出願番号 : 特許出願2007-30146 出願日 : 2007年2月9日
公開番号 : 特許公開2008-195630 公開日 : 2008年8月28日
出願人 : 日本澱粉工業株式会社 外1名 発明者 : 阿邊山 和浩 外2名
発明の名称 : アディポネクチン産生増強剤
【課題】血中のアディポネクチン濃度の上昇により、動脈硬化症又は糖尿病及びメタボリックシンドロームの予防または改善効果が期待できしかも哺乳動物に対する副作用のない安全で且つ優れたアディポネクチン産生増強剤、およびその産生増強作用を利用した動脈硬化症、糖尿病あるいはメタボリックシンドロームの予防、改善剤を提供すること。
【解決手段】上記剤はいずれも、1,5-D-アンヒドロフルクトースおよび/または1,5-D-アンヒドログルシトールを含有する。
1,5-D-アンヒドロフルクトース(以下、1,5-AFという)は、ある種の子嚢菌や紅藻由来の酵素であるα-1,4-グルカンリアーゼを澱粉などのα-1,4-グルカンに作用させることで酵素的に生合成することができる。
1,5-D-アンヒドログルシトール(以下、1,5-AGという)は1,5-AFが還元された構造であり、生体内では大腸菌や哺乳類に存在するNADPH依存の還元酵素が1,5-AFを還元し生じること、また、1,5-AFをマウスに経口摂取させると生体内で還元されて1,5-AGが生成することや、さらに1,5-AF誘導体であるオリゴ糖化1,5-AFをマウスに経口摂取させることでも消化管内でオリゴ糖が分解されて1,5-AFが生じ、それが消化管より吸収されて1,5-AGが生成することも報告されている(ブランド・ニッポン加工食品供給促進等技術開発事業における公開成果発表会 H17/3/11)。これらのことから1,5-AFや1,5-AF誘導体を経口投与することで、生体内で1,5-AGを生合成させることができる。1,5-AGは化学的には1,5-AFに金属触媒存在下で水素添加し還元することで合成できることが報告されている(非特許文献1)。1,5-AGの生理機能性についての報告は少ないが、
膵臓ランゲルハンス島β細胞からのインシュリン分泌量を増強させる作用を有することが報告されている(非特許文献2)。
脂肪組織から分泌される生理活性物質はアディポサイトカインと総称され、肥満、特に内臓脂肪型肥満におけるアディポサイトカインの機能と産生調節の破綻がメタボリックシンドロームの発症・進展に大きく関与すると考えられている。アディポサイトカインの中でもアディポネクチンは、血管内で動脈硬化を引き起こす炎症など、さまざまな細胞現象を抑える働きがあることが明らかになってきている。アディポネクチンは糖尿病とのかかわりも確認されており、糖尿病になるとアディポネクチンの血中濃度が下がり、アディポネクチンの濃度が上がると血糖値を下げる。これはインシュリン感受性が高まるためと推測されている。このようにアディポネクチンの濃度が高まることで動脈硬化の予防や糖尿病の予防・改善効果あるいは抗肥満効果が期待できるため、近年アディポネクチンの産生量を増やす物質の探索が盛んに行われており、発酵茶抽出物を有効成分とする組成剤(特許文献1)、大豆サポニン(特許文献2)、米糠抽出物(特許文献3)などがアディポネクチンの産生増強剤として提案されている。
【特許文献1】特開2004-315379
【特許文献2】特開2006-143609
【特許文献3】特開2005-68132
【非特許文献1】Carbohydrate Research 337(2002)873-890
【非特許文献2】Biochimica et Biophysica Acta 1623(2003)82-87
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バイオ塾情報創庫DB 2008-10-25