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ジ・アメリカンズ シーズン6 【感想】

2018-09-07 23:00:00 | 海外ドラマ


先日、Netflixの値上げが報じられた。ファンとしては200円程度の値上げなど痛くも痒くもなく、今後もこのペースでコンテンツを供給してくれるのならば歓迎するほどだ。自分だけでなく他の家族もそれぞれお気に入りのコンテンツを視聴しているのも大きい。Netflixのオリジナル作品だけでなく、これまで見たくても見られなかった映像コンテンツを惜しみなく配信するスタイルは、業界に新たな歴史を作ったといってよい。そして、その最たる例が、海外ドラマ「ジ・アメリカンズ」だ。

最終シーズンとなるシーズン6の最終話が北米で終了してから、わずか3ヶ月足らずで配信をスタート(早い!)。全話一挙配信は勿論のこと、日本語吹き替えも実装済み。いつものとおり何の予告もなく、「今日から見られますので~」の案内メールを見て驚かされる。

で、全10話を見終わったので感想を残す。

いよいよ決着がついた。

最終シーズンにしてはボリューム不足を感じたが、納得の結末であり、何より、主人公らにとって最良の選択だったことが素晴らしい。
第9話と第10話が、これまでのシーズンを通して最も濃密かつスリリング。シビれた。

シーズン5は、これまでのシーズンのなかで最もつまらなく、自分も感想を残すことを忘れていた。無駄にスリルを作って中身のないドラマは好きじゃないが、それにしても前シーズンはおとなしすぎた。このパターンだと次シーズンへの期待はもてないが、本シーズンが最終となることはわかっていたため、あらゆる問題に決着がつくものと楽しみにしていた。

前シーズンから3年が経過した設定だ。映画「スリーメン&ベビー」が公開中ということから、1987年らしい。ソ連では「ペレストロイカ」で有名なゴルバチョフの台頭により、民主化に大きく傾く激動の時期を迎える。冷戦の終結は1989年なので、冷戦の産物である「潜伏スパイ」主人公らの存在意義が問われることに繋がっていく。



3年も経過しているので、フィリップ家族にも大きな変化があった。なんとフィリップがスパイから足を洗い、旅行代理店の家業に専念していた。ところが、この3年間で職場の規模を大きくしたものの、顧客が離れ、経営難に陥ることになる。まあ冷静に考えると、スパイ活動の片手間でやっていた頃が順調だったというのが無理があるというもの。このあたりはファンタジーだ。

一方のエリザベスは変わらず諜報活動を続ける。「穏健派」のフィリップに対してエリザベスは「武闘派」。ミッションに支障をきたすと判断すれば、迷いなく目の前の人間を殺す。その非情ぶりは、これまでのシーズンになかったほどだ。フィリップというストッパーがなくなったことが大きい。また、彼女1人が背負う仕事が増え、同時に難易度も高くなるばかり。失敗も増え、疲れとストレスが彼女を精神的に追い込んでいくように見える。



フィリップと入れ替わる形で、長女のペイジがエリザベスの諜報活動に加担する。親心か、リスクの高い役割を与えないものの、これほどまで直接的に関わるとは思わなかった。おとなしかったはずのペイジが激情に任せ、男子相手に暴力を振るうシーンもあり、エリザベスのDNAを感じさせる。弟のヘンリーは、実家を離れ、高校(?)の寮生活をおくる。2人ともまだ幼い顔立ちで、前シーズンから撮影期間が短かったせいか、3年後という設定がしっくり来ないのは惜しい。

ゴルバチョッフの台頭により、ソ連が民主化へと大きく変わろうとする時代。祖国ソ連の正義を疑うことのなかったエリザベスは、これまで手段を選ばず、アメリカでの諜報活動を続けてきた。すべては、ソ連と世界の平和のためだ。ところが、本シーズンで、その信念が揺らぎ、ついに崩壊する。アメリカで家族を作り、20年以上、暮らしてきた彼らは、民主主義がもたらす幸福を知っている。ソ連の未来はゴルバチョッフにかかっていたが、それを良しとしない、旧体制の存在があり、エリザベスは「利用」されていたことに気づく。彼女がはじめて、本部の命令に背き、自身の判断で「ミッション」を遂行する。地味なシーンだが積もりに積もった鬱憤が晴れ、強いカタルシスを感じた。



フィリップがスパイから足を洗ったのは、彼女よりも先に本部の正体を見抜いていたからと想像する。2人とも、アメリカ市民として新たな一歩を踏み出そうとするが、シーズン2以降、まったく手も足も出なかったFBIが彼らに急接近する。FBIが無能だったというよりも、2人が有能なスパイであり、つけいる隙がなかったというべきか。今回も彼らを危機に陥れるのは、外部の第三者の失敗によるものだ。今回ばかりは、さすがの彼らも万事休す。

そして訪れるのは、FBIの隣人であるスタンとの対峙だ。
「ついに、この時が来てしまったか」と身震いした。

思い返せば、シーズン1、フィリップ家の隣に、スタン家族が越してきて、FBIという職業を認識して以降、警戒すべき相手としてフィリップたちは接していた。スタンの動きによっては、フィリップたちは彼の命を奪いかねなかった。それがシーズンを通して家族ぐるみの付き合いになり、人間対人間の純粋な絆を深めていった。特に一家の長である、フィリップとスタンの友情関係はこれまで何度も描かれてきた。家族以外の人間とは親しくなれないフィリップにとっては、アメリカに来て唯一できた親友である。スタンも当然同じ思いだ。「君たち家族のためなら、どんなことでもした」と吐露するスタンの言葉が胸を締め付ける。こうなることはわかっていたけど、あまりにも切ない。



その後、フィリップらの行く末を目撃し、このドラマは家族の成長を描いたホームドラマであったことを改めて感じる。過酷な時代のソ連で生き抜いてきた2人が、アメリカに潜伏するために強制的に家族になって20年以上。いつしか2人に間には、任務を超えた本当の愛が芽生え、守るべき2人の子どもたちにも恵まれた。子どもたちは立派に成長し、「巣立ち」の時を迎えた。スパイにならなければ出会うことのなかった2人。この数奇な運命が、ラストショットの2人の背中に去来する。本作は究極のラブストーリーでもあった。



これ以上ない有終の美だったが、あと3話多い、いつものエピソードのボリュームで、大きく動いた歴史的背景と主人公らの関係性や、彼らの身元が判明してから結末までをもう少しじっくり描いてほしかった。また、1980年代の時代設定のため、時が経過し、現代に生きる彼らの姿を見られたら、もっと面白かったと思う。

今年のエミー賞では、フィリップとエリザベスを演じたマシュー・リスとケリー・ラッセルがそれぞれ主演賞でノミネートされている。2人とも最終シーズンにふさわしい熱演を魅せてくれた。どちらかでもよいので、受賞してほしいなーと心から思う。すっかり2人のファンになってしまった。

この間、久しぶりにTSUTAYAに行ったら、ようやくレンタルがスタートしていた。パッケージの写真も「極秘潜入スパイ」という日本の副題もダサくて残念だ。ガチなA級海外ドラマなのに、あれではこのドラマのクオリティが誤解される。

素晴らしいドラマだった。イチ早く、日本で配信してくれたNetflixに今一度感謝したい。これからもよろしくです。

【75点】


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