当節、街中にも媒体にも音楽っちゅうものは溢れかえっていますから、聴きたくなくても耳に飛び込んでくるということは年じゅうあるもので。
或る時飛び込んできたソレが、一日じゅう脳内でループし続け、気がついたらハミっていたりテキトー歌詞で口ずさんでいたりすることもあるでしょう。
最近ならば、♪こんにちは(こんにちワン)ありがとう(ありがとウサギ)まほおのことばでたのしーなーかまーがポポポポーン♪というアレがソレになってしょうがなくて、自分でイライラしている人も多いのではないかと推察します。言ってることは間違ってないんだけどねアレ。しつこいにもほどがあり過ぎますよね。「そんなんで“なかま”になんかなってたまるかケッ」と事実上のネガキャン化しているかも。
頻繁に耳に飛び込むからそうなるというわけでもなく、月河などは、週一、日曜にしか聴かないはずのスーパーヒーロータイムソングのほうが、月~金の昼帯テーマよりソレ化しがちです(昼帯が2008年春から、テーマ曲を1コーラス流さなくなったことも原因か)。
『爆竜戦隊アバレンジャー』の放送中は、EDの ♪アバ アバ アバ アバ アバレンジャー~が、ヘタしたら土曜の昼ぐらいまで水面下でソレになっていたし、翌年の『特捜戦隊デカレンジャー』では、OPやEDより、劇中では数えるほど、それも冒頭~前半しか流れなかったはずの♪と~くそーがーったい デカレンジャーデカレンジャー ロボーー!(『ビルドアップ!デカレンジャーロボ』)が脳裏を離れませんでした。
『炎神戦隊ゴーオンジャー』ではED『炎神ラップ』の中の、特にバルカ篇=♪曲乗り悪乗り 時にはガッカリ それでも明日がアルデンテ と、バスオン篇=♪曲~がった道でも 真っ直ぐ進むでぃ お乗りのヤローはお早めに が、とりわけソレ化が著しかった。いちばん多回数流れたはずのスピードル篇はあまりそうならなかったから、本当に頻度の問題ではなく、脳内の何かの回路に、何かが反応を起こさしめるのでしょう。
んで、ここのところ頑迷に、もはや脳内“作りつけ”的にソレ化している楽曲と言えば、NHK BS‐hi『どれみふぁワンダーランド』で、RAG FAIRの土屋礼央さんが、2009年から足かけ3年のプロジェクトで完成させた“英語のように聞こえる日本語の曲”=『風鈴買いに行こう』。
“ゆるめの短いフレーズをリエゾンさせながらリフレインすると洋楽っぽく聞こえる”というベーシックを徹底的に踏襲したこの曲、先週の放送でめでたく宮川彬良さん編曲によるフルオケ&フルコーラスつきヴァージョンが披露されましたが、ずるいよ。♪ふーりんかいにこー ふーりんかいにこー とか、♪もう穏便に そーおんびんに よあおんびんに とか ♪大家請求しない おーやせいきゅーしない とか、陰謀的にソレ化狙いみたいな作りになってるんだもの。
“読むと日本語の歌詞だけれど、歌うと英語のように聞こえる”を目標にしたとすれば、わりと微妙です。土屋さん以下RAG FAIRメンバーはじめ番組レギュラー出演者の皆さん、及び視聴者からのアイディアを盛り込みまくって、“アホな横領犯(おーりょうはん)”を主人公に、“幼少時代(ようしょうじだい)”の“家(いえ)の遺影(いえい)の伯母(おば)”の思い出などを垣間見せる、トム・ジョーンズの名曲『思い出のグリーン・グラス』をホウフツとさせないでもない、結構、意味のある歌詞ワールドになってしまいましたから。
“英語のように聞こえる日本語”なら、日本語としてはもうちょっとはちゃめちゃナンセンスなほうがよかったんじゃないかな。♪強引(ごーいん)な聴取(ちょーしゅ)に荒んでく心情(しんじょう)~なんて聞くと、月河など速攻『相棒』の捜一トリオ、特に三白眼で睨む伊丹刑事(川原和久さん)の濃いフェイスが具体的にありありと浮かんで来てしまいます(横領容疑なら一課の出番ないけど)。
意味なく意味なく作っていったつもりでも、気がつけば回り回って“感動路線”の軌道にはまっている…というところが日本語の、演歌チック歌謡曲チックで、それはそれでおもしろいのかもしれませんね。もう穏便に、そう穏便に。