そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

ライブドア事件の本質

2011-04-29 22:06:44 | Society

本日付け日経新聞朝刊コラム「大機小機」は『ライブドア事件を風化させるな』。
筆者は”渾沌”氏。
以下、引用。

後味の悪い裁判だった。堀江被告の罪状は、資本取引とすべき自社株の売却益を利益計上した粉飾決算と、関連会社による企業買収に絡んで偽計情報を流した偽計取引である。どちらの起訴事実も専門的な技術論に偏し、実刑とのバランスを欠くように見える。

今も人気タレントのように振る舞う本人の言動から反省は感じられず、検察の国策捜査の受難者であるかのような言説も目立つ。閉塞状態にある日本にイノベーションを起こそうとして、変化を拒むエスタブリッシュメントにつぶされた、という筋立てだ。

しかし、ライブドア犯罪の本丸は、裁判では争われなかったところにある。

ニッポン放送株を大量に取得した立会外取引は、TOB(株式公開買い付け)ルールの趣旨に反した脱法行為。度重なる大幅株式分割は、意図的に株式の需給を逼迫させて株価の乱高下を誘う相場操縦。巨額の買収資金を調達したMSCB(価格修正条項付き転換社債)は、引き受け手の証券会社が株価を操作して暴利を得ることを想定した株主への裏切り行為である。

自己利益のためには他社を省みない、市場への背信行為は詐欺か詐欺的行為であり、法や自主規制ルールの変更をもたらした。法が明確に禁止していなければ何をやっても構わないという、自由の意味をはき違えた市場の乱用者がライブドアの素顔だろう。

捜査当局は実質を重視し、不正行為を禁止する包括規定を適用すべきだったのに、重罰を科せる代わりに立件が難しい法の適用を避け、勝訴の確実性が高い形式犯で妥協した。後味の悪さは本筋を外した起訴事実にあり、後世の人は判例だけでは事件の本質の理解が困難な点にある。

本件に対しては、シンパ/アンチ双方から情緒的な反応が応酬されている中、本稿は非常にバランスのとれた捉え方をしていると感じました。
事件の本質にメスが入れられないまま形式的な断罪が下されることで、堀江氏が見せしめのために狙い撃ちされたという側面と、図に乗ったインモラルな秩序破壊者という側面の衝突が尖鋭化するばかりで、むしろ本質が隠されてしまうという不幸。

高等遊民氏のこちらの記事も秀逸なのであわせてご紹介。
「今、改めてライブドア事件を振り返る」

コメント (1)
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プレステ個人情報流出

2011-04-27 23:23:23 | Society
プレステ・オンライン、会員情報流出か 侵入され改ざん(朝日新聞) - goo ニュース

7700万人分の個人情報を一元管理するデータベースなんて、維持する立場を想像すると空恐ろしくなってきますな…
Facebookなんてアカウント数はさらに多いわけですからね。
グローバル展開するソーシャルサービスが抱えるリスクの大きさを思い知らされます。

個人情報流出ってたいてい内部からの漏えいがケースとしては多いわけですが、ハッキングでここまでできちゃうんだね。
保有データの暗号化とかしてなかったのかな。

発生から公表まで日数がかかっていることも問題になりそうなようで、このあたりまたもや日本企業の隠蔽体質…なんて話になってしまうんでしょうか。
外野からみてるとさっさと公表すればよいのに、と思うけど、当事者になるとなかなかそれができないのですよね。
リスクマネジメントは斯様に難しい。

しかし、賠償だなんだって話になったらシャレにならない金額になりそうだ。
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多摩川でも津波

2011-04-21 23:52:31 | Society
全然認識してなかったけど、3月11日、やっぱり来てたんですね、津波。

津波 in 多摩川 - 2011/03/11


関東近海であの規模の地震が起きたら…
恐ろしい。

<追記>
太田昭宏氏のブログによると田園調布下で50cmの津波だったとのこと。
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統一地方選雑感

2011-04-20 23:38:47 | Politcs
今週末は統一地方選後半戦の投票日。
我が区では、区長選と区議選が行われます。
区長選のほうは、現職が引退し、自民が分裂選挙、民主に加えて(その筋では名の通った)元社民国会議員まで出る乱立気味で、それなりに面白い選挙区になってるみたいです。

一方、区議選も定数50に対して82人立候補とわりと激戦ですが、こっちは誰に入れたらよいのかサッパリ。
誰がどんな主張をしてて、どんな経歴・実績があるのか全然わからん。
ほとんどの有権者はそんな感じじゃないでしょうか。
そうなるとついつい顔と名前に馴染みがある人に何となく入れたくなる、というか、馴染みがない人にあえて入れようとは思わない。
それがゆえに、勢い選挙戦は顔と名前をいかに多くの人に売るかが勝負になってしまうのかと。
最寄り駅では毎朝、ある候補者が名前の書いたタスキをかけてひたすら「おはようございます」「いってらっしゃいませ」とお辞儀をし続けてます。
演説も何もせずただお辞儀を延々とし続けるだけ。
あれが「選挙戦」だというのも何だかなあという感じです。

ところで前半戦の都知事選、今更ながら少々振り返っておきます。
結果的に自分はワタミ氏に入れました。
正直、消去法です。
ワタミ氏の、東京都を「経営」する、というコンセプトは悪くないと思っていたんですが、結局最後まで「経営」的な戦略性は感じられず。
折悪しく震災が起こってしまって言いたいことも言えなかった、という面はあるのだとは思いますが、それにしても何がやりたかったのかよくわかりませんでした。

イシハラ氏は時々頭のおかしなことを言ったり、新銀行とか五輪招致とか迷惑なことにおカネをつぎ込んだりしますが、そういうのを除けば案外普通に行政をこなしてたりします。
有権者もそのへんがわかってるだけに「もうイシハラはいいだろう」と思いつつも他に誰もいないのでつい投票してしまう。
そんな感じじゃないでしょうか。
だからワタミ氏も東氏も、もっと明確に「反イシハラ」を打ち出すべきだった。
勝つにはそれしかなかったはず。
或いは、イシハラ260万票、東160万票、ワタミ100万票という結果からしても、どっちかが降りて共闘すれば勝ち目はあった。
どうせ東氏は国政に出るための踏み台にしか考えてなかったんだろうから、ワタミ知事・東副知事でタッグ組んで、衆院解散したら東氏は鞍替えとか。
そういうのを「戦略」というと思うんだけど。
まあいずれにしても拍子抜けでした。
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「ひそやかな花園」 角田光代

2011-04-16 20:58:54 | Books
ひそやかな花園
角田 光代
毎日新聞社


登場人物たちが共有した幼き日の「キャンプ」の記憶。
それと同種の記憶が自分にもあります。
広い庭と家でのパーティ、大勢の大人たち、学校の友達でも親戚でもない同世代の子供たち。
おそらく父親か母親の友人たちの集まりに連れていかれたんだろうけど、場所がどこだったのか、その場にいたのが誰だったのか、表現することができないので親に訊きたくても訊きようもない。
もちろんこの小説の「キャンプ」のようないわくありげなものではなかったと思いますが、この種の記憶って妙に深い印象として心に刻まれるもの。
そんな誰しもが持っていそうな既視感を刺激するシチュエーション構築は非常に魅惑的であります。

物語は中盤で「キャンプ」がどのような集まりだったのか、その真相を明かし、再会した大人になったかつての子供たちがそれぞれに抱く心傷を整理し癒していく過程を丁寧に追っていきます。
この部分も興味深いといえばその通りなんですが、彼ら彼女らの運命があまりに特殊であるがゆえに何となくピンとこないものが残ったのは正直なところです。
それはそれでいいのかもしれないけど、前半部の子供時代の記憶が極めて既視性が高かっただけに、特殊性に流れた後半部とのバランスがよくないように感じました。
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「フェリカの真実」 立石泰則

2011-04-14 23:23:08 | Books
フェリカの真実 ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由
立石泰則
草思社


ソニーが1997年に香港の公共交通機関向け非接触IC「オクトパス・カード」の生産を始めてから、フェリカICチップの累計出荷数は、2010年6月末時点で4億6千万個を突破したとのこと。
殆どのガラケーにはモバイルフェリカICチップが載っているし、ナナコもワオンもスイカもパスモも電子マネーの種類は違えど基盤はみなフェリカなわけです。
タイプAとかタイプBとか、国際的にみれば非接触ICのライバル規格が存在するにも関わらず、少なくとも国内市場を席巻しているという点では素直に凄いなあと感じるわけですが、その規模感がそのままソニーの収益に繋がっているかというと、そういうイメージはない。
技術で勝ちビジネスで負けた、ソニーの非接触IC事業の20年余にわたる歴史を振り返るドキュメンタリーです。

焦点は、ソニーが独自に進めたビットワレットによる電子マネー”Edy”事業の失敗に当てられています。

実はJR東日本がスイカを出したときに、ビットワレットが提携して、決済手段としてエディを載せる道もあったとか。
ここでうまく提携できていれば、スイカやパスモが別規格の電子マネーとして展開されることはなかったことでしょう(それでもナナコやワオンは出てきたかもしれないけど)し、その後ビットワレットが楽天に買収されるようなことはなかっただろうと思います。
が、その果実をソニーがうまく吸収できていたかどうかはまた別の話という気もします。
モノ作りをやってきた会社がオペレーションで儲けるには、相当の戦略性が必要になるわけで、その点やっぱりAppleは凄いな、と改めて思わされます。
まあそれはそれとして、本来、決済の「手段」でしかないはずの電子マネーをアプリケーションと切り離して独自に展開しようとしたことに無理があった、という点には重要な教訓が込められている気がします。
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優秀な大衆と愚かなリーダー

2011-04-09 21:15:44 | Society
計画停電は「原則不実施」の方針-回避に向け需要抑制目標も(医療介護CBニュース) - goo ニュース

夏場に懸念される電力不足に対して、企業・家庭各々において電力使用の削減目標を定めて達成を目指す「国民運動」で臨むという政府方針が打ち出されました。
いかにも日本的だなあと感じます。
というか、日本以外の国じゃ、こんなやり方あり得ないんじゃないでしょうか。
いくら頑張って節電に励んでも、他の人も同じように頑張らなきゃ全体の目標は達成できないわけだから、個人主義的な考え方に従えばこの状況で頑張って節電をするインセンティブはないはず。
普通に考えて、そんなのうまくいくはずないですよね。
ところが、一見して合理的であるとはとても思えない「国民運動」方式で、電力不足を乗り切ってしまえそうな気がするところが日本社会の凄いところ。
一般市民レベルの共同体意識が極めて高く、規律と同質性、そして自己犠牲を美徳とする公衆道徳が浸透している、この一般市民レベルの高さこそが、国際的にみた日本社会の強みでありましょう。

一方で、福島第一原発の困難な状況はなかなか改善せず、政府による避難指示や農産物の出荷制限の出し方、放射性物質の暫定基準の示し方などの拙さは混乱を呼び、汚染水海洋投棄についての情報連携の不手際は国際的に不信を招いています。
復興計画の財源問題も政局絡みの思惑やマニフェストに捉われて進展が見えてこないし、東電においても現場作業員の命懸けの奮闘に比べて経営陣がリーダーシップを発揮できていない状況が目立つばかり。

優秀な一般大衆と、愚かなリーダー層。
先進諸国の中で際立つ日本社会の異質性ですね。
そしてこの両者は表裏一体の関係にあると思います。
大衆レベルの自律性・同質性が高いからこそ、強烈なリーダーシップが必要とされないんですね。
だから優秀なリーダーが育たない。
大局的なビジョンを示してグイグイ引っ張っていったり、対立する利害に優劣をつける難しい判断をする必要がなく、ただ無難な「落とし所」を探って「調整」し、大衆に対して協力を「お願い」をしていさえすればよい。
こういう社会の在り方って、高度成長期みたいに全体のパイが大きくなっている局面では有効だけど、社会が成熟してくると機能しなくなります。
従来からの「慣性」を覆すリーダーシップが存在しないがゆえに、既得権益を維持する力学が働くことで社会に硬直性が生まれてしまう。
過去の政権・官僚・電力会社・メディアが結託して行われてきた、リスクを直視しない原発推進もまさにその一環として捉えられるわけで、今福島原発で起きていることもその帰結であると考えられると思います。

この日本社会の特性、そう簡単に変わることはないだろうとは思います。
震災からの復興や電力供給不足という危機局面ではむしろ、一般大衆の優秀さが功を奏することも考えられる。
ただ「失われた20年」の低迷期を継続させてきた病理が治癒するわけではない。
3・11という不幸を「変わる」きっかけにしていかなければならない、とは思いますが…
コメント (2)
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「ホーキング、宇宙と人間を語る」 スティーヴン・ホーキング、レナード・ムロディナウ

2011-04-05 23:50:21 | Books
ホーキング、宇宙と人間を語る
スティーヴン・ホーキング、レナード・ムロディナウ
エクスナレッジ


初ホーキング。

最初の2、3章は、文系頭にも案外すんなり入ってくる分かりやすさで、量子論に話が及んでも理屈は分からないまでもイメージはなんとなくできたのですが、ファインマンやアインシュタインが出てきたあたりで怪しくなってきて、M理論やひも理論などと言われるともうちんぷんかんぷん。
後半は、ほぼ字面を追っているだけになって、結局のところ書いてあることの1割くらいしか理解できなかったな…という感じ。

まあでも、ホーキング博士の云わんとしていることも、何となーくですがぼんやりとは伝わってくるんですよね。
特に、「モデル依存実在論」って考え方は面白いな、と思いました。
あるモデルが観測結果をよく説明するのであれば、そのモデルの真偽は問題にはならない、という考え方。
いったい「実在」とは何であるのか、根本を揺さぶられます。
なんと哲学的。

宇宙論においても「トップダウン的アプローチ」が是とされます。
宇宙の起源に明確な初期条件を定義せず、現在から過去に向かって宇宙の歴史を辿っていくアプローチ方法。
「どうあったか」よりも「どう説明できるか」を重要視する、真に「科学的」な態度ですね。

それにしても、宇宙の起源においては空間と時間の区別もない、なんて言われちゃうと、ただただすげえなと思うしかありません。
一時だけ震災のことも原発のことも忘れてしまいます。
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相撲界はトカゲの尻尾切りよりも復興支援を

2011-04-02 20:18:12 | Society
八百長厳罰 不満爆発「証拠ない」 大相撲(産経新聞) - goo ニュース

どさくさに紛れて…というわけではないんでしょうが、大相撲八百長問題の処分がラディカルに進められているようです。

前から言ってますが、八百長だの無気力相撲だのというのは実際に相撲を取っている人間の主観によるものなので、第三者がこれはクロ、これはシロと’判定’するのは原理的に不可能な話。
それができるとしたら、神様だけでしょう。

正直、強引に線引きすることで罪を局所化して切り離す、トカゲの尻尾切りにしか見えません。
処分対象の力士からしてみたら、納得いかないのは当然でしょう。
仮に本当にクロだったとしても、何故現役力士だけが罪を被るのか。
八百長なんて何十年も前からずっと噂されてた話なのに、過去に現役だった力士はなんの追及もされることなく力士生命を全うしているわけですから。

もうこんな不毛なことはやめて、相撲協会は当面本場所開催も諦めて、震災の復興支援活動に注力したほうがよっぽど生産的だし、世の中に対する贖罪にもなるんじゃないでしょうか。
力士の体力は復興作業でも役立てることができそうに思います(ただし食料は持参の上でなら…)。
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