そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

銀行というビジネスが終わっている件

2018-01-21 19:33:59 | Economics
昨年末に個人向け国債を銀行で購入しようと思い調べたところ、まず債権口座を開設しなければならず、それはネットでは開設できないので支店に行かなければならないことがわかった。

仕方ないので、休暇を取った平日に来店予約して近所の支店を訪問。
2階の資産運用コーナーに案内されたのだが、とにかく手続きに時間がかかる。
書類を何枚も書かされて、印鑑も何箇所も押さなければならず、たかが口座開設するのに1時間超。
ハンコの押しすぎで手が痛くなった。

それで無事国債は買うことができたのだが、今週になって見知らぬ電話番号から着信が。
仕事中でなかなか出られず、何度目かの着信に応答すると、その銀行の営業担当の人からだった。
書類に、1箇所記入漏れがあるのでまた来店してほしいと言う。
なんだよそれ、と思いつつ、平日は無理なんですけどと言うと、日曜に資産運用相談窓口を開くのでその日でもよいという話。
それならいいです、ということにして、今日行ってきた。

支店に着くと、警備員が扉を開けてくれて2階に通される。
と、カウンターの向こうには支店長みたいな男性と、営業担当の女性の2名だけ。
当然、他に客など一人もいない。
で、書類の方は、本当に1箇所だけチェックをするだけで用件は一瞬で終了。
あの人たち、たったこれだけのために出社したんだよな、たぶん。

なんかねえ、全てが終わっている感じがする。
これだけデジタル化が言われている時代に、連絡手段は電話、来店して対面で手続き、紙の書類、ハンコ…
働き方改革だの、これだけ叫ばれている時代に、たかがほんのちょっとの書類の記入漏れのためにわざわざ休日出勤。
いつまで20世紀のやり方続けてるんだよ。

全部ネットでできる話だし、ハンコなんて認証の手段として優れているとは全然思えない。
生体認証やブロックチェーンでいいじゃん。

金融の法規制って、この莫大な無駄な事務処理をする人間を維持するためにあるんじゃないか、っていう気がしてくる。
ようやくメガバンクで数万人規模のリストラみたいな話が出始めたけど、遅いよ。
ああ、早くディスラプトされてほしい。
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ビットコインは現物貨幣に似ている?

2016-08-03 21:27:03 | Economics
今日の日経朝刊「経済教室」のテーマはブロックチェーンと仮想通貨。
文責は、山崎重一郎・近畿大学教授。

ブロックチェーンの分散台帳システムの要諦がまとまっていてわかりやすかったが、中でも次の一節が興味深かった。

岩村充・早稲田大学教授は、ビットコインは電力料金という「原価」が存在し発行量が制約されるため、印刷機で発行できる日銀券のような信用貨幣より、金貨のような現物貨幣に似ていると指摘する。
実際ビットコインは金兌換券と同様の量的な制約が存在し、現実の経済活動に必要となる大量の決済には適していない。また個人のウォレットで管理されるビットコインは、金融資産として運用される銀行口座の「預金」と異なり「死蔵された金貨」のようなものだ。


電力料金が「原価」だというのは、マイニングに消費電力が問題になるほどの計算能力が必要になることからだろうか。
なるほど、と思わされた。
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核心:日本企業が日本でお金を使わないのは

2015-12-05 10:57:34 | Economics
日経朝刊マーケット総合面のコラム「大機小機」、最近はお決まりのリフレ論やら構造改革論やらばかりであんまり面白くなかったのだが、昨日12月4日のは久々に切れ味がちょっと鋭かったので、以下メモしておく。
タイトルは「解せない内部留保課税論」、文責は「冬至」氏。

・企業が内部留保をためて使わないから経済が良くならない。
・放置するなら内部留保に課税する、いやなら設備投資や賃上げをしろ。
・設備投資や賃上げにつながらないなら法人税減税は無駄だ。

筆者は、政治家を中心に語られる、上記のような最近の風潮に疑問を呈する。

・そもそも内部留保課税は二重課税という意味で問題がある。
・内部留保を減らす早道は、配当という形で社外に吐き出すこと。配当増によって個人投資家の懐を潤して経済を活性化する、というのなら解るが、そういう理屈になっていない。
・税制面から設備投資を促進するなら、即時償却を認めればよい。
・賃金を増やせと言いながら、法人税減収の穴埋めに外形標準課税を強化するというのは矛盾。外形標準課税では給与も課税ベースに含まれ、賃金増加の逆風になる。
・法人税減税の目的は、世界と比べて高い日本の法人税率を下げて、ビジネス環境を海外標準に近づけて経済活性化を図るること。設備投資や賃金像を目的にした政策ではない。

まあ、このへんまでは普通の議論なのだが、肝心なのは以下の引用部分だろう。

結局のところ、問題の核心は企業がなぜおカネを使わないかでなく、なぜ日本でもっと使わずに、世界で使うのかである。
カギは投資や雇用を増やしたくなる環境を日本につくりだすことだ。事業コストは低いか。ビジネスがしやすい規制や法制度が整っているか。グローバルに通用する人材や新技術に明るい人材を確保できるか。こうした点が重要になる。
税逃れをしているわけでもないのに「守銭奴」呼ばわりされる。そんな国で企業は投資を増やしたいと思うだろうか。


まさに核心。
どうも安倍ちゃんとその取り巻きの人々の言動を見てると、日本を中国みたいな国にしたいんじゃないかと思えてくるんだよね。
実は憧れてたりして。
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IT産業は「G」なのか「L」なのか

2015-01-17 23:38:39 | Economics
昨日の記事(読書メモ)に関連して、思ったことを書いてみる。

IT産業は、一般的には「G」の世界だと思われていそうだけど、細かく分類してみると必ずしもそうでないように思う。

まず、IT機器の製造業とITサービス業を分けて考える必要がある。

IT機器製造業については間違いなく「G」である。
携帯電話やPCなどが一番わかりやすいが、最終製品メーカーだけでなく部品メーカーもグローバルな完全競争に晒されている。

一方、ITサービス業については、まずBtoCなのかBtoBなのかで違ってくる。

BtoCについてはけっこう「G」である。
お国柄による特色が無いわけではないが、AmazonやGoogle、Facebookを考えれば明らかなように容易に国境を越えてサービスが広がりやすい。

BtoBのITサービスについては、顧客となるマーケットが「G」なのか「L」なのかに依存する。
製造業のようなGの企業向けのITサービスには、グローバルなベストプラクティスが要求される。
ところが顧客自体が「L」の場合(銀行や官庁などが典型的)だと、案外合理性以外の情実や馴れ合い的な要素で仕事が取れちゃったりするもんなのだよな。
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コマツの坂根さんに学ぶ日本的経営が停滞する理由

2014-11-20 23:35:06 | Economics
日経朝刊の『私の履歴書』、今月はコマツの坂根さんです。
今日は、1991年から坂根さんが米国企業と折半出資でつくった小松ドレッサー社のCOOとしてシカゴに赴任した時の話。

初仕事が工場のリストラで、6工場のうち、ドレッサー社から引き継いだ2工場を閉鎖した一方、1つだけコマツが立ち上げたチャタヌガ工場だけはリストラも日本流で進めたとのこと。

 つまり他工場のような閉鎖や一時解雇はせず、給料を3割カットしながらも、全員の雇用は維持したのだ。生産調整で仕事のなくなった社員は敷地内の草むしりや保守整備をしたり、近くの小学校のペンキ塗りなどを請け負ってしのいだ。それから半年ほどで景気が戻り、工場は再開。地元社会からは「コマツの経営は素晴らしい」と称賛され、私も鼻高々だった。
 だが、その後がいけない。米国市場が立ち直り、増産投資が必要になると、他の工場は投資して、雇用も増やしたが、「リストラしない工場」を掲げたチャタヌガでは踏ん切りがつかない。「規模を大きくして、次の不況がきたら対応できない」という心配が先に立つのだ。結局10年たってみると、他の工場が大きく伸びたのに対し、チャタヌガは取り残された。
 考えてみれば、こうしたチャタヌガの状況は、日本経済の姿とも一部重なり合う。「社員を大切にする」。この精神は日本企業が将来とも守るべき大事なことだが、あまりに労働市場の流動性が低いと、会社も個人も身動きが取れなくなり、成長機会を取り逃す。このジレンマをどう解消するかは、日本全体の課題である。


これってホント真理だよなあ、と思う。

坂根さんはジレンマって言ってるけど、これだけ不可逆的にグローバル化が進んでしまうと、日本的経営を捨てて流動性の高い社会に変わるしか道がないのは明白だと思う。
ただ難しいのは、一気に全部が流動性の高い社会に変わればいいけど、どうしてもタイムラグが出てしまうということ。
そうすると、どうしても一旦職を失ってしまうと次の職が簡単には見つからない、という事象がたくさん発生してしまう。
過渡期の問題だとは思うけどね。
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設備投資や雇用を促すために必要なコト

2014-08-29 23:30:13 | Economics
今日の日経朝刊コラム「大機小機」は、真っ当なことが書かれていたのでメモしておこう。
『企業がおカネを使わぬ理由』、筆者は「冬至」氏。

日本企業が潤沢な手元資金を設備投資や賃上げに使わない理由として、「デフレが主因である」「企業への株主の圧力が弱かった」と説明がされるが、いずれもピントがズレている、として…

経営者に手元資金を抱える理由を聞くと、こんな理由が帰ってくる。
「経済の浮き沈みに備えるため。不況でも簡単に人を切って経費を減らすことができないから」「リーマン・ショック時は急に金詰まりが起きた。いざというとき銀行はあてにならない」
企業が日本で積極的に設備投資をしないのは国内市場の縮小により、収益率の高い投資機会が見つけにくいからだ。インフレになっても、経済の長期的な見通しが改善しなければ新規の長期投資は増やせないというのが多くの経営者の考えだ。
株主の圧力が増せば国内投資を増やすという声も聞かない。むしろモノいう株主から無駄な投資や人件費の削減を迫られたという企業も多い。


結局、国内投資や雇用増を企業に促すために必要なことは「投資や人を雇うことに伴う不安を除去することに尽きる」と説く。
まあ当たり前のことだが。
お上が無理矢理言うこと聞かせようとしても逆効果ってこった。
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株価対策と試験対策

2014-08-26 22:28:41 | Economics
本日の日経朝刊紙面より。

投資情報面のコラム「一目均衡」は、ROE経営について。
経産省のプロジェクト最終報告書・通称「伊藤リポート」…

グローバルな投資家との対話では8%を上回るROEを最低ラインとし、より高い水準を目指すべきだー。伊藤リポートは日本企業に対し、司法効率の向上を明確に求めた。


ただし、このROE重視の趨勢に対しては、先週、ダイヤモンド・オンラインで山崎元氏が批判的なコラムを書いていた。



個人的には、山崎氏の書いていることのほうに頷いてしまうのだが…

日経紙面に戻り、マーケット総合2面のコラム「大機小機」は『社外取締役は日本に必要か』。
会社法改正により社外取締役導入の規制強化が図られるが、大きな効果が期待できない社外取締役の導入に圧力がかかるのは、米国の短期投資家が米国流の制度の採用を期待するからだ、と断じている。

ではなぜ政治家まで彼らの期待に応えようとするのか。それは、奇妙な利害の一致があるからだ。短期投資家の資金は、日経平均株価など市場のインデックスの改善に即効的な効果がある。
政治家にとって大切なのは目先の株価である。選挙が迫っているとき、政権政党は目先の株価に敏感にならざるを得ない。株価を上げるには短期投資家に動いてもらう必要があるのである。


山崎氏にしても、「大機小機」の筆者”猪突”氏にしても、論旨は異なるが、株主への過剰な目配りや目先の株価対策に対して冷ややかな目線を投げている。

ところで、これらを読んで同質性を感じてしまったのが、これも今日の朝刊で大きめに扱われていた全国学力テストの結果。
昨年度の同テストでは小6の国語Aと算数Bを除いて全都道府県で最下位だった沖縄県が、今回は小6の算数Aの平均正答率が6位に浮上したとか。
まあ僅か一年で県民の平均的な学力が急に上がるのも不思議な話で、おそらくこれまでちゃんとやっていなかった「試験対策」をしっかりやったことの効果なのではないかと想像する。
短期的な「株価対策」に通じるものを感じてしまう。
そんなこと、本質じゃないのにね。
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消費、意外に健闘…だとか

2014-04-22 22:53:09 | Economics

昨日、こんなエントリを書いたら、先回りしたかのように(?)今朝の日経朝刊にこんな記事が出ていた。

外食・レジャーに客足 「ちょい高」メニュー/遊園地・パック旅行 消費、意外に健闘

消費税率が8%に引き上げられてから3週間。小売業界では、予想外に早く買い物客が戻る売り場が増えている。企業が打ち出す新商品や出費を誘う行楽など、ちょっとしたきっかけで消費者の財布のひもが緩み始めているのだ。… 

レジャー施設は客足がプラスだし、デニーズやモスバーガーの高額メニューが売れていると云う。

まあそりゃ売れてるものだけ恣意的にピックアップしたらこういう記事になるわな。 
結局、ちゃんとした統計が出なけりゃはっきりしたことは言えませんな。 

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物価が上がったのに支出が『変わらない』ってことは…

2014-04-21 22:52:27 | Economics

18~20日にかけて日経新聞社とテレビ東京が実施した世論調査の結果が、今日の日経朝刊に出てましたが。

支出「変わらず」66%

4月から消費税率が8%に上がった後、家計支出に影響が出たかを聞くと「変わらない」が66%を占め「支出を減らした」の31%を大幅に上回った。

3月調査では消費増税後の支出が「変わらない」が51%で「支出を減らす」は44%だった。増税で消費を抑える動きは限られているとみられる。 

これって巧妙なレトリックだよね。
増税で価格が上がっているのに支出が変わらないとしたら、購買数量を減らしてるってことだから、実質的に支出は減らしているのと同じこと。
増税前で現実に物価上昇を体験していない時点(3月)での「変わらない」という回答とは同等には論じられないはず。 

日経は消費増税応援団だからねえ。
日経に限らんけど。 

増税を支持するならするで構わないけど、こういう意図的な誤魔化しはやめてほしい。 

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浜田宏一氏のアベノミクス評がちょっと面白い件

2014-04-01 22:47:46 | Economics

本日4月1日の日経新聞朝刊「経済教室」は浜田宏一・エール大学名誉教授。
アベノミクスの経済理論ブレーンだけに、「異次元緩和」によるリフレ政策を評価するスタンスなんだけど、一般的なリフレ擁護論ではあまり語られないトーンのところが2箇所ほど見受けられたので以下メモ。

…株価上昇は借り入れ時の担保価値を上昇させる。金利がゼロでもなぜ貸し出しが増えないかというと、資金に対する需要がないからではなく、貸し手を満足させるような担保を提出できないからである。株価上昇が銀行の信用供与を容易にするのである。この信用加速の効果は銀行が現金準備にしがみつくのを防ぎ、銀行貸し出しが隅々に行き渡るのを助ける。

資金に対する実需は存在する、という立場ですね。
この辺は反リフレな人たちと真っ向ぶつかるところ。
金融実務の現場ではどうなんだろうな。
担保ありきの貸し出しって、結局バブル肯定論につながるような気もする。 

もう一箇所(ちょっと長いけど)。 

 日本は市場経済の国である。首相や経済産業担当相が産業界に懇請したからといって、合理的な収益の基盤がなければ企業は賃上げやベースアップ(ベア)を政府の希望通りにできるわけではない。
 確かに需要面では、アベノミクスの余得を経営者や株主から労働者に配ることは総需要を高める効果がある。しかし供給面を考えると、賃金が物価と生産性の上昇率よりも高まるような状況は、デフレギャップの解消や労働市場に望ましくない影響を与える。すなわちケインズもすでに明らかにしているように、賃金上昇率が、物価上昇率と生産性上昇率の和よりわずかに少ないような状態が望ましいインフレなのである。
 賃上げがそれ以上になると、需要の面からは良いが供給側の企業が困って雇用の創出につながらない。今年の春闘の結果はその意味で、ほどほどに良い結果であると思ってよい。
 ただし賃上げ、しかもベアまで広がったというのは、経済原理からというより、市場心理のうえで良い結果であった。日本の大衆には今でもアベノミクスに対する一種の不信感があるように思える。アベノミクスは株式市場や輸出業界の大企業のもので、労働者や庶民のものではないという実感である。
 以上のような日本の投資家の心理が、株価が下がった時に日本人が買いに出ず、みすみす利潤機会を無にしている恐れがある。トリクルダウンが賃金交渉にまで下りてきて、そこで労働者にも利益が分配されるのが実感となったのは、政府の賃上げキャンペーンの成果であろう。 

政府の賃上げキャンペーンは基本的にはナンセンスだけど、今回は結果オーライだった、としているのが面白いところ。 
それにしても、そんな「望ましいインフレ」なんてうまく調節できるもんなのかね? 

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