園子温の新作「地獄でなぜ悪い」を観る。
昨日は20日でMOVIXさいたまが1000円の日だった。
大雨かつ公開の末時期だったので空いていると思いきや、結構な混みようで驚く。
埼玉県民の中にも園子温ファンはいるのだと実感。
本作は、2つの暴力団の抗争を映画として撮影しようとする人たちの物語だ。
血しぶきさえも「虹色」に変えてしまうメルヘン&ファンタジー活劇。
「地獄でなぜ悪い」の応えは「全然悪くないっス」。
様々なキャラが登場する。
長谷川博巳演じる、30を過ぎても定職につかず、映画を撮ることを夢見る男。
二階堂ふみ演じる、ヤクザの娘で、かつて子役として一世を風靡した女子「ミツコ」。
國村隼演じる、「ミツコ」の父親で暴力団「武藤組」の親分。
堤真一演じる、「武藤組」と敵対する「池上組」の親分で「ミツコ」に心奪われている男。
星野源演じる、「ミツコ」に関わったことで事件に巻き込まれる男。
どのキャラも主役と言って良さそうな脚本だ。
それぞれにちゃんとした物語が用意されていて、いろんなテーマをひとまとめにしている感じだ。
「恋愛」「任侠」「映画愛」「アクション」「スプラッター」・・・と、ゴッタ煮状態。
冒頭からそれぞれ異なるストーリーが同時並行に展開していくため、
どのように1つの物語にまとまっていくのか、気になりながら追っていくが、
まとめ方がもうメチャクチャである(笑)
「そんなのありか!」とその強引さにもう笑うしかない。園子温の勝ちだ。
徹頭徹尾、論理なし、秩序なし、常識なしだ。
ツッコミを入れるという発想自体が恥ずかしい。
園子温の映画に対する編愛、人格にある性癖、
そこから生まれ出る破壊力を堪能することに楽しみがある。
また、園子温映画に共通している頑丈なキャスティングが、
本作の140分という上映時間を飽きさせないものにしている。どのキャストもキマっている。
國村隼が確かであることは勿論のこと、堤真一がエラいことになっている。
「半沢直樹」なんて目じゃない凄まじい顔芸を披露。劇場の笑いを独り占めしていた。
そして何と言っても、「ミツコ」演じた二階堂ふみだ。
血まみれのベロベロディープキスを魅せたと思えば、
ホットパンツごしの彼女の半ケツをカメラは執拗に追っかける。
他にも二階堂ふみを通して多くのエロスが魅せつけられる。
荒唐無稽な本作のパワーの源泉はヒロインの「ミツコ」であることは間違いなさそう。
長谷川博己演じる映画バカの熱量をもってしても叶わない。
映画とは頭と心、そして下半身をもって感じるものであるだ、と言わんばかりだ。
園子温はつくづく女子の肉感が好きな男だ。大いに共感。だから楽しい。
映画を観て、その作り手である監督の思考を
これだけ気にしてしまう映画監督は日本にどれだけいるだろうか。
それを作家性と言い換えるのは語弊があるかもしれないが、
やはり園子温という映像作家は特筆すべき存在だ。
ラストの締め方は芸がなさすぎてさすがに買えない。
様々な立ち位置のキャラを同じ勢いで描いたことに散漫さも否めない。
完成度としては欠点多き映画でもあるが、
前作「希望の国」から見事復活を果たしてくれたようで嬉しい。歓迎。
【65点】
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