イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

鶚(みさご)

2017-11-12 01:21:07 | 海外ドラマ

『パーソン・オブ・インタレスト ~犯罪予知ユニット~』ファイナルシーズン最終13話まで完視聴。ふぅーーー。今年は『C.S.I. 科学捜査班』に続いて、TVロングシリーズのビッグタイトル2本、ゴールテープを切ったことになります。

 ドラマや小説の何巻にもわたる長尺ものって、よほどまとまった休みが取れたときなどでないと消化できないかと思いきや、暇だと意外に「いつでも観られるわ」と体温が上がらないもので、少ない空き時間をぬってさぁ次のエピ、帰ってきてもう1エピ、よしっ寝る前にもう1エピ見られる・・と追い立てられるように見たほうがエンジンかかって捗るものだなと思いました。

 『パーソン・~』の場合、1stシーズンからまる3年ちょっとがかりだったのかな?本国での本放送開始が2011年9月で、日本でDVDレンタルに出回り出したのが翌年10月です。かなり序盤から日本での食いつきも良かったようで、確かそのまた翌年の夏頃、ネットレンタルサイトの“あなたへのおすすめ”に乗っかって1巻と2巻は借りたのです。当時は1話で解決するUSA製事件モノばかり追いかけていたので、月河も高齢家族も観る気満々だったのですが、何とかぶったのか、はたまた夏バテだったのか、一度も見ないうちに返却期限になってしまったのです。縁のないときってこんなものです。

 新規まき直しで本腰入れて見始めたのがさらに1年少し後の、2014年9月。この少し前にDVDレコーダーをBlu-rayに買い替えたので本腰が入ったこともあります。2ndシーズンを視聴している間に3rdシーズンもレンタル可能になったので、一気にいきましたねぇ。4thに手が届くまでにまた2年半ぐらい間が空いたのですが、その間にBSフジで1stシーズンから放送があったりして、視聴済みのエピでも、TVでやってると思うとつい復習を兼ねて見てしまうので、なんだかんだでまる3年あまり、“心のどこかにマシンあり”だったと思います。途中こんなに飛び飛び空き空きだったのに先へ先への視聴意欲が切れなかったUSA製事件モノTVシリーズは『24』以来ではないでしょうか。

 『24』の放送開始が2001年11月、『パーソン・~』が先に書いたように11年9月と開きはありますが、両作ともに明らかに01年の9・11同時多発テロを意識していて、“国家当局によるテロ対策”から話が始まっているという共通項があります。やはりあの件がアメリカに残した爪痕は大きかったのだなと再認識します。

 このあたり、1980年代の警察モノや、広くアクション系映画に、決まって“ベトナム後”の背景があったのに似ている。ヒーローも敵役も、何かしらのかたちでベトナム戦争の影響を刻まれていました。『ランボー』だって、“2”以降はスタローン扮する不死身の筋肉ヒーローが大軍相手にドカスカやりまくるイメージしかなくなりましたが、もともと(1981年公開)は孤独なベトナム帰還兵のたった一人の反乱から始まったのだし、1988年の『ダイ・ハード』では、当時は若ハゲの30代?と思われるNY市警のヒラ刑事マクレーンは、さすがにベトナム経験はなかったでしょうが、終盤“対テロならまかせろ”とばかり現場に乗り込んできたFBI捜査官の年いってるほうが「ベトナムを思い出すなあ」、若いほうが「自分は中学生でしたよ」と意気揚々とヘリでバラボロ接近して、豪快に爆弾で吹っ飛ばされたりしていました。もうベトナムが“歴戦の勲章”ではなく“(現代の作戦では通用しない)過去の遺物”になったことを暗示する印象的なシーンでした。

 ソ連なり中国なりの、国体を持つ敵国の脅威ではない。外から来てアメリカ国内でホーム・グロウンする、守るべき祖国なく襲来するテロの恐怖を9・11で身をもって知ったアメリカ市民のスイートスポットを、活劇ドンパチドッカーンな“動”方面からついたのが『24』なら、監視社会、ビッグデータ管理の脅威という、目に見えない“静”の局面から紡ぎ起こしていったのが『パーソン・~』と言えるでしょう。

 特に『パーソン・~』制作当時は、すっぽり「アメリカはもう世界の警察ではない」と宣言したオバマ大統領の治世でしたから、架空でも固有名詞のつく仮想敵国を想定しないで、アメリカ人が作って稼働させ始めたシステムvsシステム、という物語世界を構築する必要があった。しかもチームリーダーは戦士ではなく技術者、それも敵に狙われた爆発の後遺症で普通に歩くのも不自由な、見るから身体能力低そうなメガネのITエンジニア。彼と組むのは元・特殊部隊兵、対テロ組織の雇われ殺し屋、バツイチシングルマザーの黒人警官、ギャング組織と癒着した汚職刑事、そして天才ハッカーと、いずれも警察や軍隊やCIAなど“強き良きUSA”から放逐され、あるいは排除されたはぐれ者たち。自分の身体ひとつと頭脳と度胸以外何の社会的バックも持たない面々が、国を売った売らない、人類の未来をどうするこうする、というばかでかい戦いに挑んでいく。“マシン”がはじき出す社会保障番号にしたがって今度の対象は被害者加害者どちらの予備軍か?何を企んでる或いは誰から、どこから狙われてる?名も身分も隠しての身辺調査、警護を通して犯罪への構図、真相解明、一件阻止コンプリート、で終わるのではなく、一件、一エピごとにマシンの仕組み、あるいは欠陥、方向性がメンバーにも視聴者にも少しずつつかめていくという大きな謎解き、大きな問題解決ストーリーになっているのは、どこか『仮面ライダー』シリーズにも似ています。

 こういう“大きな話”は、足掛け何年もかけて全話完走した直後に「最初からもう一度、今度は間を開けないで見返してみたい」と、いつも思います。わりと前を引きずらずにさくさく1話一件ずつ解決していった『C.S.I』も、サラが加入した話辺りからもう一度・・と思ったこともあったけれど。

 でも、これも完走してから言えることですが、『パーソン・~』はやはり最初に一気に見た3rdシーズンまでがやはりいちばん話に勢いと求心力があったかなと思います。特にシングルマザーのカーター巡査が殉職するまでが良かった。いままで見た多くの“NY警察モノ”ワールドと、『パーソン・~』で新規に提示された、マシンが君臨する電脳ワールドとの間に地続き感があったのです。メンバーが再結集してからの4th以降は、こっちが貧乏性なのかもしれませんが風呂敷の広がり面積が気になって気になって、たためるのか?どうやってたたむんだ?こっちのカドからそう来たなら、あっちのカドはどうするよ?と、落ち着いてまったりお話に浸ったり、ゲストの単発キャラにウケたりしていられない時間が増えてしまった。もう一度見返すにしても、3rdまででいいかなという気はします。

 ファイナルシーズンの最期の戦いに、過去にメンバーに助けてもらった対象番号の人がひとりずつ参入して、対象になるきっかけになった技能や情報を駆使してちょっとずつメンバーを援護して退場、みたいな展開にならないかなと思っていたら、ラストから3話めでちょっとあっただけでフェードアウトでしたね。こっちの思考がベタなんだろうな。

 でも最後に、安全問題の絶えないアメリカ軍ヘリコプター“オスプレイ”の命名の由来がわかったのは良かった。トクした気分です。確かに英語圏には鳥の名に由来する姓って結構あるんですよね。フィンチ(鷽=ウソ)以外にも、クロウ(カラス)、ガル(カモメ)、レン(鷦鷯=ミソサザイ)、ストーク(コウノトリ)辺りはそんなに珍名さんでもなく存在するはずです。そういえば80年代にテレビではまった『超音速攻撃ヘリ・エアーウルフ』のヒーローは“ホーク(鷹)”でした。

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