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プーと大人になった僕 【感想】

2018-09-27 08:00:00 | 映画


胸が締め付けられるような邦題だ。子どもではいられなくなった僕と、子ども時代と変わらないプーさん。知っているようで知らない原作、その正体は「クマ」ではなく「クマのぬいぐるみ」だったことに気付かされる。ぬいぐるみですら友達だった幼少期を思い返すと、その想像力の象徴がプーさんの存在に思えてくる。難易度の高い実写化と思えたが、本作の描き方はファンタジーとリアルをそのまま繋げることだった。プーさんは主人公にしか見えないものと予想していたので、結構意外だった。ファミリー映画のわかりやすさと、ぬいぐるみを相手にここまでハートウォーミングな冒険劇を作ってしまうディズニー映画はやっぱり手堅い。ユアン・マクレガーがプーさんとの友情をナチュラルに好演。

プーさんの絶妙な萌え加減が素晴らしい。よく聞くとハスキーなオッサン声なのだが、愛らしい外見と、のんびりマイペースな言動がその声にピッタリだ。主人公のクリストファー・ロビンと再会後、昔はあんなに仲良かったのに邪魔者扱いされ「自分はオツムが小さいから、ごめんね」としょんぼりする姿に何度も泣きそうになる。ぬいぐるみなので、実は表情がないキャラクターたちだ。にもかかわらず感情の豊かさに驚かされる。声を演じるジム・カミングスという人は、アニメ版でもプーさんの声を演じているようで、他にも数々のディズニー映画でキャラクターを演じているとのこと。本作では、ハイテンションなティガーも演じており、日本でいう山寺宏一さんのような人なのだろう。

プーさんが赤い風船をねだるシーンがある。主人公は「必要ないだろう」というが、プーさんは「必要ないけど欲しい」と返す。実利と必要性は必ずしも比例しないはずだ。だけど、大人になればなるほど、効用の有無だけで物事の価値を決めがちになる。そして、何事も最短距離を選ぶようになる。「夢はタダでは買えない」はごもっともで、経済活動で生きる立場になれば、必然の考え方だ。但し、子どもたちが生きている世界は違う。子どもに対して「そんなの意味ないだろ」と決め付けてしまう自分を反省する。

「何もしない」ことを「している」プーさんは、主人公と観客に立ち止まることの大切さを教える。舞台は戦後復興の時代、本作で描かれるような仕事過多に対する抵抗は、懸命に働いた当時からすればおそらく綺麗ゴトであり、ワークライフバランスなど、働き方の多様性を問う現代だから描けたように思う。主人公が家族という最優先事項に気付くのは良いとして、「何もしない」から発想を得て、起死回生とされるビジネスプランを提示するクダリは強引すぎてズッコけてしまう。また、子ども時代の想像力を示したことで、ピグレットたちとの友情を取り戻したシーンがあったのに、結局、誰かれ構わず、仲良く共存できる実在物としてキャラクターをまとめたのはつまらない。

予定調和で平凡な物語に帰結した印象も強いが、王道なディズニー映画を大いに楽しんだ。プーさんはめちゃくちゃ可愛かったし、絵本の世界を切り取ったようなロケーションも美しかった。

【65点】

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