素晴らしい絵本が送られてきました。A4版の横綴じの大型絵本です。
送り主はこの絵本の作者であり、私のネット上の友人 F・F・Tさんです。
すべてが手作りです。絵はもちろん、書かれている文字も直筆です。製本もご自分の手になるものです。
もちろん手作りだからいいのではありません。
ちゃんと内容を伴っているのです。
題名は「ピアノ物語」。でもピアノ(について)の話ではありません。
ピアノは作中の二人の「わたし=主人公」の仲立ちをします。
しかし、とても大事な仲立ちです。
ピアノを巡っての短編小説の趣がある作品です。
一人の主人公は敗戦直後の農家の女の子です。
その「はなれ」ともいえないような掘立小屋には、都会で焼け出されてきたおばさんがひとりで住んでいます。そして、その小屋のなかには不釣り合いなピアノが置かれているのです。女の子は、それを覗き見しているうちに、そのおばさんと親しくなります。
そのおばさんはとてもピアノを大切にしているのですが、自分では弾けません。
女の子が成長してゆくのに平行して、高度成長が始まり、農家も土地を売ったりして豊かになります。女の子の家も新築し、ピアノが買い与えられました。
ピアノに入れ込んだのですが、プロのピアニストにまでは至らなかった女の子は音楽家の夢を諦め、エリート社員と結婚します。
いわゆる中流家庭の理想像が実現するのです。
しかし、そこで思わぬ不幸に見舞われ、これまでの生活を別の視点から見る機会が訪れます。それは、実家へ帰ったその女性が、掘立小屋に住んでいたおばさん、もう今ではおばあさんとなっているひとと再会するところから始まります。
ここからの語り手は、もう一人の主人公、おばあさんに移ります。
そしてそこで、なぜ掘立小屋のなかで彼女がピアノと一緒に暮らしているかの謎が解かれることとなります。それはまた、悲しい挫折の物語でした。
この両者の切ない挫折のなかで、改めて二人の主人公の交流が始まります。
二人はここで共通の思いで結ばれます。それは作中の言葉でいえば、
「愛する者を守るためには、母親や女はかしこく強くなり、目をしっかり開けて見なければならない、ということ」
になります。
そして再び、ピアノは、「風鈴の音よりもやわらかく、海のようにゆったりと、ギャロップのように軽やかに」その音を奏でるのです。
以上はとても大雑把な概括ですが、そこを通じて流れているものは、作者の反戦平和への妥協のない希求です。しかしそれは、理論や観念に基づくものではなく、現実のありように根ざすものです。
この物語に書かれているものは、すべて現実にありえた話なのです。
写真を添付しましたが、絵も素晴らしいのです。かなり厳しい状況を描いたものもあるのですが、どれをとってもどこか温かみがあります。そしてまた、時代考証もしっかりしています。私自身が幼少時の戦中に実際にみた光景です。
最後は、人が生きるという課題を引き受けながら、見つめるものを獲得したひとの決意、といってもマナジリを決するようなものではなく、ある種の静謐のうちにあるものなのですが、それが語られています。
多くの人に読んでもらいたい内容なのですが、私家版であるため、どうしたら良いか今のところわかりません。作者のF・F・Tさんにまた問い合わせてみます。
送り主はこの絵本の作者であり、私のネット上の友人 F・F・Tさんです。
すべてが手作りです。絵はもちろん、書かれている文字も直筆です。製本もご自分の手になるものです。
もちろん手作りだからいいのではありません。
ちゃんと内容を伴っているのです。
題名は「ピアノ物語」。でもピアノ(について)の話ではありません。
ピアノは作中の二人の「わたし=主人公」の仲立ちをします。
しかし、とても大事な仲立ちです。
ピアノを巡っての短編小説の趣がある作品です。
一人の主人公は敗戦直後の農家の女の子です。
その「はなれ」ともいえないような掘立小屋には、都会で焼け出されてきたおばさんがひとりで住んでいます。そして、その小屋のなかには不釣り合いなピアノが置かれているのです。女の子は、それを覗き見しているうちに、そのおばさんと親しくなります。
そのおばさんはとてもピアノを大切にしているのですが、自分では弾けません。
女の子が成長してゆくのに平行して、高度成長が始まり、農家も土地を売ったりして豊かになります。女の子の家も新築し、ピアノが買い与えられました。
ピアノに入れ込んだのですが、プロのピアニストにまでは至らなかった女の子は音楽家の夢を諦め、エリート社員と結婚します。
いわゆる中流家庭の理想像が実現するのです。
しかし、そこで思わぬ不幸に見舞われ、これまでの生活を別の視点から見る機会が訪れます。それは、実家へ帰ったその女性が、掘立小屋に住んでいたおばさん、もう今ではおばあさんとなっているひとと再会するところから始まります。
ここからの語り手は、もう一人の主人公、おばあさんに移ります。
そしてそこで、なぜ掘立小屋のなかで彼女がピアノと一緒に暮らしているかの謎が解かれることとなります。それはまた、悲しい挫折の物語でした。
この両者の切ない挫折のなかで、改めて二人の主人公の交流が始まります。
二人はここで共通の思いで結ばれます。それは作中の言葉でいえば、
「愛する者を守るためには、母親や女はかしこく強くなり、目をしっかり開けて見なければならない、ということ」
になります。
そして再び、ピアノは、「風鈴の音よりもやわらかく、海のようにゆったりと、ギャロップのように軽やかに」その音を奏でるのです。
以上はとても大雑把な概括ですが、そこを通じて流れているものは、作者の反戦平和への妥協のない希求です。しかしそれは、理論や観念に基づくものではなく、現実のありように根ざすものです。
この物語に書かれているものは、すべて現実にありえた話なのです。
写真を添付しましたが、絵も素晴らしいのです。かなり厳しい状況を描いたものもあるのですが、どれをとってもどこか温かみがあります。そしてまた、時代考証もしっかりしています。私自身が幼少時の戦中に実際にみた光景です。
最後は、人が生きるという課題を引き受けながら、見つめるものを獲得したひとの決意、といってもマナジリを決するようなものではなく、ある種の静謐のうちにあるものなのですが、それが語られています。
多くの人に読んでもらいたい内容なのですが、私家版であるため、どうしたら良いか今のところわかりません。作者のF・F・Tさんにまた問い合わせてみます。