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イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

最終兵器穴黒

2010-07-04 19:40:52 | 昼ドラマ

このブログでこんなに長いこと、現行放送中の昼帯ドラマに言及しなかったのは初めてのような気がしますが、そうでもないかな。

先週2日(金)に絶賛最終回を迎えた(……)『娼婦と淑女』、紅子がメイド服着たり男装執事服になったりしている頃まではどうにか当日再生を続けていたのですが、つくづくわかったのは、自分は安達祐実さんにとことん興味がないらしいということだけでした。熱演、力演なのはわかるし、かつコスプレや名セリフ珍セリフ、セクシーシーンの数々などおかずの盛りもまずまずよかったんだけど、さっぱり続きが気にならなかった。

“おもしろそうな話だけれど、主役の役者さんが苦手なタイプ…”と思うドラマは、騙されたと思って、特に帯ドラマの場合、冒頭1週まず視聴してみると、ドラマそのものの筋立て、物語世界に引き込まれていくことによって、遠近法的に役者さんに抱いていた苦手さが徐々に遠のき、気にならなくなって、結局嵌まってしまうこともあります。

しかし、今作『娼婦~』の場合、とにかくドラマのおもしろさが“安達祐実さんがいろいろやってくれる、そのことを興がってください”によっかかっているので、安達さんに興味がないと、自動的にドラマにも興味が湧かない。

“苦手”“嫌い”よりも、“興味がない”は圧倒的に最強で、これを打ち崩す方法論は皆無だということを、再認識した今クールの昼帯でありました。後半半分以上、録画に溜めっぱなし手つかずで終わった昼帯は近来ありませんでしたからね。

さてと、気をとりなおして次クール、75日(月)からの『明日の光をつかめ』に目を向けてみましょうか。

道を踏みはずした問題少年、問題少女たちが更生のため共同生活をおくる農場。何不自由なく育った明朗な女子高生が、ふとしたことから農場で暮らす若者と接点を持ち、そうこうするうちに両親の不倫発覚、学校でもいじめに遭い…と、所謂青春ドラマ、学園もの、ホームドラマのたぐいがたいそう苦手な月河なら速攻「捨てクール」と断じてもいい前振りが掲げられていますが、タイトルからして濃厚に漂う“アナクロニズム”の臭いに、実は結構興味をひかれてもいます。

次の月9のタイトルも『夏の恋は虹色に輝く』なる、一聴、「いま自分がいるここは、2010年の日本だよな?」とカレンダーを確かめたくなるようなシロモノだったりもする。“アナクロ”“いまさら”は、ヒット作を出しあぐねる現在のドラマ界が辿り着いた、一種の最終兵器なのかもしれません。

農場の少年たちの中に、2008年のNHK朝ドラマ『瞳』の一本木家里子・明くん役だった吉武怜朗(れお)さん、『ゲゲゲの女房』での10布美枝ちゃん役での大泣き感動演技も記憶に新しい佐藤未来(みく)さんの顔も見えます。公式サイトの人物紹介図だと、吉武さんが大幅にイメージチェンジしてますなあ。『瞳』当時16歳、いま18歳。うーんいちばん上昇カーブの大きい時期だ。

見ないで拒否しては多くを損します。故きを温ねて新しき知る。まずは無心に“戦略としてのアナクロ”“いまさら加減”を賞味してみるとしましょうか。

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結構なお住まいで

2010-04-24 14:54:09 | 昼ドラマ

『ゲゲゲの女房』と言えば、Aniコレ(@『お試しかっ!』)の初代殿堂・杉浦太陽さんのウザズル男役も新鮮ですね。なにしろ水木しげるさん漫画の金字塔キャラ・ねずみ男のモデルになった人物だそうですから、ウザもズルもかなりの筋金入り設定のよう。起用するほうも勇気あるけど、受けた太陽さんも上等だなあ。

 いまだ『ウルトラマンコスモス』のムサシ隊員のイメージもある太陽さんも気がつけば29歳。ムサシ以外の役で動いて演技しているのを見たのは『浪花の華 ~緒方洪庵事件帳』でちらっとだけですが、「この人、ぼんぼんっぽい役とか正義役より、もっとガラ悪い役とか憎たらしい役のほうが合うんじゃないかな」と、ドラマ以外の場面で一瞬思ったことがあります。

 故・岡田眞澄さんと藤井隆さんがサルさんサルくんの特殊メイクで司会していたなぞなぞ番組『サルヂエ』の2004年頃、ゴールデンタイム進出して緩くなってしまう前の、おもしろかった頃です。“イケメン俳優大会”ということで、ゲスト回答者4人は金子昇さん、沢村一樹さん、速水もこみちさん、そして太陽さん。太陽さんは最初の23問不調で、一度も早抜けサルーンに行けなかったのですが、後半に入って、どんな問題だったか突然ポンと早抜け成功。負け残り回答者席の背後に映るスクリーンからひと言「おや?兄さんたち、どないしはりました?」…

…ナイナイ矢部ばりの敬語毒ガス。6年前、23歳でいまより顔の肉付きがみずみずしく、食べちゃいたい系フェイスだった太陽さんが、すっとぼけた顔で白い歯を見せてこう言い放ったとき、この人、イケメンとかママさんたちのヒーローとかより、もっと毒のあるキャラ持ってるなという気がしたのです。その後、アイドル辻希美さんとのおめでた婚なんかもあって、白い歯のさわやかヒーローからほどほど“ヨゴレ”入ってきた矢先でもあり。太陽ねずみ男、意外に内ラチ一杯をするする抜けてくるかもしれません。

布美枝の東京在住の長姉が旦那さんの勤め先にから差し向けてくれた迎えの車のウィンドウに「ゲゲー!!」と追いかけて張りついてきたときは、イタチというよりゴキブリみたいでしたな。一度で二度効くコンバット。せっかく実家のお母さん兄嫁さんが駅に駆けつけ持たせてくれたおむすびもお茶もちゃっかり完食して退散しちゃってこのヤロウ!と思ったら、座席をとられて怒った乗客に「失礼な男だなあ、アンタがたのお知り合いですか!?」とキレられて布美枝&茂揃って「…すみません」と低頭。2人の動作がシンクロしたのは番組始まって以来。夫婦揃っての“初めての共同作業”を、ねじれたカタチでイタチがアシストしてくれたことになる。“いろいろイタチにかき回されるけど、結果、雨降って地固まる”という、夫婦の未来の暗喩だったか。

イケメンの太陽さんだから、笑えるだけでなくもっとガチにダークなワルにも見える瞬間があり、結構、奥深いキャスティングだったなという気がします。

……ところで23日(金)の、そのお迎えに東京駅まで参上した社用車の運転手さん、OPクレジット見ると、『娼婦と淑女』のヘタレ婿養子役を爆演中の岸博之さんでした。これはクレジットなしでは、到底わからなかった。制服効果、というよりお帽子効果で若く見えるのなんの(24日放送回の調布宅到着時「お幸せに」挨拶で脱帽、識別がつきました)。おかげで同日夜の録画再生は、期せずしてプチ岸さん祭り状態。芸名が経済産業省官僚くずれみたいだけどそれはともかく、ちょこまかした動きが雇われ運転手役にぴったり。こういう持ち味の人を華族の書生あがり婿養子に起用するという、いやいや昼帯もかなり奥深い人員配置をしてくれてます。

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アタイの値

2010-04-15 19:48:05 | 昼ドラマ

『娼婦と淑女』の腹黒執事・藤堂(石川伸一郎さん)は、8話での帽子に上着のお出かけスタイルが『仮面ライダーW(ダブル)』のウェザードーパント井坂(檀臣幸さん)の系統ですな。園咲家食堂で空き皿レゴブロックみたいに積み上げて食事してても違和感なさそう。あのキャラは、基本、貧相で非・肉体派だからこそあの食いっぷりがいいのであってね。

 もっとも、冴子さん(生井亜実さん)は藤堂じゃ「前の夫(=尻…じゃなくて霧彦さん)とチョイ似でイヤだわ」とお気に召さないかも。藤堂は藤堂で旦那さまの愛人千鶴(魏涼子さん)とでけてますし。お互いに“中老け”専入っている同士、相性はよくなさそう。

 でもW』の世界に藤堂、ちょっとお邪魔させてみたい気はしますね。メモリコネクタ身体のドコにあるのかなーーなんて。井坂先生が一瞬脱いで披露してくれたように、上半身のいたるところにあったりなんかしたらゾクゾク来ますな。特撮ワールドの“人間ならざるものが人間の外見を装って…”という設定に、非常にはまるキャラだと思うのです、藤堂。

 『娼婦と淑女』ドラマ本体は、第1週からあまりにおかずてんこ盛りな上、米のご飯に当たるストーリー部分が書き割りみたいな現実感の無さなので、正直、先週末にはうっすら脱落ムードになりかけました。

 しかし第2週に入り月河、見くびっていたと認めざるを得ません。このドラマは、安達祐実さんが“令嬢と貧乏娘の二役を演じる”お話ではなかったのです。いや、確かに二役という面も、少なくとも序盤3話ぐらいまではあったのですが、それより何より、安達さんが“なりすまし演技をする娘の役を演じる”ドラマととらえ味読すべきだった。

極貧で希望のない境遇の紅子が、最初は真彦(鳥羽潤さん)の教育に沿いながら、徐々に自分の内なる野心と上昇意欲の命ずるままに、子爵令嬢・凛子の立ち居、言葉遣いを見よう見真似であやつり、爵位をめぐってケチな角突き合いを繰り広げる一族の争いの泥沼を泳いでいく。安達さんは、本物のお嬢さまでもなく、まるごとの貧乏娘でもない、“付け焼刃で必死に令嬢の振りをする貧乏娘”という難題を要求されているのです。

 難題ですがしかし、安達さんにこれほど打ってつけの役もありません。28歳でなお“童顔”の域すら超えた、少女ぬりえ絵本のような容貌、一児の母となっても依然幼女な、頭身大きめのプロポーション、アニメの幼女キャラ風の声、「何を着てどんな役を演ってもコスプレに見える」という、大人の女優としてはきわめて不利な特性が、そっくりこの『娼婦と淑女』では利点になるのです。紅子自身が、“身の丈につり合わぬコスプレをいっぱいいっぱいでやっている”というキャラなのですから。

 脇役たちの動き、台詞も、安達さん扮する紅子の“なりすまし”の下支えに集中するときいちばん冴えます。階段転落時彼女の身体を抱き上げて運んだ藤堂が真彦に「少し重くなった気がする」「(怪我を介抱した)足の筋肉も、遠出の散歩が効いている様だ」と怪しみ、爵位欲しさに嫡子の凛子をなきものにしたい妾腹のアホ息子太一(久保山知洋さん)が独り言で「(自転車荷台に横座りさせて全速飛ばせば)(しがみつく力のない)凛子ならひと振りで落ちると思ったのに」など、転んでもただでは起きぬ雑草のような生命力と闘争心に満ちた紅子と、清らかで優しいけれどもが温室育ちで覇気に欠けた凛子との対比を際立たせ、“そういう娘が、真逆のそういう人物を‘演じて’いる”という二重構造のスリルを醸成します。

 凛子(実は紅子)の端々の言動を観察して穴を探し、あれこれ術策をめぐらす若い連中は、地位なり資産なり結婚なり“いま自分にないもの”への渇望があるからギラギラし頭もそれぞれに働くわけですが、持てる大人たち=祖母ミツ(赤座美代子さん)母の杏子(越智静香さん)、婿養子の孝太郎(岸博之さん)はもう、年中“爵位を誰に継がせるか、誰には継がせたくないのか”でわいわいすったもんだする以外、何もすることがないかのよう。設定昭和12年の、特に公職も事業も持ってなさげな下っ端華族が本当にこんなアホアホヒマ人大行進だったのかどうなのかなんて気にする必要はまったくなし。

とにかく安達祐実さんによる『ガラスの仮面』以来の劇中劇なりすまし演技の妙味を堪能すべし。しかも『ガラカメ』では文字通り、劇中劇のお芝居なりドラマなりの役を演じていたので、“あらかじめ芝居芝居している”ことが前提の演技でしたが、こちらは(きわめて変ちくりんな書き割り家族とは言え)一応、日常の中に融け込んでのなりすまし演技です。

紅子からの「あたいが凛子になってあげる」提案に乗り、頼りないながらお屋敷の中でカバー、サポート役をつとめている真彦と2人きりのときはがらっぱちアタイ言葉全開で、使用人や真彦以外の家族の目を察知すると速攻「~ですわ」「~ですもの」のワタクシお嬢言葉に動物的反応でスイッチ。よく見るとワタクシ言葉を発しているときでも、目つきや語尾に紅子の雑草魂ならぬ“蛾”魂が透けて見えるカットがあり、安達さんによるここらの劇中劇的匙加減を楽しまなければ、どこを楽しむんだというドラマです。

ただ、欲を言うと、こういう二重構造のトリッキーな役を、ほかの女優さんではなく安達祐実さんに振ってしまう(あるいは、安達さんヒロイン来演が決まった時点で、二重構造の役に企画してしまう)という点に、昼帯ドラマとして“安全策”の匂いがするのは否めません。安達さんのコスプレ演技の手練れさでマスキングされていますが、企画的にはやくざ役しかできない俳優さんでやくざ映画を撮る、ラブコメしか演れない女優さんでラブコメを作るのと同類の仕事です。

戦前華族の後継ぎをめぐるゴタゴタ、瓜ふたつの身分違いの2人の娘…というモチーフも含めて、とことん守りに入りまくっており、舞台装置や人物描写の書き割りくささより、その点がいちばんアチャーです。

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蛾ツンと行こう

2010-04-06 15:43:25 | 昼ドラマ

5日(月)から始まった4月期昼帯ドラマ『娼婦と淑女』、初っぱなから安達祐実さんの二役2ショット、鳥羽潤さんへの「抱いて」みずから脱衣求愛など“白いご飯の見えないウニ丼”状態で幕を開けましたが、“東海テレビ得意の、ドロドロエグいネタドラマ路線”にまるっと乗っかっている様に見えて微妙に非なる、独特すぎるワールドが展開しています。

安達さん演ずる2人のうちの1人・凛子の実家で子爵家である清瀬家を実質取り仕切っているのはお祖母さまのミツ(赤座美代子さん)。日よけになるんじゃないかってぐらいたっぷりアンコ入れて突き出させた庇髪に、何て言うのかわかりませんが柄物の半襟、着こなしといい長―――い煙管といい、「~しておくれね」「~じゃないか」の言葉遣いといい、明らかに“粋スジの出”イメージです。

子爵の正妻が花柳界出身。逆風だったろうねえ。正妻におさまるまでの道程もさぞ波乱万丈、山あり谷ありだったことでしょう。いちいち説明はしないけれど、目つき顔つき一挙手一投足で、闘って生きてきた女のたぎるマグマを表現する赤座さん、圧勝の貫禄です。昨年の『夜光の階段』での老いてなおお盛んな大女優みたいな、カリカチュールな役どころが最近多い赤座さんですが、“戯画成分”の混ぜ込み配分がその都度お見事。

ひとり娘の杏子(越智静香さん)に遠縁の書生上がりの婿養子孝太郎(岸博之さん)をあてがったものの、生まれた凛子は生来の病弱。しかも女子では爵位を継げません。おまけに能なしの種馬だったはずの孝太郎が、元・使用人でいまは小料理屋を開いている千鶴(魏涼子さん)に手をつけ、男子が生まれ、あろうことかその子・太一(久保山知洋さん)を認知して屋敷の中に同居させちゃった。怒り心頭のはずの杏子は、病弱な凛子を甘やかすばかりでさっぱりピリッとしない。ミツさん、這い上がって鼻高々のはずの名家の直系の血筋を、自分の目の前で途絶えさせてはなるまじ。だから年中カリカリしているわけです。

そのせいかこの子爵家、表面は一応、名家然とした構えや調度が(昼ドラサイズで)揃っていますが、ミツさんの亡き夫=先代当主清瀬子爵の肖像も、遺影のひとつもないし、「凛子の結婚相手を発表するぱーてぃーを行なう。」の宣言まで、華族セレブにつきものの“社交”の気配がまるで見られません。とにかくトゲトゲ、ギスギスしていて、そのトゲトゲがことごとく“内”に向かっている。内に入ればトゲの突き出てる家に、外から社交に訪れるセレブ仲間なんかいませんわね。

さらには病弱ゆえ引きこもりがちな凛子のお話相手兼お世話役として、同じ子爵である久我山家の次男坊・真彦(鳥羽潤さん)が幼い頃から兄妹同然に育てられているのですが、この子爵次男、華族感ゼロ。下男以上に下男っぽい。凛子のためにストールは持つ、布団は敷いてくれる、お祖母さまが来訪したら平身低頭。メイド喫茶でも執事喫茶でもなく“お兄さま喫茶”とでもいった風情。子爵同士なら同格の家柄のはずですが、先代時代に清瀬家と何か貸借、恩讐、あったのかな。今後登場する予定の真彦父・野村宏伸さんが鍵を握っているかも。

まあ華族と言ったって格ばかりお高くて財政窮乏していた家も多いといいますし、次男以下ともなれば冷や飯食らいでしょうから、下男チックでも一種の趣味だと思えばいいのでしょうが、この真彦、「あたしはオマエを凛子の結婚相手にと思っているんだがねぇ」とお祖母さまに言われても、「そんなこと考えたこともありません」と、もじもじタジタジ、テンションの上がらないこと上がらないこと。

凛子さんのほうは、“お兄サマが好き、妹のような存在はもうイヤ”と肉食入っているのですがね。普通に考えても、他家で養子同様に育てられてコンニチがあるというこの状況なら、令嬢と結婚して家督を譲ってもらう以外、将来の希望はないことぐらいわかりそうなもんなのに、どういう料簡で小間使いまがいのことやってるのか。昼ドラにおける、ヒロインの本命王子さま役は概ねはっきりしない優柔不断うすらコンニャクみたいな男が多いのですが、真彦はそれらぜんぶの“全体集合”級の得体の知れなさです。

ミツお祖母さまが連れ歩いてる執事の藤堂(石川伸一郎さん)のほうが、真彦よりよっぽど堂々として偉そう。姿勢も良く動作もきびきびしているし、顔つきも締まっているので、衣裳取り替えたらこちらのほうが華族子弟、特に軍人系のそれに見えるかも。

また、後継ぎ後継ぎと騒ぐ家に限って、妾腹のほうが出来がいいものと相場が決まっていますが、前述の太一は「凛子さえいなくなれば」と爵位を乗っ取る気満々ながら、ときどきお祖母さまの嫌みと煙管アタックが襲来する以外は冷遇される風もなく家族の一員として一緒に食事をし、人一倍食べたほかに暇さえあれば間食の大バカ野郎ときている。

物語は凛子そっくりの容姿を持つ貧乏娘・紅子の、別荘で毒死した凛子に代わってのお屋敷潜入劇が軸となってこれから転がっていくと思われますが、華族のようでなーんか華族らしくない、入れ替わって令嬢におさまってもさっぱり嬉しくなさそうな、珍妙にゆがんだ家と人々。

ゆがみの多くは、真彦の“王子さまポジションらしくなさ”“パッとしなさ”から来ていると言ってもいいでしょう。こんなヤツに思いを寄せて結ばれても、ひとっつも幸せになれなそう。紅子の成り上がり物語、ハッピーエンドを目指すにしても、コイツがグランドフィナーレになることだけは想像できないなあ。安達さん熟練の、気合い入った貧乏ゼリフの力もあって、紅子のほうが気っぷもツラダマシイも、ずっとオトコっぽく見えるもの。どう転がるのかなあ。

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空也食わず

2010-01-12 17:33:38 | 昼ドラマ

『インディゴの夜』は第1週と、ファーストエピソードを11日(月・祝)で終え、晶(森口瑤子さん)がまだ半ば不承不承ながら店長職を受け入れて、次エピ以降への下地はOK、というところまで来ました。

 「昭和」「おばさん」、「“ディスコ”と言って“クラブ”と言い直される」などの加齢ワードにいちいちツムジを曲げる、元・売れ筋女性誌編集者とは到底思えない晶のナーバス加減や、要所要所で巻き舌ダミ声でキレるステレオタイプ元ヤン表現など、ベタな漫画チック描写をそれなりにぬるく笑って過ごせれば、“従来の同枠との違いを打ち出した、新感覚昼ドラ”としてさしたる破綻は見当たりません。

 何と言っても今作は、キャストの年代が圧倒的に若いほう寄りで、かつ“ユニークなホストクラブの型破りホストたち”という設定のため、“カッコかわいい”“おもしろミステリアス”“ネタ可笑しい”と多方面、高低さまざまのハードルをクリアしている面々なので、従来のここ枠の昼帯とは比べものにならないくらいトータルの絵ヅラが“軽快”です。晦渋さや、ねっとり湿気がこんなに少ない昼帯は記憶にないほど。

“年長組”の森口さんにしても、アラフォー設定にしては反則的に若々しく、六角精児さんは意外性があり(『相棒』の多趣味オタッキーで温和な鑑識マン役の、軽く倍は声量がある)、升毅さんはこれまた設定的に作り込むだけ作り込んでいる役柄なので、反則的におもしろい。

ただ、全体が若く軽く明るくなったのに比例して、目線も下がった。年齢的にも、人生経験的にも、読書歴・ドラマ視聴歴的にも、従来よりかなり低い層を目標に想定して製作されている感じです。高校女子、中学女子をメインに、昼休みのOLさんやパート主婦、専業主婦の中でも“ここ23年の間に就職、もしくは反対に寿退職→家庭入りした”人に目線が向いていそう。

要するにすべてがビギナー仕様で、夜のお仕事ものとしても、素人探偵ミステリとしても、アラフォー女子の“遅れてきた自分探し”ものとしても、敷居が低く入って行きやすい代わり、奥行きも浅い。スーパー浅い。

1stエピ、「自殺しようとする女性なら発見時に見苦しくないよう、身だしなみを気にするはず、赤のブラウスに緑のスカートなんてミスマッチな色合わせを着て死ぬはずがない」という晶の思い込み披露も噴飯ものなら、ホスト諸君が“さすが女性視点”とばかり納得して聞いているのも滑稽を通り越して憮然でした。

加えて11日放送の同エピ解決篇、晶が真犯人に到達する糸口が“青汁の緑色が判らなかった=色覚異常”とは、他愛なさ過ぎて噴飯する元気もなし。まぁ『相棒』を筆頭に、テレビ朝日の1話完結事件ものなんかではこの手の、トンデモトリックトンデモ手口、あるいはトンデモ動機をトンデモ思考回路で思いつき急転直下って珍しくないのですが、トンデモなら「これはトンデモですよ」と納得させる地合いを最初からしっかり作って踏み固めておかなければなりません。たとえば『富豪刑事』シリーズのようにね。

殺されたTKO(タケオ)(金子裕さん)が困っている人を見ると男であれ女であれほうっておけないたちで、インディゴの若手たちからも兄貴分にして恩人と慕われており、晶が酔って捨てた婚約指輪をこっそり拾って手紙を添え返してくれるような、心優しく男気あふれる性格だった等と中途半端にシリアスしんみり要素を付加してしまったから、「くっだらねー!」と気持ちよくバカ笑いして終了といかないわけです。

実はいちばん脱力したのは、第3話(7日)のインディゴ憂夜(加藤和樹さん)とエルドラド空也(徳山秀典さん)との、夜の線路沿い差しでの対話シーン、憂夜の「ウチのTKOが殺されたことは知ってるな?オマエの常連客に殺された疑い高い」というセリフでした。

Qさま!!』レベル以下。「疑い」「容疑」なら、「高い」ではなく「濃い」でしょうよ。どうしても述語を「高い」にしたいなら、「~殺された可能性が」にしないと、主述が噛み合わない。

見れる着れる食べれる、マジかよ?チガくね?のDQN設定人物ならなんでもありませんが、憂夜は公式の人物紹介によると「“んなヤツいるわけねーだろ”的に頭脳脳明晰、冷静沈着」設定なのです。頭がいい設定のキャラなら、頭の悪そうな言葉遣いをさせてはいけない。これは脚本家と、脚本をチェックするP、及び現場でOKを出す監督の責任です。

そもそも、この程度のセリフ内語法ミスが気になる時点で、ガハハと笑過せしめるだけの勢いがドラマに無いということ。もっとどうしようもない愚かな間違いだらけのセリフが、2時間ドラマなど溢れかえっていますからね。気になって引っかかってしまうということは、“うまく客を騙せていない、押し切れていない”のです。

一週終わっての感想は、「このドラマを見守り見届けるのは自分の任ではないな」というところに落ち着きそうです。製作サイドが“こういう人に視聴してもらいたい”とイメージする客層の中に、月河は入っていない気がする。逆に言えば、月河が観なくても、月河では気づけないおもしろポイントをしっかり見つけて楽しんでいる人が、確実にどこかに結構いそうな気がする。

ここで何度も引き合いに出しましたが、たとえば07年の同枠『金色の翼』は、修子(国分佐智子さん)が弟にもウソをついて槙(高杉瑞穂さん)と落ち合うべく東京に発った辺りで、“修子はヒロインではなく人物たちの欲望の触媒”と読み替えが成り、デュ‐モーリアの『レイチェル』との相関を見出した途端にぱーっと霧が晴れて、「どんな展開になっても、たとえ最終的に残念な出来になっても、自分だけはこのドラマを最後まで見届けよう」という意欲がフツフツと沸いてきたものです。長編の小説や、多篇収録の作家別短編全集などに取りかかったときに、そうしょっちゅうではありませんが経験する、“作品に呼ばれる”“作り手に呼ばれる”感覚(もちろん、必ずしも“傑作・秀作の予感”を意味するものではありません)です。

『インディゴ』には未だそれがない。…まぁ、2ndエピ以降も、一応OPに登場している面子が戦列に出揃うまでは付き合おうと思います。『任侠ヘルパー』以来の高木万平・心平ツインズと、『浅見光彦 ~最終章~』に出ていたらしいアバレキラー田中幸太朗さんの顔が見えますし。

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