イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

来てよ その日を飛び越えて

2013-10-06 02:06:09 | 朝ドラマ

  遅ればせにもほどがありますがいまさらながら盛り上がりましたですねぇ『あまちゃん』最終回。 

わくわく、ドキドキという点では925日(水)の、鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子さん)ついに禁断のナマ歌ライヴ披露!急遽駆けつける影武者春子(小泉今日子さん)!袖ヶ浜ならぬステージ袖へ、走る春子がいつか80年代春子(有村架純さん)になり太巻(古田新太さん)がバトンタッチしたワイヤレスマイクの電池が吹っ飛んで!・・のシークエンスがピークだったかもしれませんが、土壇場になってどさくさばたばたと何かが決着し大団円づいてしまう結末ではなく、半年走って、行きつ戻りつして、それでも走り続けて「第1話の出発点に戻った」という終わり方は、本当に潮風の吹きゆく窓を開け放ったような解放感に満ちていました。
 

ただキツネに化かされたみたいにぐるっと回って元に戻ったわけではありません。

 地理上は同じ地点でも、望む風景、肌に触れる空気は大きく変わった。
1985年、地方の時代を喧伝されかりそめの興奮に沸く北鉄開通式の日、18歳の春子が母に背き東京を目指して去った北三陸駅は、2012年、地元アイドルとして震災復興の旗手となったアキ(能年玲奈さん)&ユイ(橋本愛さん)=潮騒のメモリーズが東京から、各地から多くのファンと復興サポーターを招び込む駅に生まれ変わったのです。
 

海開きの71日、3年ぶりのお座敷列車でのパフォーマンスを終えたアキとユイが、未復旧の区間の線路に下りて走り出す。翌年の全線復旧を待つホームに「この先へ!」の手書き横断幕が見えたときには大げさでなく胸が震えました。思えばこの約半年、アキちゃんだけでなく劇中の北三陸の人たちのなりわい、喜怒哀楽をTVのこちらで見守るとき、通奏低音のように2011311日になると・・」の思いが横たわっており、神様でもない自分がそれを知っていて、劇中の人たちにそれを告げてあげるすべがないことをずっと申し訳なく思っていた。あと2年で、1年何か月で、“その日”が来る・・と、間然するところのない小ネタやギャグやスベり芸にウケながらも、原罪のように胸のどこかに疼くものがあったのです。
 

アキちゃんユイちゃんが「この先へ!」の横断幕を突き抜けて走り出したとき、やっと心の底から、「もっと前へおいで、ここへおいで、いま君たちが走っているそこより明るく、希望の多いここへ」と笑って手を振ることができた。20127月にいるアキちゃんたちはアベノミクスを知りません。当然消費税率上げも知らない。そんなこたぁ知らなくていいのですが、東京五輪招致や、ウィリアム王子に長男誕生や、東北楽天マー君23連勝も知らない。「今でしょ」も、倍返しも知らないし、9か月後に始まる朝ドラがそれはそれは面白いことも知らない。

少しだけ過去にいる若者たちに「知らないことを知りにおいで」「見においで」と、未来から胸を張って言える幸せ。
 

遠い昔、母・春子が青春ツッパリの日々に、あてどない苛立ちをこめて「海死ね/ウニ死ね」と書いた堤防の白線を、軽々と踏み切って、いつかの夜その母と並んで歩いた灯台の道からユイとともに潮風の彼方を仰ぐアキ。鉄路にも、海にも、故郷にも人生にも「この先」がある。無限に未来はある。
 

アキたちが立つ海と、TVのこちら側のせせこましい空間が、ひととき“開通”して地続きになったような、彼女たち彼たちと同じ空気を吸い同じ風の匂いを感じることができたような、至福の最終回視聴体験でした。ありがとうアキちゃん、ユイちゃん、ありがとう北三陸。ありがとう鈴鹿さん、ありがとうハートフル。 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« でぃーえーえすえーDASA | トップ | 杏も応もなく »

コメントを投稿

朝ドラマ」カテゴリの最新記事