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gifted/ギフテッド 【感想】

2017-12-06 08:00:00 | 映画


マーク・ウェブのイイ仕事。クリス・エヴァンス×少女×デカ猫=最強の画。
少女に与えられた才能「ギフテッド」を巡るホームドラマ。本作で描かれるのはかなり特殊なケースだが、テーマの本質は実は普遍的なもの。子どもを授かり、子どもを育てるという経験は、親と子ども、双方にとってどんな意味を持つのか。妥協案ではないラストに晴れやかな余韻が残る。新星マッケナ・グレイスの演技にまんまとヤラれる。クリス・エヴァンスも素晴らしく、やっぱりアメコミヒーローだけでは惜しい人だ。

個人的に今年最もYoutubeで予告編を見た映画だ。可愛い少女が大きい猫を抱き上げるシーンが悶絶萌えで、癒しのひと時として何度も見返していた。。。マーク・ウェブの久々のドラマ映画としても注目していた本作だったが、期待通りの良作で大満足。

主人公のフランクは、亡き姉の忘れ形見である7歳の少女メアリーと暮らしている。叔父と姪っ子の関係であり、おそらくフランクにはメアリーを育てる扶養義務はない。メアリーもフランクを親代わりとして見ておらず、仲がいい者同士「同居」しているという雰囲気。お互いを第三者に話す際には、「彼女(メアリー)は面白いコ」、「彼(フランク)はいい人」と互いを個人として認めている印象だ。2人で体を寄せ合い、手をつなぐ様子は恋人同士のようでもある。欧米における親子関係がそもそもそんな感じなのかもしれないが、「子どもの面倒をみる」という日本人の感覚とはどこか違う。

物語は、自宅学習を続けていたメアリーが小学校に初登校することから始まる。彼女には天才的な数学能力が備わっていて、同居しているフランクも十分認識している。学校で受ける教育がメアリーにとって不釣合いであることも織り込み済みだ。頭の良いメアリー本人もわかっていて学校に行くことを嫌がるが、それでもフランクはノーマルな生活を送らせるために半ば強引に学校に行かせる。その背景には、フランクの姉であり、メアリーの母であったダイアンの存在がある。

メアリーの能力は完全な母親譲りで、母親のダイアンは数学者だった。彼女の死は不幸な悲劇であり、その経緯にフランクが絡んでいる。拭えない罪悪感と後悔、ダイアンにとって幸せな人生とは何だったのか。。。その思いがそのままフランクのメアリーの育て方に繋がっている。

案の定、学校教育とのギャップに直面し、その後、英才教育を受けさせたいフランクの母(メアリーにとっての祖母)との親権争いに発展する。フランクはメアリーの母であるダイアンの意志を継いでいるわけではなく、彼自身も、何がメアリーにとって一番幸せなのか確信をもてずにいる。彼の心揺らぐ様子が誠実に描かれていて感情移入してしまう。「子ども自身に好きなほうも選ばせる」が1つの答えとも考えるが、そうもいかない。

本作で初めて認識させられる価値観が「才能の責任」だ。それは才能ある子どもを授かった親の責任であり、才能を与えられた子ども本人の責任でもある。「ギフテッド」という神から与えれたプレゼントのような言葉の響きからも、その才能には個人の範囲を超え、社会的な役割をもつと受け取れた。平たくいえば、せっかくの才能を社会のために活かさないでどうする?ということ。およそ凡人には考えもつかない話であるが、人類がこれまで多くの発展を遂げてきた背景には多くの天才たちの貢献があったことは事実だ。本作でも執拗な英才教育を加えた母に対して、ダイアンが自身の役割に気づき感謝したという話が印象に残る。

それでも才能を活かすも殺すも個人の勝手というのも当然だ。しかし、メアリー本人は高等教育を受けることにウェルカム。頭脳の天才は学ぶことも欲する。今の生活環境ではメアリーが望む教育を受けさせられないと知るフランクは、母との親権争いのなかで、最善の道を模索する。

映画のテーマは一見「天才児をどう育てるか」みたいなものだが、おそらく本質はもっとありふれたことで「子どもとどう生きるか」が正解だろう。子どもを授かって、子どもを育て、子どもと家族として生活する時間が、親と子どもにとってどれだけ掛け替えのないものか。それは血縁関係に限らない。フランクとメアリー、そして片目猫のフレッドとのささやかな日常風景のなかに、家族でいることの喜びが何度も垣間見れる。

マーク・ウェブが久々のドラマ映画で本領を発揮。「500日のサマー」の感動再び、とまでは行かないが、笑いと涙を誘う温い人間模様を確かな演出で描いていく。キャラクターの魅力を引き出すことにも長けていて、本作の中心にいるメアリーの魅力が映画を牽引する。純粋で、正義感が強く、勝気で、生意気で、フランクが大好きで、表情がくるくる変わるメアリーの愛くるしさったらない。前歯が抜けた笑顔と、しかめっ面が可愛すぎてツボ。演じるマッケナ・グレイスが呼んで字のごとくの「好演」。彼女の感情が爆発するシーンに、ついついもらい泣きしてしまう。メアリーだけでなく、カメラを意識させなかったというほかの子どもたちの表情も本当に可愛い。そしてフランク役のクリス・エヴァンスもいい味を出す。キャプテンアメリカのイメージがまだ先行していた頃、「アイスマン」で演じた冷徹な「仕事人」役に釘付けになったのを思い出す。やはり彼は演技派と感じる。常に自然体でメアリーに接しながら、メアリーの未来を想い、葛藤するキャラクターを繊細に演じる。

本作の結末を迎えて、「良かった~」と呟く。
登場キャラが選んだ最良の選択と、自身の満足感によるものだ。
マーク・ウェブ、今度は再びラブロマンスを撮ってくれないかな。

【75点】

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