そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

フットボールの概念を変えそうな永井謙佑

2012-07-27 23:29:55 | Sports
昨日のスペイン戦勝利。
結果ももちろんのことながら、敵の情報を的確に収集し、勝つための作戦を立案し、それを計画通り実行するというプロセスがバッチリ嵌った心地よさがあります。

スペイン=バルセロナのサッカーにこうすれば対抗できるんだ、という大いなるヒントを世界中のサッカー人に与えたとも云えるのではないかな。
もちろん、昨日のスペイン五輪代表の攻撃陣の質は、A代表やバルサのそれと比べればかなり劣ってはいたけれど。

昨日の試合、観ていて、EURO2012のスペインvsイタリアの試合とシンクロする印象を受けた。
決勝戦じゃなくて、予選リーグの初戦、1-1で引き分けたほうの試合。
あの試合のイタリア代表もスペインのボール回しにハイプレスをかけ続けて、すごく面白い試合だった。

でも、昨日の日本の前線4人がかけ続けたハイプレスの威力はあの時のイタリアを超えていたね。
グラスゴーの過ごしやすい気候がそれを可能にした面はあるにせよ。

日本にはピルロはいないし、バロテッリもいない。
けど、清武がいて、永井がいた。

高スピードで小回りの効く清武のボール扱いの巧さは大したものだと思う。
攻撃の起点として、相当効いていた。
プレーしているうちに、どんどんスピードが上がって、最後慌ててしまうのが残念ではあるけれど。

そして永井。
スペースが与えられたときの永井は無敵(逆に相手にドン引きされてスペースが無くなると途端に持ち味が出せなくなるのだけれど)。
90分間のうち、20~30mのダッシュを何回繰り返したことだろう。
GKまでしつこく追いかけまわし続けられて、スペインはさぞかし嫌だったろうな。
ああ、こういうフットボールもあるんだ…と、世界をびっくりさせたんじゃないだろうか。

日本には「野人岡野」という先駆者がいるんだけどね。
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だから五輪なんて嫌いだ

2012-07-23 22:48:10 | Sports
女子ソフトボール、日本が世界一!42年ぶり(夕刊フジ) - goo ニュース

快挙、ですよね。
アメリカの8連覇を阻止して、42年ぶりの世界一。

世界一ですよ!
だけど、扱いが冷たいよね。
テレビ中継もあるわけないし、新聞の片隅に小さく載るだけ。

これがオリンピックの金メダルだったら国中大騒ぎ、選手たちはメディアにひっぱりだこになるに違いない。
ところが同じ世界一でも大して見向きもされず、挙句の果て五輪の正式競技から外れたのは実に残念…とか言われてしまう。

なんかおかしいんじゃない?
「世界一」の価値は変わらないはずなのに。

一方で、体操とか柔道とかレスリングとか、果てはフェンシングとか射撃とか馬術とか、普段はみんな興味もないくせに、五輪だというだけで突如注目を浴びる。
NHKも民放もこぞって「開幕も近づきいよいよ盛り上がってきました!」って、おまえらが盛り上げたいだけだろうが。

だから五輪なんて嫌いだ。
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"Steve Jobs" Walter Isaacson

2012-07-21 00:13:38 | Books
今年の正月から、初めての電子書籍、初めての本格的な原書挑戦で"Steve Jobs"のKindle Editionを読み始めたことは以前書きましたが、ちょうど半年かかってようやく読了しました。

長い時間かけて読んだこともあって、スティーヴ・ジョブズという強烈な個性を持った特異な人物の生涯に付き合ったような、感慨に襲われます。
ジョブズの人生は、平均的な現代人よりも少し短かったけど、その濃密さは比類ない。
彼が残した多くの業績やイノベーションよりもむしろ、その濃密な生き様にこそ、心打たれるのです。

デザインと美意識へのこだわり、食生活へのこだわり(これが命を縮める原因にもなっている気はしますが…)、「作品」ともいうべき製品を隅から隅までコントロールしようとする妥協なき執念。
偏執的という形容詞が相応しいほどの、その「統制」志向は、常に周囲の仲間たちを罵倒し、軋轢を巻き起こすことを全く厭わない。
入院している病院で、付けられるマスクのデザインが気に入らず、異なる形のマスクを準備させたというエピソードなんて、呆れてしまう一方で、そこまで徹底した統制へのこだわりには感服します。

その一方で、時折垣間見せる人間的な側面。
"biological father"と知らぬまま彼の経営するレストランに通っていたエピソードや、死の直前に30年来のライバルであるビル・ゲイツと二人だけで過ごした時間のエピソードなどはとても感動的。

自分は勿論ジョブズのようにはなれないし、正直なりたいとも思わない。
いっしょに仕事するのもちょっと勘弁。
でも、その絶対的なユニークな人間性は、強烈に刺激的。

人間の「生き様」について、考えさせられる一冊でした。

STEVE JOBS
WALTER ISAACSON
Simon & Schuster
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『パリ20区』と大津いじめ事件

2012-07-09 23:32:28 | Society
先日、CATVで録画しておいた、2008年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作『パリ20区、僕たちのクラス』を観ました。

パリ20区にある中学校のクラス担任と問題児揃いの生徒たちが繰り広げる教室模様を、ドキュメンタリータッチで撮った作品。
主演で担任の国語教師役のフランソワ・ベゴドーが実体験に基づいて書いた小説が原作になっているとのこと。

観ていてちょっと意外だったのは、フランスの学校というのはけっこう権威的なのだな、ということ。
担任教師はかなり高圧的な態度で生徒たちに臨んでいる。
教師に対する言葉遣いには厳しいし、教室に入ったら帽子を脱げだとか、「座れ」と言われるまで座るなだとか、口うるさい。
そして、反抗的な生徒たちも、そういった権威的な命令には(不服そうな態度は見せながらも)あっさり服従するのです。

体育会的縦社会での「絶対服従」とは少々趣きが違う。
学校が「制度」であることが教師・生徒・保護者の間の共通認識となっており、その「制度」を維持するがために「権威に従う」ことが暗黙のルールになっているのではないか。
そんな雰囲気を感じました。

「制度」という秩序を尊重することが、社会の構成員たるひとりひとりの利益になるということに対する理解が、隅々まで行き渡っているのだなあ、と。

もう一つ、印象的だったのは、授業中にトラブルを起こして教室から出て行ってしまった黒人少年が、学校の懲罰委員会にかけられるシーン。
担任教師がクラスの女子生徒たちに対して侮辱的な表現を使ってしまったことが、黒人少年が暴発するきっかけになったのですが、校長は担任教師に対して、懲罰会議に提出する報告書に侮辱的な発言をしたことを書くように指示するのです。
そして、担任教師はその指示に従う。

これも同じ。
校長も担任教師も利己的な保身に走るよりも、公正な懲罰委員会という「制度」を維持することによる長期的利益を優先したからこその行動のように思えます。

で、ここでどうしても比較してしまいたくなるのは、今たいへんな議論を呼んでいる大津市の中学校におけるいじめ自殺の件。
担任が見て見ぬふりをした、学校や警察、教育委員会ぐるみで組織的に隠蔽したのではないかと巷間言われています。
それらがどこまで事実なのかはわかりませんが、やっぱり日本の学校って普遍的な「制度」ではなくてローカルな「コミュニティ」なんだよね。
ローカルに閉じているから、そのコミュニティに属する最大多数が傷つかないような「落とし所」を探そうとする力学が働いてしまう。

もちろんフランスの中学校が全て『パリ20区』みたいであるかは分からないし、フランスにだっていじめはあってそれを苦にして自殺する中学生だっているに違いない。
学校が日本的な「コミュニティ」であることの長所だってあるし、だから一概にフランスが優れていて日本が劣っていると言いたいわけではない。

だけど、日本の学校生活からいじめによる自殺のような痛ましい出来事を無くすためには、よりドライで機能的な「制度」的アプローチが必要だよな、とは思うわけです。
学校・教育委員会・警察といった閉じた「コミュニティ」に任せていては絶対に解決できない。
いじめの被害にあった生徒が逃げ込むことができる第三者的な「駆け込み寺」が必要。
「駆け込み寺」は、学校が属するコミュニティからは離れたものでなければならない。
それこそ裁判員みたいな無作為抽出で選ばれた一般市民でも十分に機能が果たせると思うのですが。

文科省の役人にはそういう「制度」づくりにこそ力を注いで欲しいな。

パリ20区、僕たちのクラス [DVD]
ローラン・カンテ,フランソワ・ベゴドー,フランソワ・ベゴドー
紀伊國屋書店
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