から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

グレイテスト・ショーマン 【感想】

2018-02-17 13:16:57 | 映画


実在した興行師、P・T・バーナムの設定を借りたゴージャスでライトなミュージカル。キャスト陣の芸達者ぶりと、眼福感たっぷりのミュージカルシーンに見入る。一方、映画は「実話」モノではなく、万人ウケを狙ったファンタジーだ。嫌悪感を排除し、綺麗に気持ちよく魅せることに終始する。ユニークな体型をもった人たちも、多様性の言葉だけでくくり「団結」「家族」といった話にまとめる。彼らを演じるのは、仮装した一流のシンガーやダンサーたちだ。加速の一途を辿る美化に途中からついていけなくなる。レベッカ・ファーガソンの堂々たる吹き替え歌唱パファーマンスなど、偽物が透けるシーンには高揚しない。ザック・エフロンの久々のミュージカルが見られたのは良かった。

「フリークス」という映画がある。見たことはないが、今から80年近く前に製作された映画で、身体的な奇形や障害をもって生まれてきた人たちが多く出演している。人権上の問題から公開禁止となっている映画らしい。その映画の存在を知って、調べていくうちに当たったのが、本作の主人公のモデルとなっているP・T・バーナムだ。

日本のマーケットはミュージカルと相性がいい。「レ・ミゼラブル」「アナ雪」、そして、去年の興行収入1位となった「美女と野獣」。配給会社が鼻息が荒くなるのも当然で、異例ともいえる大量のプロモーションをメディアに投下していた。ずいぶんと前から劇場での予告編も流れていたし。「ラ・ラ・ランドの製作陣が贈る!」と声高に言うが、作曲家が同じというだけで全く関係ないし、映画のレベルも比較できるものではない。

予告編で流れているとおり、本作は良くも悪くも夢物語だ。P・T・バーナムがサーカスの興業で成功を収めた背景にあるのは、身体的に奇形のある人たちを起用したことだ。ストレートな言い方をすると「見世物」であり、笑われ、怖がられてもお金をもらえればよい。その人たちの当時の写真をみると、昨今何かと叫ばれる「多様性」なんて言葉では括れないほどのインパクトを受ける。今よりももっと不寛容だった時代のこと、表舞台に立つことの怖さは計り知れなったと思う。

自分が思うよりも彼らは逞しかったかもしれないし、バーナムや観客からも敬意や親しみをもって接せられていたもかもしれない。働き口のない彼らにとっては救われる仕事だったのかもしれない。。。それにしても本作には違和感を覚える。リクルートしてすぐに採用され、舞台に登場すると最初は観客が戸惑うも、すぐに喝采を浴びる。心ない観客から「フリークス!」と排斥の暴力を浴びるが、屈せず、バーナム「家族」として一致団結する。。。美談。

娯楽ミュージカルに仕立てる以上、醜いものを捨てなければならないのはわかる。バーナムを8頭身イケメンのヒュー・ジャックマンが演じる。「バーナム効果」という言葉にあるとおり「騙し屋」として側面は削がれ、誠実な善人としてしか描かないのも仕方ないか。サーカスのメンバーは、身体のハンデをモノともせず華麗に踊り、歌う。美しい絵を描くためには、「ネバー♪ネバー♪」と歌声を別人のものに入れ替えてもOKとする。P・T・バーナムはもはや関係ない。その時代に実在した負の価値観が無視されて勿体なさを感じる。

ヒュー・ジャックマンはやはり本作のような歌って踊るミュージカルが良く似合う。長い手足から繰り出されるキレのあるダンスと抜群の歌唱力。まさにブロードウェイ仕込み。久々のミュージカル出演となったザック・エフロンとの競演シーンが最大の見所だった。酒場の空間を活かし踊り、あらゆる小道具で音楽を奏で、2人が気持ちよく歌い上げる。ヒュー・ジャックマンにはもう1回、アカデミー賞のホストを務めてもらって華麗なパフォーマンスを披露してほしい。伝説の歌手を演じたレベッカ・ファーガソンは見事な口パク演技を披露(彼女は悪くない)。彼女のなんちゃって熱唱シーンを見るにつけ、痩せて筋張った首回りがずっと気になる。ローグネーションで初めて見たときは、もっと肉感的でカッコよかったのに。

ミュージカルは一流だが、ドラマに共感することはない。良さげな音楽で、映画自体が素晴らしいと思えてしまう可能性あり。これもある種のバーナム効果か。

【60点】
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我は神なり 【感想】

2018-02-17 08:40:14 | 映画


新作DVDレンタルにて。引き続き、ヨン・サンホのアニメ映画。本作を見ると、ヨン・サンホが実写映画と撮ることは必然だったと思える。
ダム建設によって水没する村を舞台に、宗教を悪用した詐欺師集団と村人たちとの交流を描く。物語の主要人物は3人で、とことん悪魔である村の厄介者、善人の顔をした詐欺師、善人である牧師が登場する。閉鎖的で希望を見いだせない村人たちに救いの手を差し伸べる宗教。救いの対価として支払うお布施は、詐欺師の懐に入っていく。その状況を唯一見抜くのは、周りを傷つける村の乱暴者であったが、その男が正義に向かうことはない。詐欺師に利用される牧師は純粋で善良なる人間であり、理不尽な世界に苦悩する。実写の韓国映画にも通じる強烈なバイオレンス描写もありつつ、濃密な人間ドラマが交わる。宗教への考察が鋭く、宗教が人間を支配してしまう恐ろしさだけでなく、それが偽物であったとしても人間の救う糧である事実を突きつける。まさに圧巻だった。村の厄介者を演じたヤン・イクチュンの熱演も光る。「ソウル・ステーション~」でも感じたことだが、本作はまさに実写化志向のアニメ映画。というより、実写化が叶わないから、アニメ映画にしたとすら思えるほど。この映画、韓国の実力派俳優でもって実写化したら、とんでもない傑作になりそう。

【75点】
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ソウル・ステーション パンデミック 【感想】

2018-02-17 08:37:22 | 映画


新作DVDレンタルにて。
昨年「新感染」で、映画秘宝系映画ファンをアツくさせたヨン・サンホのアニメ映画。「新感染」の前日譚みたいなフレコミだったが、ゾンビが誕生した経緯は描かれることなく、「新感染」のアナザーストーリーとして見るのが自然だ。「新感染」と設定はほとんど同じで、「ゾンビ」という概念を知らない人たちが、その恐怖と特性を知るところから始まり、ゾンビと初めて対峙した人間のリアクションが入念に描かれる。大勢のゾンビが一塊になって猛スピードで追いかける様子は、「新感染」と共通するゾンビ描写で相変わらずのスリル。そもそも韓国のアニメ映画というもの自体が新鮮なのだが、本作の特徴はアニメ描写に頼ることのなく、そのまま実写化できるような脚本になっていることだ。ホームレスの存在を物語に絡ませていることから、韓国が抱える社会問題の一端が見えたりする。「新感染」と同様、描かれるのは「ゾンビ」よりも「人間」であり、「新感染」が人間愛を描いたのに対して、本作は人間の恐怖を描く(「新感染」もその側面があったけれど)。結末のオチは後味が悪いものの、ホラー映画としては綺麗にまとまっていて面白かった。
ヨン・サンホの新作の予告編が最近公開されていて、どうやら超能力者を描いた映画のようだ。日本公開が待たれる。

【65点】
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