そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『父・金正日と私 金正男独占告白』 五味洋治

2012-11-27 23:47:36 | Books
父・金正日と私 金正男独占告白
五味 洋治
文藝春秋


故・金正日総書記の長男、金正男氏。
2001年に東京ディズニーランド観光を目的に、日本に不正入国しようとして話題になりました。
その独特の風貌も相俟ってドラ息子的イメージで世間に捉えられていますが、本書を読むと全く印象が変わります。

2004年に北京国際空港で偶然に正男氏と出会った著者。
渡した名刺のメールアドレスに正男氏からのeメールが届いたことを契機に、途中数年間の中断を挟みながら、150通のメール交換と二度の独占インタビューが実現します。

メール交換もインタビューも、ほぼ一方的に著者が質問を投げかけ、正男氏が慎重に答えるという形式で繰り返されます。
そのやり取りの中で、若い頃から欧州へ留学し国際感覚を身に付けた正男氏の理知的で良識的なパーソナリティが浮かび上がってきます。
母国北朝鮮の人民を救うためには中国式の改革・開放政策が必要だというのが持論の正男氏は、父・金正日総書記にそれを進言したがために疎まれ、後継の座を弟・金正恩に譲ることになったと語る本書。
正男氏自身は世襲に反対なんですけどね。
で、その点については金正日総書記も同じ考えであったが、政権の安定のために止むを得ず正恩氏への世襲をせざるを得なかった、と正男氏は見解を述べています。

著者は、本書の最後に、北朝鮮の混乱を最も恐れる中国政府が、正恩政権が不安定化した場合の「切り札」として正男氏をバックアップしているのではないかとの仮説を語っています。
が、その点についての論拠は弱いかな、というか殆ど論拠は挙げられていません。
正男氏がバランス感覚のある理性的な人物であることは本書によりたいへんよく理解できるのですが、果たしてあの異形の国家をまとめていけるだけの大人物であるのかどうかはやや疑問な気がします。

正直、単調なメールのやり取りが延々と収録されているので、読み物としてはやや退屈で途中で飽きがくるかも。
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我ながら先見の明

2012-11-19 23:54:10 | Politcs

ふと思い出したんですが、3年前の夏、政権交代が成った前回の衆院選の直後、こんな記事を書いていました。

民主党「我が世の春」とみんなの党の件(2009年8月31日) 

民主党に関しては我ながら先見の明があったなあ、と。
みんなの党についてはやや買いかぶりすぎてましたが、そのやり場の無い期待感は今も健在で、その受け皿が「第三極」に受け継がれてるんでしょうね。 

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『ルーズヴェルト・ゲーム』 池井戸潤

2012-11-15 23:21:12 | Books
ルーズヴェルト・ゲーム
池井戸 潤
講談社


社会人野球チームを抱える中堅電機部品メーカーが、不況に直面しリストラの必要性に迫られる。
企業小説とスポーツ小説の両面を兼ね備えた作品。

題材としては面白そうだったんだけどねぇ…
正直期待外れ。

なんだか全てが予定調和でベタ。
登場人物もやたらとたくさん出てくるけど、ありきたりなキャラ設定ばかりで、エッジの利いた人物がひとりも出てこない。
みんなどっかで見聞きしたことあるようなキャラクタばかり。
大道監督なんて、まんま『マネーボール』だし。

唯一、沖原クンのピッチングの鋭さはなかなかよく描けてたと思います。
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案外よくある師走総選挙

2012-11-12 23:50:24 | Politcs

年内解散・総選挙が取り沙汰されてますが、昨日11月11日の日経新聞朝刊に、12月が『現憲法下で最も衆院選が多い月』という記事が載っていました。

一覧表が掲載されてましたが、現憲法下での衆院選は23回行われてます。
ずいぶん少ないんだなーという印象。
まあ任期4年ということを考えれば、60数年で23回というのもそんなものかとは思いますが。
小沢一郎氏で当選14回ですからね。

自分が生まれて以降で13回、選挙権を持ってからは6回しか行われてません。
もっとしょっちゅう選挙している印象なんだけど、3年に一度必ずある参院選や地方選と印象がごっちゃになってるんでしょうね。

で、師走選挙ですが、
・佐藤内閣(1969年12月27日)
・田中内閣(1972年12月10日)
・三木内閣(1976年12月5日)
・中曽根内閣(1983年12月18日)
の4回行われているそうな。
佐藤~田中~三木は3回連続師走選挙だとか。 

'90年代は3回、'00年代は4回行われてますが、2月、7月、10月、6月、11月、9月、8月、とのこと。
そう、夏場に選挙ってイメージ強いんですよね。
記事によれば予算編成や予算審議の時期を外す例が多くなったということだけど、今度ばかりはそうも言ってられない状況ってことでしょうか。 

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『スピーチの奥義』 寺澤芳男

2012-11-11 00:06:05 | Books
スピーチの奥義 (光文社新書)
寺澤芳男
光文社


著者は、野村証券の副社長からMIGAという国際機関の初代長官に転身し、その後日本新党から参議院選に出馬・当選、短命に終わった羽田内閣で経済企画庁長官を務めたという経歴の持ち主。
日経新聞の「私の履歴書」の執筆者としても割と最近登場されたような記憶があります。

仕事柄”スピーチの現場”に立つことが多かった著者がスピーチに当たっての心構えやテクニックをまとめた一冊。
ノウハウ本として読んでみましたが、前半はなるほどと思わされるところも多々あったものの、後半になるにつれ単なるエッセイになっていくきらいはあり。
本著内でアドヴァイスされているように、スピーチと同様、ノウハウ伝授もポイントを絞ってコンパクトに短くまとめるのに越したことは無いのかもしれません。

・実は聞くほうも緊張している。
・自分の話など「期待されていない」と開き直れ。
・自分が言いたいことより相手が聞きたいことを話す。
といったあたりはコミュニケーションの基本として肝に銘じるべき話ですね。

実践的なテクニックとして印象に残ったものをメモしておくと…
・自己紹介は単なる実績の羅列ではダメ。聴衆が聞きたいのはそれがいかにして成し遂げられてきたのか(挫折や苦労話、チャンスの捉え方)。
・スピーチの入り方として、聴衆が「えっ何の話?」と思うような意外性のある言葉をぶつける。
・話をわかりやすくするのに「たとえ話」ほど便利な手段は無い。
・大勢の聴衆を相手に喋る場合は目を向ける場所を三か所だけ決めておく。
・聴衆に質問するのは、聞く側を緊張させるだけなのでやめておいたほうがよい。
・最後はヨイショで締める。
など。

後は「名言をテイクノートしておく」というのも重要ですね。
上述の「たとえ話」もそうだけど、オリジナルだけで勝負するのにも限界があるので、うまく「パクる」のが効果的。
そのためには普段からの心がけが必要だな、と。
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