いつものことながら、悪い事は重なったり続いたりするものでして、前記事に書いた、指の流血プチ大惨事(プチなのか大なのか)で、縫ったの縫ったあとくっついたのくっつかないの、いつ抜糸するのと2~3回通院しているうちに、この時期としては10年ぶりくらいの、ノドに来る風邪を盛大にひいてしまいました。
これはね、十中八九、行きつけない救急病院の待合ロビーでもらってきたウイルスだとにらんでいるのですがね。エチケット無用・飛沫飛びまくりのイヤーな咳をしている高齢患者さんとか、熱さまシート貼られながらギャーツクそこらを騒ぎ回ってる小っこいクソガキ……ではなくて、えーと、元気な小さいお友達が、行く都度いましたから。
まぁ、今年の夏はいまのところ、北国のそれらしい、塵ホコリもウイルスも飛散しやすいカラッと乾燥した空気が続いているし、救急で飛び込んだ日に、冷房の室内とアウトドアとの温度差対策をしないで、おウチ着の軽装まんまで出てきちゃった月河も迂闊ではあった。
しかし、指のほうが縫い糸つけてペンディングのまま、今度は耳鼻咽喉科に行くってのもスーパー鬱陶しいし、新型肺炎だのインフルエンザだのにおびやかされて風邪のたびにナーバスになっていたここ数年の経験からいって、いつもひくいつものような風邪をまたひいちゃったけどいつもより治りが遅くてしんどい→しんどいカラダをひきずって耳鼻咽喉科へ行く→「急激に熱が出たのでなければインフルエンザではありません」と簡単に診断されて、ノドの痛み対策の鎮痛消炎剤と、鼻炎対策の抗ヒスタミン薬と、場合によっては咳止めを、せいぜい4日分か5日分処方されて「服みきっても快くならないか、ひどくなるようならもう一度来てください」と言われるだけなんですよ。
二十一世紀のコンニチ、ちょっともののわかってる大人の日本人なら皆さんご存知だと思いますが風邪の特効薬って未だ無いんですね。あるのは対症療法薬、個別の症状をおさえたり軽減したりする薬のみ。
曰く、熱が出たら解熱剤、咳が出たら鎮咳剤、ノドやアタマや身体のふしぶしの痛みには鎮痛剤、くしゃみ鼻水鼻詰まりには抗ヒスタミン薬。よっぽどひどい鼻炎なら、炎症した粘膜の回復再生を促すなんちゃらってのもあるか。…なんだかお薬メーカーのプレゼンみたいになってますが、とにかく、万障繰り合わせて、待ち時間にも耐えて病院にかかっても、結局は“市販薬よりは性能優秀な対症療法薬”をスズメの涙ほど出してもらえるだけ。
しかも、これも経験から言えることですが、病院って、さなきだに体調が悪くてしょうがない中、細切れの時間をやっと作って駆けつけるので、決まって待ち時間や往復の時間で、いまわずらっているのよりもっとタチの悪いウイルスを、免疫力の低下した身体が、百発百中ゲットしちゃうんです。行って得られるベネフィットより、リスクのほうがどう考えても大きい。
今回はコレ(←指)がコレ(←縫い中)だということもあり、この上さらに風邪で病院には何が何でも行きたくない。行かずにすませたい。早く治したいがために耳鼻咽喉科のお世話になるようになってから10年以上たっており、市販が認められている薬のレンジも広がり、世界に冠たる技術立国日本の自由競争の中、品質だっていい加減向上しているはずです。病院嫌いなものぐさ者のための、気休めみたいな甘っちょろい対症療法薬しか売ってはないということはないはず。
そこで、今回は市販薬にこだわってみました。
最近店頭で買えるようになった鎮痛消炎剤と言えば、いまをときめくロキソニンですが、このロキ殿、歯科で抜歯後とか、ぎっくり腰で整形外科などではわりと気前良く処方され、事実、シンプルに効くものの、咽喉科的ノドの痛み止めとしては微妙なんです。もう5年前ぐらいになりますか、熱とともに来た、ゴツゴツの石が寝ててもノドにつかえたような、呼吸が苦しいような痛みのときはロキソニンで本当に楽になった。生き返った気がしたくらいです。
ところが、今回のような、唾や食物を嚥み込むときにザラッ、ヒリッと、特にノドの“上のほう”=鼻に近いところで来る系の痛みのときには、期待ほどは効かない。
こういうタイプの痛みを訴えると、よく耳鼻咽喉科が出してくれるのがポンタールという大きめのカプセルで、主成分はメフェナム酸ですが、これはまず普通の薬局やドラッグストアでは販売していません。
次いで一般的なのがブルフェンという白い錠剤で、今回のような、熱はなく、あっても平熱の高めゾーン程度、治りかけだがちょっこし治り渋ってるだけみたいな局面では、ポンタールよりこちらを出されるほうが多かったような気も。
この薬効成分は、いろんなCMで耳におなじみなイブプロフェンというやつでして、これならいろんな市販薬があります。
何度も服んだことがあって安全牌なのはエスエス製薬のエスタックイブ錠。朝昼夕食後3回、1回3錠、4時間以上間隔をあけて、1日9錠まで。フルに服むとイブプロフェンが、1回150mg、1日では、えーと450mgになりますが、病院でブルフェンとして処方される際は、1回200mg、1日600mgを上限とされるのが普通。
…んであれば、エスタックイブを1日9錠ではなく、12錠服めば、病院でブルフェンを処方されるのと等しい効果が期待できるのではありますまいか。ね、1回3錠で150mgなんだから、1錠当たり50mg。600を50で÷……ね、12錠ってことになるでしょ?
…………しかし早まるな自分。算術計算のみで突っ走ってはいかん。エスタックイブは鎮痛消炎オンリーのブルフェンとは違い総合感冒薬でありますからして、イブプロフェン以外の、鎮咳やくしゃみ鼻水鼻詰まりをおさえる成分も含有しており、これらの上限を勘案しての“1回3錠、1日3回”であるかもしれず、て言うかほぼそうに違いない。
特に取説に「せきをしずめ、たんを切ります。」とあるリン酸ジヒドロコデインは軽い麻酔系の鎮咳成分で、1日量9錠中に24mgしか配合されていませんが、一般的に「風邪薬をのむと眠くなる」「車の運転は控えて」と言われるその主因のひとつでもある。これを9錠を超えて服用するのは結構勇気が要るし、普通に危ない。
イブプロフェンなら1回200mgまではセーフ…ならば、そうそう、鎮咳や抗ヒスタミン成分を含まない、鎮痛消炎オンリーの、同メーカー(エスエス製薬)のイブ錠というのがありますぞ。頭痛持ちの人や生理痛の重い人なら常備薬のひとつでしょう。1回2錠でイブプロフェン150mg。1錠中では、÷2で75mgか。
ってことは、エスタックイブ1日9錠、プラス、イブ2錠で、450+150、めでたくイブプロフェン600mgになる勘定。でしょ?
そこで、イブ錠を包丁で真っ二つに割り、イブプロフェン37.5mgの半錠を作る。
1日3回のうち、2回はエスタックイブ3錠とこの半錠、1回は同じく1錠を服めば、病院でブルフェン200mgを1日3回で処方されたのと同じ量のイブプロフェンが摂取でき、エスタックイブ内のイブプロフェン以外の成分が取説上の1日量を上回ることもない。
唯一、気になるのは、3錠+1錠の回だけ、イブプロフェンの一時摂取量が225mgとなり、200を超えることです。
2錠を3つに割って、3分の2錠を3回、服めればいちばんいいんですけどね。イブ錠ってコーティング錠で、丸っこくてつるつるしているので、2つ割りまでしかできそうもない。そうでなくてもついこの間、もっとずっとざらざらで“的の大きい”南瓜をずこずこカットしていてさくっと流血したばかりだし。
ブルフェン=イブプロフェンがメインの市販薬と言えば、昨年暮れに、出先の繁華街のマツモトキヨシで「風邪でノドだけ集中的に痛いときいちばん効く薬っていうとどれですか」と訊いたら出して来てくれた、塩野義製薬のパイロンMK錠、サトウ製薬のストナアイビー錠、「アナタの風邪はどこから?」のCMでおなじみ、タケダの銀のベンザことベンザブロックLなどもありますが、いずれも1日の推奨服用量がイブプロフェン450mgで、あとは鼻水鼻詰まり対策や、咳止め、痰を切る対策の成分が少しずつ違う程度。ここらへんが、1回200mgドンと出る、処方薬のブルフェンとの違いなのでしょう。
あと、市販薬の取説ではどれも“服用間隔は4時間以上”と記されていますが、調剤薬局でブルフェンを渡されるときはだいたい「6時間おいたほうがいいですよ、そのほうが胃を荒らすことが少ないし、6時間は効き目が持続する薬ですから」と説明されます。「6時間間隔をあけるなら200mg摂ってもいい」とも取れるし、「150mgなら4時間しか効かない」とも解釈できますね。
……とまあ、こんなふうに、手持ちの薬と、ドラッグストア行けば買える薬とでなんとか、どうせ対症療法しかされない病院処方と同レベルのセルフ薬物療法に到達できないものか??と電卓叩きながら考えているうちに、何だか、ブルフェンよりロキソニン向きの痛さになってきたような気もする。
そう言えば指を縫合した後、出された痛み止めがソレトン80mg錠で、これはイブプロフェンと同じ系統のザルトプロフェンという薬。メーカーが違うために名前が違うだけの同じザルトプロフェン=ペオン錠80mgが、確か“魔女の一撃”のとき整形外科で豪快に処方されてまだまとまって残ってたはず。鎮痛剤の宿命・胃の荒れ対策のセルベックスカプセルも同回数ぶん、一緒に出してくれてたんだよなあ。あっちはどうかしら。
…………薬とのこういう付き合い方は、あまりおすすめできませんけどね。処方薬は処方された通り、他の薬と併用せず服用、症状が消えたら服み残しは貯めずに廃棄。市販薬は取説通り、割ったり砕いたりせず服んで、3日以上服用続けて効かなければ、あきらめて打ち切って病院へ。
よいこのみなさんはまねをしないように。風邪には何より睡眠とバランスの取れた栄養、そして静養と禁酒ですからね(…一部、言うまでもなさすぎるのが混じった)。