

2022-05-13 11:29:17 | 社会評論

                     
 あるところに、 国境を接したAという国とBという国がありました。 この両国には過去いろいろなことがあり、B国の侵攻を恐れたA国は、もともとB国を仮想敵国としたようなある軍事同盟に急接近しました。
 一方、かねてよりその同盟による包囲をひしひしと感じ、警戒していたB国は、様々な理由を挙げてA国に攻め込み、とりわけ自分たちと親交が深いと称するA国の一定地域を掌握しにかかりました。
 
 当然、A国はそれに対し猛烈に反発し、軍事力をもって抵抗することとなりました。そしてそれを、A国が入ろうとしていた軍事同盟は全力をあげて支援しはじめました。その同盟国ではないが、その同盟の親方の飼い犬のようなN国なども早速、A国への全面支援を打ち出し、難民の受け入れなどを、これまでの難民拒否国であったことをかなぐり捨てて実施しはじめました。これまでは、何らかの理由で滞在期間を超えた外国の人たちを強制収容所まがいの所へ監禁し、殺しささえしてきた国がです。

 色んな所で、色んなものを青と黄色に塗り分け、あたかも自分が正義の側に立っているかのように「A国頑張れ!」と叫ぶのが流行っています。それはそれでいいでしょう。侵攻した側の「B国頑張れ!」とはいえないですよね。
 しかし、現実に目を向けてみましょう。その戦闘のなかで、兵士はもちろん、一般市民も含めて多くの人が毎日その生命を失っているのです。

 そんなとき、私たちがすべきことは、どちらかの側に立って「頑張れ!」と叫ぶことではなく、両方に向かって「もう、頑張るな!」ということではないでしょうか。そうです。まずは停戦こそが必要なのです。どっちが正義かなどは人の命にとってはどうでもいいことなのです。どうしてもそれにこだわりたければ、事態が済んでから論じればいいのです。

 とりあえず必要なことは、悲惨の終了です。人が死ななくていい事態の実現です。「平和」だとか「民主主義」とかいう包装紙も要りません。現行の悲惨をとりあえず終わらせること、そこへと知恵を働かせなければならないときなのです。

 冒頭に書いたことに戻ってみてください。A国はB国の侵入を恐れるあまり、反B国の軍事同盟に接近しすぎた結果、恐れていたB国の侵攻を招いてしまったのかもしれません。
 また、B国は性急にA国へと侵攻することによって、決定的にA国を反B国の軍事同盟側に組み込ませる結果になりました。さらには、やはり近隣のC国やD国を、反B国の軍事同盟の方へと踏み切らせる結果を招きました。
 
 ようするに、両国ともに、デルフォイの神託を回避しようとそれを避けるべく行為したにも関わらず、その神託を実現させてしまったオイディプスの悲劇のように、自分の行為でもって自分の望んでいない結果を招来するように動いてしまったのです。

 今世紀の情報網は従来より格段の差があります。今回の事態に至る何週間も前から、その可能性が語られていました。にもかかわらず、その間に、それを回避する措置がとられなかったところに暗澹としたものを感じないではいられないのです。

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