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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

コジェーヴ・FOUJITA・赤かぶの千枚漬け

2016-01-13 16:53:55 | 書評
 1月12日の平凡な日記から。
 少し勉強に集中できた。
 テキストはアレクサンドル・コジェーヴの『無神論』。面白い。
 
 世界内にある三つの対象をについて考える。
 1)世界内人間 2)世界内にあって人間ではないもの 
 3)人間でも世界でもなく、それゆえ「人間を含む世界」の「外部に」「ある」もの

 問題はこの 3) が有意味であるかどうか。
 有神論者 自己自身と自己が生きている世界とからなる全体の外部に何かがなお存在。
 無神論者 このような全体の外部には厳密な意味で何もない。
 ようするに有神論者にとってはこの外部は何かへの道であるのに対し、無神論者にとっては外部には何もないということ。
 ここまでは当たり前だが、事態はそれほど単純ではない。

               

 無神論者にとって外部は何ものでもなく無であり、したがって何らの関係も取り結べないのに対し、有神論者は外部には何ものかが存在し、それらはわれわれと何らかの関わりをもつとされる。
 ところで、この何ものかであるが、それが神であるとして、それをどう形容するかに一つの分岐がある。その何ものかはわれわれの絶対的他者であり、それらはいかなる属性をもつかという点では形容不可能であるとするのが純粋有神論である。
 
 しかし、形容不可能で属性を持たないものというのはすなわち無ではないか。だとすると、純粋有神論は無神論とほとんど同じになってしまう。
 ほかにもこんな類似が出てくる。
 純粋有神論での神的なものの形容不可能は、それらが複数あることを意味しないから必然的に一神論となる。
 そして無神論もまた、神々の差異そのものも含めてその実在そのものを否定するのだから一神論的といえる。

 もう一つ問題がある。
 神の否定というのは即、宗教的態度の否定ではないということである。ようするに「無神論的」な宗教的態度が存在しうるということである。
 どういうことかというと、「無神論者」がこの世界を支配している何か、あるいは絶対的な法則のようなものを信じている場合、それを神と呼ぶかどうかという単に言葉を巡る論争に過ぎなくなる。
 例えば、「私は神を信じない。この世界は科学的な法則によって成立しているのだから」というような自称「無神論者」は、まごうことなき有神論者で、単に神の名を巡る論争にしか過ぎない。

 と、まあここまでしか読んでいないのだが、後半がどのように展開されるのかが楽しみである。
 この書は神を巡るものであるかのようであるが、実は神を巡る人間のありようを考察しているもので、その意味では「人間学」ともいえるものだろう。

 もう一つの成果は、この書の解題を読むなかで、コジェーヴの「承認を巡る命がけの死闘」というヘーゲル哲学の解釈について、不明だった点が少しわかったことである。

           

 この種のものを論理を追いながら読み進めるのは大変疲れる。
 そうした折、年末にゲットし、その後、京都の友人が送ってくれた国立近代美術館のものを含めた藤田嗣治の4冊の画集が目を癒やしてくれる。
 ずさんな私にしては丁寧に観ている。その絵画の中に描き込まれたディティール、バックや配置された小物、そしてそれらが描かれた年代などにも注意をはらいながら舐めるように観てゆく。

 おかげで、1910年代と20年代の作品にある一つの区切りのようなもの、その差異と同一性のようなもの、あるいはその移行の過程を示すものがわかるような気がしてきた。
 さらには20年代の作品にあるメインの対象を取り巻く衣装や小物、バックに掛けられた絵画などなどが、丹念というか実に緻密に描き込まれていて、そこにも立ち止まって鑑賞できるようになった。

 これもまた、丁寧に観ているせいもあってまだ全体の四分の一ぐらいしか観ていない。ここから30年代を経て日本に帰国し、戦争画を描く時代、そして敗戦後、逃れるようにフランスへ去り、そこで過ごした晩年の作品へと至るのだが、長編小説を読むように、しかも一つひとつの作品のディティールを味わいつくすように観てゆきたい。

           

 夜、農協で求めた中玉3個で100円の赤かぶで今季三度目(白かぶを含めれば四度目)の千枚漬けを作る。
 赤かぶの品種が違うせいか、漬けて幾ばくもしないのに鮮血のように赤く染まった。まだ青臭いが味加減もまあまあですぐ食べごろになるだろう。

 今日13日、先般名古屋でゲットしたバッハの『平均律クラヴィーア曲集』を聞きながらこれを書いている。ピアノはヴィルヘルム・ケンプ。

コメント
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