そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「パラレル」 長嶋 有

2007-10-31 23:08:26 | Books
パラレル (文春文庫 な 47-3)
長嶋 有
文藝春秋

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長嶋有作品を読んで3冊目になりますが。
良かった。非常に良かった。
傑作だと思います。

主人公の設定は「ジャージの二人」と共通している。
「ジャージの二人」の主人公夫婦の「その後」を描いた、とも言えるかも。
妻の不倫によって結婚生活が破綻し、会社を辞めて無職の状態。
妻とは離婚したものの、今でもしょっちゅう電話やメールや、実際に会ったりと、表面上は仲が良い。
そういう奇妙な距離感にある男と女の、気持ちの「すれ違い方」が、とても的確に、というか的確と思わされずにはいられない繊細さで描かれます。
「ジャージの二人」でも、そうした繊細な距離感描写が存在しましたが、本作ではそれがさらに研ぎ澄まされている、というか。
小説の終わりの方にある、別居したはずなのに毎晩訪れて来る妻が、ある日現れなかった晩の出来事を描いたくだりなど、かきむしられるような男心が絶妙に表現され、たいへん刺激的です。

そうした夫婦の機微にとどまらず、この小説は登場人物の造形と主人公との絡ませ方が非常によくできている。
「なべてこの世はラブとジョブ」と言って憚らない主人公の悪友・津田。そして津田と行動をともにする中で主人公と関わりを持つ女たち。
彼ら彼女らは、すべて主人公の一人称での主観を通して小説上表現されるわけですが、作者がタランティーノの映画を模したという巧みな時間軸を交錯させる手法でその人生の断片を重ねられるうちに、血肉を備えた厚みのある人物像が立ち現れてきます。
だからこそ小説が終わりに近づくにつれて、これら登場人物がどんどん愛おしくなってくる。
夜明け前の団地の屋上で、主人公が津田を見つける場面なんて、胸にぐっとくるものがありました。

この小説に、特にテーマや主張といったものは感じられません。
物語というほどの物語も存在しない。
だけど人間がしっかりと描かれている。
だからこそ良い小説だと思いました。
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武器商人

2007-10-29 22:56:51 | Society
守屋前次官証人喚問 接待の実態、淡々と 国会の場も動じず証言(産経新聞) - goo ニュース

子供のころに読んだ、石ノ森章太郎の「サイボーグ009」において、サイボーグたちの生みの親であり倒すべき敵だったのは”ブラックゴースト”という組織でした。
そして、マンガの中で、この組織は”武器商人”と説明されていたのです。
子供心に、”武器商人”とはなんと恐ろしい組織なのだろう、と強い印象を刻みつけられました。

今回の守屋前次官の件が騒がれるまで、「山田洋行」という会社のことはまったく知りませんでした。
防衛専門商社、言い換えれば”武器商人”ですね。
普通に生活してると、こういうビジネスを生業としている企業の存在に気づくこともありませんが、マーケットがあればプレーヤーは当然存在する、ということです。

軍需・防衛も産業であるわけだから、そこで利潤を得ようとする企業がいること自体は仕方のないことではありますが、それが”利権”になってしまうことは大きな問題だと思います。
戦争をすることで得をする人間がいて、その人間たちが権力と結びついている、そういう状況になることだけは絶対に防がなければなりません。

今回の守屋前次官の接待問題は、単に、甘い汁をすすっている、倫理法や内規に反している、収賄罪が成立する可能性がある、といった理由でけしからん、ということ以上に、上に書いたような「軍需が利権になる」状況にまさに直結するような所業であることこそが断罪されるべきなのだと思います。
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前払いのリスク

2007-10-28 23:32:41 | Society
NOVA講師の労組が集会 各国大使館に支援要請へ(朝日新聞) - goo ニュース

NOVA講師への給料未払い問題については、そのうちちょっとした国際問題になるんじゃないかと思ってみていましたが、だんだんそういう方向になってきたようです。

講師の給料受給債権よりも劣後する前払い授業料を払い込んでしまっている受講生については気の毒としか言いようがありません。
この件からは、我々がついつい忘れてしまいがちな、「サービス対価の前払い」というのは相手方に信用を供与しているのと同義であるということを認識せねばならない、という教訓を与えてくれます。
例えば、電車の6か月定期を買う場合も、仮に期限到来前にその電鉄会社が倒産してしまえば同じ目に逢うことになるわけです。
TDLの年間パスポートとかだって理屈は同じですな。
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現役最強

2007-10-28 23:20:42 | Sports
メイショウサムソンが春秋連覇 競馬の天皇賞・秋(共同通信) - goo ニュース

昨日こういう記事を書いた以上、結果にも触れておかねばなりますまい。

メイショウサムソンは強かった。
現役馬では頭一つ二つ抜けた感じになっちゃいましたな。
強力なライバルもなく、三歳牡馬も大物不在という状況からして、JC・有馬3タテも夢ではなさそうです。
気になるのは、このまま武豊に乗り替わってしまうのではないか、という点。
石橋守にとっては悔やんでも悔やみきれない騎乗停止になってしまうかも。

馬券はきれいに外しました。
ダイワメジャーはピーク過ぎたか、ポップロックはG1ではこれくらいが限界か。
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難解天皇賞

2007-10-27 23:59:51 | Sports
先週菊花賞を当てたので、図に乗って天皇賞も買ってみようかと思ってるんですが、難しいね。

実績面で現役古馬三強ともいえるメイショウサムソン、アドマイヤムーン、ダイワメジャーが宝塚記念に続いてそろい踏みしてますが、休み明けだったり近走の結果がイマイチだったりで、どうもそれぞれに確信が持てず。
ペリエが乗るポップロックがいいかな、と思えば、みんな考えることは同じで単勝前日オッズはダイワメジャーを凌ぐ三番人気。
しかも今日の台風による大雨で馬場がどうなるか。
晴れるらしいので回復はするだろうけど、パンパンの良馬場というわけにはいかないだろうし。

人気馬では、ダイワメジャー、ポップロックかな…と今のところ思ってるんですが、荒れそうな雰囲気もあり。
まったく人気のないデルタブルースとか、どうかな。
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台風クルージング

2007-10-27 23:32:52 | Diary
今日は、台風接近の荒天の中、東京湾ランチクルージングに出掛けてきました(これ)。
クレジットカードのポイントが貯まり、それをペア招待券に交換して。
当初は、コドモを実家に預けてヨメとふたりで行こうかと思ってたんですが、1500円でコドモの席のみ追加できるということなので、3人で行くことに。

一月くらい前に予約して、ここのところ天候も安定してきたので好天を期待していたところ、一週間くらい前の週間予報は金曜から土曜にかけて雨。
週間予報なんて当てにならん、と前後にずれることを願ってたんだけど、昨日になってまさかの台風発生&接近予報。
今朝、一応電話して問い合わせてみたものの、東京湾内なのでたいして揺れないしこの程度の天候なら出航する予定です、とのこと。
こんな天候で…とキャンセル日程変更も考えましたが、キャンセル料が発生するし、どうせもともとタダなんだからとあきらめて乗船することに。

行ってみたら思ったよりもずっと大きい船でした。
2~300人は乗客いたんじゃないかな。
はとバスとかの観光コースに組み入れられているらしく、年配の団体客が中心。
雨の中の航行でしたが、確かに揺れは全く気にならず、雨中の東京湾景もそれはそれで悪くなく、天気がよくてデッキに出られたりしたら気持ち良かっただろうなと思えたことを除けば特に問題はありませんでした。
料理もイタリアンのミニコースで、普通に美味しかったです。

コドモには料理やパンを少し分け与えてたんですが、途中で飽きてきてちょろちょろと動き出し、けっきょくヨメと交代しながら船内を遊ばせて回ることに。
まあでも彼は彼なりに楽しんでたようですが。

約2時間湾内を巡って帰着。
その頃にはちょうど風雨が強まっておりました。
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ドック入り

2007-10-22 17:34:30 | Diary
毎年10月のこの時期の月曜日に休みを取って人間ドックを受診しています。
今日が三年連続の三回目。

同じ病院で毎年受けているので勝手もわかってるんですが、今日は朝一番で直腸の検査。
これは確か去年までは無かったメニューのはず。
いきなり初っ端で恥ずかしい恰好をさせられ直腸を触診されてしまいました。
すぐ終わったけど、あれはヤな感じだなあ…
まあ異常も無かったのでいいんだけど。

一方で、一昨年・昨年と苦しい思いをした胃カメラは、さすがに三年目で慣れてきたのかそれほどツラく感じませんでした。
胃壁を膨らませるために空気入れられるのは気持ち悪いけどね。
初めてのときなんか唾液をだらだら流した覚えがあるんですが、今年はそんなこともなく。

昨晩の8時から飲まず食わずだったので、病院で出される昼飯が美味く感じられること。
入院食ではないので、天ぷらに刺身と、けっこう豪華なんですけどね。

即日診断では、中性脂肪がやや高かったことを除けば今年も異常なし。

中目黒の病院で受けたんですけど、天気もいいしあったかいので、帰りは池尻大橋まで歩いてみました。
歩いてるとちょっと汗ばむほどで。
毎年同じ時期に受けてるので、年ごとの気候の違いもよくわかりますが、やっぱり今年は秋が遅いようで。
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菊の結果

2007-10-21 20:06:59 | Sports
アサクサキングス優勝=四位、三冠ジョッキーに-競馬菊花賞 (時事通信) - goo ニュース

ドリームジャーニーは末脚及ばなかったけど、昨日の予想はだいたい当たってました。
馬券もタテ目押えで馬連GET。
29.3倍は案外安めでしたが。

それにしても今日のレースをみると、改めて今年の三歳牡馬に大物は不在だな、という感じがします。
それなりに粒ぞろいではあるんだけどね。
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明日の菊花賞

2007-10-20 23:45:01 | Sports
1番人気はロックドゥカンブ=競馬菊花賞 (時事通信) - goo ニュース

明日は久しぶりに馬券を買おうかと思ってます。

南半球産という話題性もあり、ロックドゥカンプがずいぶん人気になってるみたいですが、どうなんでしょうね。
レースを一度も見ていないので滅多なことも言えませんが、4戦無敗とはいっても強い相手ともやってないし、ちょっと人気しすぎなのでは、という感じがします。
何より気になるのは鞍上・柴山。
やはり長距離レースは経験のある騎手を買うというのがセオリーではないかと。

武豊とコンビを組んで神戸新聞杯を買ったドリームジャーニーが意外に人気低いです。
軸はこっちではないかと思うんですが。
小さな馬体がなんとなくライスシャワーを彷彿とさせます。

ヴィクトリーは距離が長すぎるような気がするので、それよりもアサクサキングスでしょうか。
本命不在の混戦ということで穴馬もマークしておいた方がよさそうなので、古馬に善戦したアルナスラインとステイヤー上がり馬デュオトーンも押さえておこうかと。
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「ジャージの二人」 長嶋 有

2007-10-20 23:35:10 | Books
ジャージの二人 (集英社文庫 な 44-1)
長嶋 有
集英社

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「サイドカーに犬」と「猛スピードで母は」が気に入ったので、長嶋有の他の小説も読んでみることにしました。
「ジャージの二人」と、その続編である「ジャージの三人」の2本収録。

「ジャージの二人」とは、主人公の青年とその父親のことを指します。
主人公の母と離婚した父は、現在三回目の結婚生活を送っていますが、昔からの恒例で毎年夏の間は高原にある古い別荘で過ごすことにしており、今年はその別荘暮らしに仕事を辞めた主人公が付き合う、という話です。
この男二人の別荘暮らしは、読んでいて非常に気詰まりでした。
男同志ふたりっきりの空間、しかも父と息子、というだけで男にとっては気詰まりするシチュエーションです。
この主人公と父親は、比較的フランクに会話もできる関係にあり、また、その軽妙かつ繊細なダイアログの構築がこの小説の魅力ではあるんですが、それでもやっぱり気詰まりでした。
「ジャージの三人」では、そこに主人公の妻、もしくは、父と今の奥さんとの間の娘(すなわち主人公にとっては腹違いの妹)が加わることで、空気が一気に開放的になる感じがします。
男ふたりっきりのところに女性がひとり入るだけで、同じ別荘生活でも雰囲気がガラっと変わる。
そうした空気の違いが小説から見事に立ち上っていました。

この小説で出色なのは、主人公の妻の人物造形と他の登場人物との絡ませ方の妙です。
直接登場する場面は多くはありませんが、主人公と絡む場面の、瞬間的に立ち上る緊張感がたまりません。
他にも、主人公の父との絡み方も魅力的で、もっと彼女の出てくる場面を描いて欲しい、と思いながら読んでたんですが、あえてそっちの方向にいかないところがこの小説の持ち味なのかもしれません。
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