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東日本の震災に遭い、仮設住宅で暮らす女性の、役所勤めと風俗勤めの二束わらじの生活を描く。原作は本作の監督である廣木隆一の処女作。被災者に対する誠実さが強く感じられる映画。実際に被災に遭われた方たちから生の声を拾って書き上げた物語と察する。大切な人を亡くし、生活の糧にしていた仕事を亡くし、住む場所を失くした人たち。深い喪失と望郷の想いを抱えながらも前を向いて生きなければならない。本作の主人公が選んだ生き方は、経済的な問題を解消するために風俗で働くというもの。仮設住宅で暮らしながらも役場で働く主人公は、生活が困窮しているようには見えないが、同居し仕事を全くしなくなった父との今後の将来を考えてのことだろうか。危険にも晒されるデリヘルの仕事だが、高良健吾演じる風俗店の店長との交流が主人公に生きる希望を見出させる。人と人はどこで繋がるかわからない。また、主人公の物語と平行で描かれる、同じ境遇で役所に勤める青年の生き様が印象に残る。大学の卒論ネタを取材するために、ズケズケと当時の様子を聞きだそうとする女子大生を前にしてつい言葉を失ってしまう。彼は悲しい過去を乗り越え、今を生きようとしているだけであり、安易な同情や上辺の理解は返って相手を傷つけるだけだ。普段の生活を送っている自分たちにはとうてい計り知れない状況に違いない。今もなお続く、原発によって故郷を追われた被災者の方たちが、安全に故郷に戻れる日を願う。
【65点】