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イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

藍より出でて

2010-01-07 17:09:57 | 昼ドラマ

“いつもの”同枠とは違った雰囲気で期待させた東海テレビ昼帯ドラマ『インディゴの夜』、いまのところは、意外にそろっとしたスタートです。もっとはっちゃけてガンガン来るかと思った。

今作の“主力商品”であるホスト役イケメン俳優諸君は、無国籍風・格闘技系・アキバ系・ユニセックス…と、キャラクターが埋もれないように「打ち合わせ通り、一生懸命演ってます」といういっぱいいっぱい感が拭えず、いまだ全開とはいきませんが、“いつもの”出生の秘密や、身分違いの恋を背負わない、等身大のヒロイン・晶(あきら)を演じる森口瑤子さんが期待を裏切りませんね。

人気ファッション誌の女性編集長として仕事バリバリ、私生活も外資系証券マンと結婚間近で、人生順風満帆、勝ち犬気取りで肩で風切っていたのに、上層部の裏金スキャンダルの巻き添えを食らって突然解雇、恋人は同棲中のマンション家財道具、預貯金一切合財とともに「結婚できなくなった」の電話一本で失踪。傷心のどん底の晶のもとに、かつて同じ出版社で部数競争を繰り広げた元・写真誌編集長・塩谷(六角精児さん)が現れ、婚約者が自分を連帯保証人に3000万もの借金をしていると告げられます。失職中で無収入の晶に、塩谷はホストクラブ店長になって売り上げを上げて返済しろと迫ります。

迫ると言っても、『相棒』鑑識米沢さんでおなじみ六角さんが演じているので、ハードに恫喝するというより、大手搦め手取り混ぜてなんだかんだと身動き取れなくしていく感じ。

時代の先端を行くバリキャリだったはずの晶が、職も預金もなくマンションも住めなくなると、職探しの間だけでも転がり込める女友達の一人もおらず、父親違いの妹(長谷部優さん)にまで「旦那と子供で手いっぱい、お姉ちゃんの面倒まではみられない」とていよく追っ払われてしまう。仕事はでき、女も捨てずお洒落も怠りなく恋人もゲットしたけれど、人間関係力は非常に劣る女性だということがよくわかる。

実年齢43歳の森口さん、3年前の『わるいやつら』でワンシーンだけ画面に登場した上川隆也さんの鬼妻役が忘れられない、落ち着いた迫力のある演技もできる女優さんですが、今作はちゃかちゃか、ぴゃあぴゃあと、ファッションマスコミ業界に合わせて若づくりする癖がついてでもいるのか、それこそアキラかに精神年齢低く、大人の思慮や知性の乏しい“なんちゃって敏腕キャリア”女性をうまく表現しています。

1話での妹との会話からすると、晶の母親は再婚で妹を産み、いまも地元で水商売の店をやっている様子で、妹は解雇を機に実家に帰って母を手伝うよう勧めますが、晶は実家に帰ることよりも、水商売にかなり偏見と抵抗があります。2話では「ホストなんて女に愛嬌を売っておカネを貰う(卑しい)商売」「自分の才能と努力だけで、性差別にもセクハラにも耐えて編集長にまでなったワタシと、アンタたちとでは人生が違う」「ワタシはいつまでもこんなところ(=恥ずかしい賤業であるホストクラブ及びその雇われ店長職)になんかいないんだから」と、勝ち組コンプまる出しのイタい啖呵切って、イケメンホスト諸君を呆れさせドン引きさせてしまいました。

彼女の編集者時代のイメージシーンを見る限り、手がけていた雑誌はブランド衣料やグッズ、コスメグルメの広告料に浮かぶ砂上の楼閣みたいな腐れ虚飾メディアらしく、そんなしろものを仕切って花形職業気取りだった彼女に「オンナにアイキョー振りまいておカネ貰ってる」と蔑まれたんでは、ホスト諸君としてはまったく心外でしょう。

“努力して男社会の逆風をはねのけ、勝ち組職業で自立、かつオンナとしても充実”という、いま風に言えば勝間和代コンプレックスにとらわれた、競争&出世中毒のアラフォー女性vs.ワケありだけどそれぞれ自由な夢を抱き、女性を喜ばせるプロの自覚を持って働く若者たち。昼帯の主要客層たる女性視聴者に向けたタイムリーなメッセージ性もじゅうぶんですが、そのへんはあまりあからさまにせず、むしろ“変身なし巨大合体ロボ戦なしの戦隊&巻き込まれ姫”ぐらいの、惜し気ないはっちゃけを見せてほしいですね。日曜朝、テレ朝系スーパーヒーロータイムでの現行戦隊が、去年からああいった感じに低回しているので、“文句なく視聴後スカッとする戦隊”にいま、かなり飢えてますから。

主力のイケメン戦隊…じゃなかった、ホスト役諸君も危なっかしいながら未知の魅力の片鱗は窺えるものの、心配なのは“謎の切れ者マネージャー”憂夜(ゆうや)役の加藤和樹さん、わずか4年足らず前の『仮面ライダーカブト』では、キャラ設定上わざと時代遅れ勘違いな派手派手ファッションで、一種の被りモノ演技でしたが、それでも取り返してお釣りの来る涼しげな美貌だったのに、今作は、こちらも設定上?バサついた髪型のせいもあるのか、目つき顔つきがずいぶん落魄して、眼周りに妙なヒダができ、撮影画質上か肌にも張りがなく荒んだ感じに見える。『カブト』登場当時21歳、現在25歳ですから、容姿がくすむ年頃では到底ありません。昼帯3ヶ月クール作で、毎話登場シーンがある役となると撮影は苛烈をきわめます。体調は大丈夫かしら。

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月ましては、また来年

2009-12-31 12:32:41 | 昼ドラマ

年の瀬、最終話まで見届けたドラマの“触れ残し”がまだありますね。Xmasの奇蹟』29日(火)に全41話を終了。

運命の交通事故から1年、最初で最後のコンサートを開いた健(窪田正孝さん)、予定外の『青の月』演奏後「ボクは林田健ですが、心は堤浩志です」「命を賭けて直(高橋かおりさん)を愛してる」と聴衆の前で宣言、意識を失います。奇跡的に息を吹き返したものの、浩志としての記憶は無く、直を見ても博人(大内厚雄さん)に話しかけられても反応なし。「浩志は自分の意志で、この世から去った」と孤独感に沈む直に、二度めの満月=ブルームーンの夜の奇蹟が訪れ…

ブルームーンに元の姿の浩志と直のひとときの再会がかなう、という“奇蹟”は予想できたし、“クリスマスの”奇蹟と言うより、“青の月の”奇蹟と言ったほうがいい結末の迎え方になりました。

結局このドラマ、素直に前のめりで嵌まれたのは序盤の博人ゼノなりすまし事件(←“偽者”“詐称”モチーフは月河の大好物です)と、それに続く浩志母・多恵(泉晶子さん)とのエピソードまでで、本筋となるべき直と、健の姿になった浩志との、名乗り名を呼んで結ばれることができない悲恋のパートはあらかたまわりくどくて退屈でした。

自分は浩志だと明かせば息絶えてしまう健の秘密を知って、遠ざけようと柏木(火野正平さん)と結婚しようとするなど、浩志の生存を願うのはわかるけどちょっとズレてない?やり過ぎ?と思える直の行動は白けることが多かったし、どうにか健の心をつなぎ戻そうと、努力しても努力しても健が直の方にそわそわ向いてしまい、苛立ったり悲しんだりヌカ喜んだりの仁美(水崎綾女さん)は痛すぎた。

ラスト、浩志の魂は「新しい人生を歩き出してくれ」と直を励まして今度こそ旅立って行きますが、自分が彼岸に去れば、本物の健の魂が健の身体に戻って、健に健の身体と人生を返せると、浩志はどこで、何を根拠に確信したのか。そんな理屈っぽいことは追求しないほうが愛のファンタジーを十全に味わえるのかもしれないけれど、“亡き最愛の恋人の魂が、見知らぬ男の姿で現われる”というお話にとにかくはめ込むために、健という人物を便利使いし過ぎだった気がします。

最終話の健は、一昨年のクリスマスのバイク事故時点の記憶に見事に帰り、浩志の魂を宿したことはもちろん、直とのことや音楽のこともまるっと覚えておらず、元のサッカー好き大学生の無邪気な笑顔を見せて、母親(中村久美さん)も仁美も、友人・光(千代將太さん)も大喜び…が最後の登場場面になったのですが、浩志の魂でにせよ、直は一度は健の“身体”に抱かれたということの意味はどこへ行ったのか。切なさの中でも“健がらみの切なさ”が終始扱いが軽かったように思います。

放送開始前の謳い文句は「とことん切なく、とことん儚く」でした。多少韓流もどきになろうと、皆が好きな“切なさ”に特化しようという、その意気やよし。ただ、どうも企画会議の机上でこね出された切なさ、儚さにとどまった感は終始ぬぐえませんでした。

この枠の昼帯、ヒロイン役3度めの高橋かおりさんも、前2作(脇レギュラーだった『愛の迷宮』も入れると3作)に比べて、高橋さんなればこそという場面が少なかった。直って、年中息せき切って、テンパってものを言ってるようなせからしい女性で、ちゃんとしたことを言おうとすると、武田鉄矢のモノマネをする人みたいにやたら顔サイドの髪をかき上げていたイメージしかない。まぁ、勇を鼓して恋人と勤務先を脱サラ、会社を立ち上げ→間もなくその恋人事故死→倒産の危機→恋人と自称するヘンな大学生出現→恋人の旧友がピアニスト宣言→売り出した途端ウソとわかり再び倒産の危機…(以下略)と、2年少々の間にこれだけ盛りだくさんな人生では、年中過呼吸みたいな喋り方になってしまうのも自然なことかもしれませんが。

高橋さん、直の何倍も長期にわたって数奇な運命をたどった『危険な関係』ではずっと落ち着いた演技を見せてくれていたのですから、今作は演出の責任が大きい。“年少組”の仁美や、妹キャラの実花(蒲生麻由さん)もいたことだし、いま少し大人のムードが欲しかった。

35歳のピアニスト兼作曲家の魂が宿るサッカー大学生という難役を、フレッシュな解釈でこなした窪田正孝さんの魅力と努力でもっていたようなドラマでしたが、だからこそあえて書きます。岡田浩暉さんの魂が入るのが、窪田さんでよかったのかなと

もっと岡田さんのヴィジュアルやイメージから距離のある若手俳優さんのほうが、物語の切なさが際立ったのではないでしょうか。スレンダーで知的、やや気が弱くデリケートそうな岡田さんと並べると、窪田さんも結構シュッとしていて、童顔ではあるけれど色白で繊細そうで、学校の成績はともかく思慮深く賢そうにも見えるし、「到底ピアノなんか弾きそうに見えない」感じではなく、地で結構重なるのです。

たとえばがっしりして短髪の汗くさ&脳味噌筋肉体育会学生とか、逆に茶髪の遊び人風、教養のカケラもなさそな「まじかよー」「うぜーし」しか言わないみたいなチャラ男くんタイプだったらどうだったでしょう。「こんなバカそうな小汚い、粗野な若者が浩志なわけはない」「でもこのピアノタッチ、この音、あの口癖、どうしてこんなに心惹かれるの?浩志を思い出させるの?」という落差が、切なさのベクトルを強化しないでしょうか。

窪田さん程度に演技力のある俳優さんなら、体育会orチャラ男ヘアメイク、ヴィジュアルのまま浩志の魂でセリフを発し、視聴者も直とともに「目を閉じると浩志が話してるように聞こえる!」と“奇蹟”を体感できたかも。正反対の外見で、正反対のパーソナリティを演じるという、それこそ若手俳優さんのチャレンジの見せどころです。大枠は変えずに、毛先や眉のニュアンスで浩志人格らしさを出す、ヘアメイクさんにも絶好のチャレンジ舞台。

窪田さんの演技力に文句はないのですが、高橋さんの直と向き合ったときに、結構、普通にお似合いで、禁断感とか“えらいことになっちゃった感”が薄かったのも残念。窪田さん、童顔ですが落ち着いているんですよね。リアル世界でも、女性35歳ベテラン社会人、男性20歳大学生、ってカップル普通にそこらに……ってことはないにしても、目の色変えて戒め、避けなければならないことではないようにも思う。「とことん切なく」をぶち上げたにしては、切なさの補強が緻密さを欠き、中途半端でしたね。

全体的には“俗っぽさ担当”の柏木社長役・火野正平さんの底力を見直した作品でもありました。直や実花、博人といったところが年中テンパっている分、火野さんの柏木が終始ぶっきらぼうな平坦な口調と表情を押し通し、結果的に非常にドラマ世界の錘として機能した。感情や打算をおもてに表さない、読ませない、表しても最小限な人がひとりはいないと、本当に学芸会になってしまう。

最終話、ミツコママ(白石まるみさん)より先に婚姻届を用意し「どっちか先にくたばったほうが、あの世で俊和(=ピアニストだった、ミツコの死んだ恋人)に話そう」と、遅いにもほどがあるプロポーズをする場面は、不思議なことにこの回でいちばんグッときました。直&浩志のブルームーン抱擁キスよりずっとグッときた。ピアニストだったミツコの恋人・榊俊和の挫折・早世と、共通の友人でレコード会社の担当だった柏木とのいきさつは、劇中ほんの少ししか触れられず、詳細はわからないことも多いのですが、多少わからなくてもグッとこさせる、これはもう100%火野さんの力量ですね。脚本家さんたちも、書きながらだんだん火野さんの柏木に惚れてきて、行き着いたのがこのプロポーズのセリフだったのではないかな。脚本家さんクレジットでは2名(吉澤智子さん國澤真理子さん)、ともに女性です。さすが火野さん。腕は衰えていないと申し上げておきましょう(?)。

………まぁ、不満は多々あるものの、今年から始まったこの枠の“2ヶ月クール作”、3本放送された中ではこの『Xmasの奇蹟』がいちばん破綻が少なく、短話数だからと舐めずに、まじめに作られた作品だったと思います。欲を言えば切りはないけれど、どうしてこの役にこの人?と首をかしげる、あるいは失笑モノのミスキャストも無かったし、音楽家のお話らしく成立するために、コーニッシュさんの音楽の力も貢献しました。「とことん切なく」という目標は、年越しの宿題ということにしましょう。

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藁藁の男

2009-11-17 19:13:08 | 昼ドラマ

自宅から路線バス3区間半ほどのところに、かつてS友グループだった総合スーパーがあるのですが、S友が手をひいて経営者交替してからというもの、品揃えがまったくわけわかんなくなってしまいました。SUNTORYの冬季限定“琥珀の贅沢”、先週11日にはリリースされているはずなのですが、目を皿のようにして探してもどこにも無い。

自宅近辺のコンビニに並ばないのはなんとなくわかるんです。330mlじゃケースの容積的に半端でしょうがないでしょうよ。中小店では冷蔵スペースも限られていますからね。350ml缶比で、直径一緒で高さを削ったのか、はたまた高さはまんまで“細く”したのか、現物確認できないから知るよしもないのですが。たぶん前者でしょうな。

そういう流通上のメンドくささも含めての“レア感”“スペシャル感”演出なのか、量目は20mlほどケチったけどAlc.6%で長期熟成でアロマホップでロースト麦芽で(←秋にもどこかで聞いたな)、他社の350ml製品より満足できますよという自信の表れなのか。ネットでさらっと評判見てみると、薄めで軽めで水っぽめのイメージが強いSUNTORYの新ジャンルにしてはしっかりした味で香りも立っている、季節限定でなく定番にしても…と概ね好評のようですが、とにかくもう少し、売ってるお店を増やしてくんないと手も足も出ません。

世間やネットの評判って、こと泡モノに関しては自分の“実飲”所感と、おそろしく一致しないものです。一缶飲んで白黒つけてみないことにはネットでカートン買いケース買いもできないですしね。

さて、好評放送中Xmasの奇蹟』の後、年明け15日(火)スタートの同枠新作も発表になりました。

『インディゴの夜』、加藤実秋さんの創元推理短編賞も受賞した人気シリーズが原作で、花形キャリアウーマンの夢破れたアラフォーヒロインがひょんな経緯でいっぷう変わったホストクラブの雇われ店長となり、それぞれに個性的な若いホストたちと衝突しながらも、次々舞い込む難事件・トラブルを解決して行くという、やや漫画チックながらなかなか魅力的な舞台設定ですよ。

15話ずつ完結というフォーマットもスピーディーそう。あくまで脚本がきっちりいい仕事をしきれればという条件つきですが、この枠の3ヶ月クール作で常につきまとってきた“中だるみ”“堂々めぐり”のリスクも低減できそうです。

ヒロイン・晶役はこの枠90年代の傑作『風のロンド』で実績ある(ついでにウエラのCMもオンエア中の)森口瑤子さん起用と安全策チックですが、ホストクラブものとあって共演にはイケメン俳優くんを惜しげなく投入しました。ドレイク加藤和樹さん、ギャレン天野浩成さん、アバレキラー田中幸太朗さんにゴーオンゴールド兄貴徳山秀典さんに、夏みかん森カンナさんも紅一点。日曜朝のスーパーヒーロータイムを一週間の締めくくりにもスタートにもしている大きなお友達にとっては、なんだか“豪華”を通り越して“陰謀”とすら言いたい陣容です。

男子校やその部活、ある種の国家や軍隊組織、今作のような水商売など、妙齢男ばっかりの舞台を設定したドラマを指して揶揄的に“イケメンわらわら”なんてよく言われていますが、月河にとってのイケメンわらわらドラマは特撮の02『龍騎』から0355504『剣(ブレイド)』までですでに駄目押しが終わって久しい。後にも先にも、出てくるヤツ出てくるヤツ、正義も敵も怪人も全員キュンキュン来させ、バトル勝ち負けへの興味に優るとも劣らぬキュンキュンテンションを最終話まで維持し続けた(しかもバトル部分が、キュンキュン来ることによっていささかも水をさされない!)連続ドラマはあの3年間の3作以上には出ないでしょう。

ゴールデンタイムのOLさん向け娯楽ドラマにおいても、そろそろ底が割れたその“イケメンわらわら”を、2010年の昼帯でやるというのもいまさらな気がしますが、それにしても今年の春、年4作各3ヶ月クールの慣例を取っぱらって、年6作体制を発表してからのこの東海テレビ制作枠は、“芸能界バックステージ(『エゴイスト』)”“純愛(『夏の秘密』)”“中島丈博脚本(『非婚同盟』)”に、“母もの(『嵐がくれたもの』)”“韓流(『Xmasの奇蹟』)”ときて、さらに年明け“イケメン”と、主要客層の大人女性にハズレのない古典的なタマを“なりふり構わず置きにきて”いる感。これはこれで「攻めてる」と言っていいのでしょうかね。

ついでのように引き合いに出して失礼の段はひらにご容赦願いますが、先日96歳の天寿を全うされた森繁久彌さんの追悼放送で、過去の出演作、出演番組、出演シーンがいくつも再放送されました。もちろんそのすべてをチェックしたわけではないけれど、確かに80歳を超えても才気あふれ、風刺諧謔の毒気の出し入れも抜群、トークでも打てば響く受け答えで、“枯れ過ぎない”のが魅力の素晴らしい俳優さんであり、顔出し芝居のみならずラジオドラマやアニメの声の演技、歌も作詞作曲までこなす“芸の人”だったことは認められるにしても、正直平成21年のいま観返すと、芸も存在感も若干のトゥーマッチ感が否めない。いくらコミカルに、軽快に演じていても、軽快なりに巧すぎ、濃すぎ、達者過ぎるのです。

TV放送も半世紀を越え、良いドラマ、おもしろいドラマ、惹き込まれるドラマを期待する観客の気持ちに昭和も平成もないと思いますが、“ものすごく芸能の能力に秀でた人の、持てる能力を出し切った、圧倒的な入魂の演技”を連日連夜、毎作毎作観たいかと訊かれれば、ちょっとなぁ…と躊躇せざるを得ない。

もちろんお茶の間で寝そべったりお菓子やお酒片手に観られて、そのまま途中で寝ちゃったりしてもいいTVと、前売り券買っておめかしして出かけないと観られないお芝居や劇場映画とでは、望むコンテンツもテイストも違ってくるでしょうが、どういうドラマが“おもしろい、惹き込まれるドラマ”なのか。

特撮や雑誌モデル出身の若い子たちが流行りの衣裳ヘアメイクで決めて、学芸会的な台詞の応酬する“イケメンわらわら”も、「稚拙だけど、ベタだけど、目の保養になるでしょホラ」な“置きに行く”姿勢も、あながち否定され軽んじられるべきではないのかもしれない。大正生まれの昭和の名優が逝って、失ったもの、求められるもの、いろいろ考えさせられたこの一週間ではあったのです。

ところで、イケメンイケメン言ってるのもなんだからってわけではありませんが『インディゴの夜』、舞台のホストクラブ“インディゴ”のオーナー役で、『相棒』の鑑識米沢さんでおなじみ六角精児さんもレギュラーインです。リンク先のフジテレビのニュースページトップの写真で、前列で森口さん加藤和樹さんと並んで、ひとり幅寄せ…じゃなくて、その…貫禄出しているから、原作者か監督か、プロデューサーさんかと思いました。これまたひらにご容赦を。あちらもこちらも多シーン出ずっぱりというわけではないから実現したのでしょうけど、Season 8との兼ね合いはオッケーだったのかしら。

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いっちょカモろうぜ

2009-11-15 16:54:08 | 昼ドラマ

Xmasの奇蹟』で不気味カワイイ存在感を発揮している火野正平さん、演じるアポロン・エンタテインメント柏木社長はバーボン党のようですな。昼ドラ恒例“なぜか全員集まる行きつけのお店”ピアノバー・ノクターンで、ミツコママ(白石まるみさん)が出してきた腰の低いボトルは、赤い栓が印象的でメーカーズ・マークかな?と思いましたがラベルは見えませんでした。前週の何話だったか、ミツコママの死んだピアニストの恋人のことを話していたときはラベル、映っていたかな。録画再チェックしてみないと。

死んだ浩志(岡田浩暉さん)は対照的にスコッチ派で、それも相当辛口のシングルモルトを愛飲。10話のラストで直(高橋かおりさん)が遺影に供えてあげていましたが、細高めのボトルで、いちばんメジャーなのはグレンフィディック辺りかもしれませんが、こちらもラベルは確認できませんでした。お酒がやっと解禁になった年齢の健(窪田正孝さん)の身体に魂が入っちゃってからは、飲むといきなり噎せてましたね。経験経験。

直はお供え酒にお相伴するときや軽く飲むときはビールですが、今日は飲むぞーというときには赤ワイン、つまみはチーズがお好みのよう。XX(ダブルエックス)のスタッフ横井くん(少路勇介さん)はリーマンらしく「とりあえずビール」派、実花(蒲生麻由さん)はおシャレに「キールにおつまみ」。彼女はちゃっかり者かつ、かなりの計算ちゃんなので、これはと思う異性と同席だと「ワタシ、アルコールはン…」なんて恥じらって見せたりしそうですな。悪女役もいけるはずの蒲生さんの、ウラオモテ演技を引き続き期待。

バーボンについては、以前ここでも結構書きました。ビールや発泡酒新ジャンル“泡モノ”に関してはいまも新製品新ラベル見かけるたびに食いついてますが、“お酒界”の中でまだシングルモルトのスコッチは足を踏み入れてない分野なんです。何か敷居が高いんですね。

 スコッチはスコッチでもブレンデッドのほうは一時、結構試したんですよ。飲んだ記憶のあるのは、J&B、バランタイン、カティサーク、フェイマス・グラウス、あと、妙なナンバリングの字ヅラがおもしろくて、VAT69なんてのも飲みましたっけ。

 バーボンのほうに先に嵌まったので、スコッチ独特のビー玉みたいなグリーンボトルが珍しく見え、それ系を見つけると手を出していたような。シングルモルトに比べるとブレンデッドは個性がやわらかですが、“飲む『嵐が丘』”とでも言いましょうか、ヒースの枯れた丘に小寒い風が吹きわたるような、いい意味で荒涼たる、孤高な味わいこそスコッチの醍醐味ではないでしょうか。ホッとくつろぐために飲むというより、荒野を彷徨うヒースクリフの魂のように、心を自由にするための酒ですね。

 カドの取れたブレンデッドでもこういう佇まいですから、“人に頭を下げるのが得意じゃない”浩志さんの愛したシングルモルトはもっと孤高でしょう。何としてもラベルが知りたいけど、フレームに映ったら映ったで『相棒』にときどき出てくる“(キリンじゃなくて)ラクダビール”みたいにお茶濁してありそうだな。

一方バーボンのほうは、やはり新大陸的と言いましょうか、辛口の銘柄でもどこか太陽の匂いがする。味が陽性で、楽天的なんですよね。「国は広いし水も土も豊富だし、掘れば金鉱も石油も出るしなんとかなるさ」「サブプライムにリーマンショックで暴落してもノーベル平和賞もらったし何とでもなるさガッハッハ」みたいな。

スコッチが飲む嵐が丘なら、こっちは何だろう。飲む『風と共に去りぬ』長いな。しかもアレは陽性で楽天的どころか、自分大好きの困った女の話だったし。

飲む『大地』?舞台がいきなりアジアだし。

飲む『トム・ソーヤーの冒険』?主人公が未成年だってば。

飲む『あしながおじさん』?思いっきり女の子だってば。

飲む『グレート・ギャツビー』?オールド・フィッツジェラルドというラベルも確かにありますが、どんどん楽天的でなくなっていくな。ギャツビーと言えば「すっきりしちゃって~」という感じでもある。

前の記事でも書いたけれど、月河にとってバーボンのアメリカは文学より映画なんですね。“飲む『スティング』”ってことで手を打ちましょうか。

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この先浩志中

2009-11-11 16:47:03 | 昼ドラマ

Xmasの奇蹟』は、第5話、浩志(岡田浩暉さん)の魂を宿し蘇生した健(窪田正孝さん)が本格的に参入してから、一気に右肩上がりで精彩が出てきました。

意識も記憶も、直(高橋かおりさん)を愛し、彼女に背中を押されて、覆面作曲家兼ピアニスト・Xeno(ゼノ)として世に出ようとしていた浩志のままなのだけれど、身体は20歳のサッカー好き大学生・健。直に「自分は浩志だ」と告げたいのに、告げかけると心拍も呼吸も停止してしまう。浩志の魂が健に入っていることを他人に知られると、今度こそこの世に身体も魂も存在できなくなるらしいのです。この辺り、ともすればナレーションで説明したくなるところですが、窪田さんは表情と、途切れ途切れに呻く様に漏らす台詞だけで、状況を表現し切りました。

社運を賭けて売り出してきたゼノの失踪で、直とともに浩志が立ち上げた新音楽事務所も風前の灯。直の苦境を知って思いあまった浩志=健は、「俺がゼノだ」と名乗り出ます。

 浩志=健にとって、嘘ではなく真実で、かつ、命を失わずにすむぎりぎりの選択が「ゼノだ」の告白。35歳の分別と、愛する女性への思いと音楽への執念、追い詰められての思考の回転が、高校生にも見える童顔の健に宿って懸命の選択肢探しをする内面の葛藤。カメラが揺れたり回ったり、ぐよんごよんエコーがかかったりなど、絵的にも音声面でも勿体ぶった演出はほとんど無いのにこの唯一無二の、命綱のような告白は重く映り、響きました。

命を危ぶまれた昏睡から生還の健を喜びで迎える母・江利子(中村久美さん)と幼馴染みの恋人・仁美(水崎綾女さん)、サッカー友達の光(千代将太さん)たちですが、浩志の魂にとっては初対面の見知らぬ人々。それでも自分と同じ、母の細腕ひとつで育てられた母子家庭と知って、どうにか健として振る舞い周囲を安心させようと浩志(の魂)は努力します。離婚後江利子がエステサロンで働いて健を大学に進学させ、好きなサッカーも思う存分やらせてくれていた様子で、こぢんまりしたマンションですが小奇麗で、健の部屋にもひと通りの物が揃いまあまあ裕福そうです。しかも仁美は健が昏睡中も毎日病院を見舞ってくれた、献身的な恋人。光はクチは悪いけれども、高校時代からサッカーをともに競い同じ大学に進学して、健と仁美の幸せを願う熱血な親友です。

こんなに恵まれた環境でも「この身体で生き返ったのは、ラッキーなんかじゃない、地獄だ…」と呟いてしまう浩志の苦悩。浩志にとって何より大切なもの、大切な人との距離は、見えないガラスで隔てられているかのようにどうしても詰められない、触れられない、抱きしめられない。それは健として享受する、母や恋人の愛、20歳の若く健康な身体をもってしても埋め合わせることができないのです。

とりわけ第7話で、直のマンションの部屋から出てきた浩志の母・多恵(泉晶子さん)と健が偶然出くわした場面は素晴らしかった。母は浩志の納骨を済ませた後の喪服姿です。自分の魂はこうして生きているよと告げたい、でも告げられない。健の姿の浩志は「外は寒いですから、気をつけて」とささやくのが精一杯。母はダウンジャケ姿の見知らぬ若者からの優しい言葉を訝しがりつつ「ご親切に」と去って行きます。

音楽の仕事と、恋愛&結婚に心を領されていた35歳の男といえども、唯一の肉親だった母への思いは別格のはず。ゼノ問題や直との関係だけでなく、母に向けるこの場面を入れたおかげで、“健の身体に入ってしまった浩志”の悲劇が格段の立体感を持ちました。

他方、浩志の健としての蘇生など知るよしもない博人(大内厚雄さん)は、自分の脇見運転で浩志を死なせてしまった罪の意識と、ずっと片思いしていた直を、浩志亡き後こそは自分に振り向かせたい、頼って大事な人と思ってもらいたい下心、そして音大時代の事故以降、地味なスタジオミュージシャンとして埋もれさせていたピアノで陽のあたる場所に出、注目されてみたい野心も微量綯い交ぜになって、事故現場から拾って隠していたゼノ名義の新曲の楽譜を“証拠品”に、「ゼノは僕だ」と直に宣言。直は一も二もなく、面識のない健より、浩志の親友でピアノの能力があることも既知の、博人の言葉を信じてしまいます。

博人の言動には打算が含まれているけれど、狡猾利己的な打算ではなく、芯には純粋な、切実なものもある。こうなってくると、頑迷なくらい「浩志の遺志を汲みたい、ゼノを売り出し多くの人に聴かせる夢をかなえてあげたい」と固執する直のほうが愚かで近視眼でエゴく見えてきてしまうのですが、手書き譜面の筆跡、これから博人がゼノを装って披露するであろう実演奏などから、徐々に不審を持ち気づいていくのかもしれません。気づいていってもらわないと健の空回りだけで物語になりませんからね。

こういうスーパーナチュラルな、SF的な設定って、なんでもアリで都合がいいせいか、長丁場多話数の連続ドラマではとかく後半で放置されたり、無視されたりで、1年クールの特撮ヒーローものなどでもよく「アレ?あの必殺技はこの状況では出せないんじゃなかったっけ?」「あのキャラのこの技はこのキャラに圧勝だったはずなんだけど、同じ技で今度は負けるの?」なんてことが毎話あり、毎話のように前半で敷かれた設定が引っくり返され“無かったこと”にされて行く、所謂“グダグダ化”がつきものなのがいまから非常に懸念されるのですが、とりあえず見た目も設定も、演技ぶりも若々しくみずみずしい窪田さんの参入で、古くさく湿気っぽく「韓国ドラマのいまさら後追い」としか思えなかった物語世界が俄然活気を持ってきました。

ここへ来て、OPタイトルに流れるパク・ヨンハさんの主題歌『最愛のひと』がちょっと浮いてきました。

もっと言わせてもらえば、若干“キムチ味濃すぎ”。「これが聴きたくて、日頃昼帯ドラマなんか観ないのにチャンネルを合わせている」というファンも多いのでしょうが、このOPでドスンと“韓国ドラマ臭さ”の沼に沈められてしまい、本編の、甘く苦いラブファンタジーに“きれいに浸り、心地よく騙される”モードまで這い上がり戻るのに、どうも時間がかかっていけません。

ピアノ曲、ピアニストをモチーフにした物語でもあり、いっそ歌詞なしピアノのソロインスト曲にしたほうがよかったのではないでしょうか。この枠の08年『花衣夢衣』『愛讐のロメラ』では、重要度さほどではないシーンでもかなり大胆に載せられていたコーニッシュさんの音楽が、ヨンハさんに遠慮してか今回えらくおとなしい使われ方なのももったいないし、物足りない気がします。

そのコーニッシュさんのサウンドトラックCDは来週、18日(水)リリース。劇中、ゼノのオリジナル曲として使われた『青の月』のアレンジヴァージョンを含む全41曲、演奏時間6527秒となかなか気合いが入っていますが、いま少しドラマとのシンクロ具合を見守ってからでないと手が出ませんね。

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