そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

リビアと北朝鮮

2011-08-28 23:18:34 | Politcs

本日付け日経新聞朝刊コラム「中外時評」より。
「アラブの春」と北朝鮮-池田元博論説委員の稿。

カダフィ大佐と金正日という二人の独裁者の類似性を指摘した上で…

2人の独裁者。その路線を分かつ転機は、2003年に訪れる。リビアは英米との秘密交渉の末、外交方針を大転換し、核兵器など大量破壊兵器の開発計画を放棄すると表明した。パンナム機爆破事件の責任も認め、遺族への補償にも応じた。

こうして米欧との関係改善を実現したカダフィ・リビア。
その選択は「リビア・モデル」としてもてはやされ、米国の対北朝鮮協議の場にも持ち出されるようになりました。
ところがその末路は、国連決議に基づく米欧による空爆などの軍事介入により最期を迎えようとしています。
これが北朝鮮にはどのように見えているか。

もちろん深刻な内戦を招いた非はカダフィ政権にあるが、北朝鮮の見方は全く異なる。

朝鮮通信(東京)が伝えた朝鮮中央通信の報道によると、北朝鮮の外務省報道官は3月、米英仏などが対リビア空爆を始めたことを「無差別な武力干渉」と激しく非難した。そのうえでリビア・モデルとは、「『安全保障』と『関係改善』という甘言で相手をだまして武装解除した後、軍事的に襲いかかる侵略方式」と決めつけている。

北朝鮮は今後、カダフィ大佐の選択を反面教師とし、核兵器の開発を放棄するどころか、「核」への執着を一段と強める懸念が大きい。

確かに金正日の目にはリビアの置かれている状況がこういうふうに映っているんだろうな…
リビアの情勢がどちらかというと好ましい方向に行っているように日本人には思われている印象だけど、こうした影響まで考え合わせると結構厄介なことになるのかもしれん。

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上越新幹線で上越駅には行けない

2011-08-24 23:17:16 | Society

今日まで夏季休暇で新潟に行ってたんですが、新潟絡みで目に留まったブログ記事を。

北陸新幹線の新駅名として「上越駅」だけは避けてもらいたい(五十嵐仁の転成仁語)

北陸新幹線が長野から金沢まで延伸されるにあたって、新潟県上越市にできる新駅の名称が仮称で「上越駅」とされているとのこと。
一方で、東京~高崎~長岡~新潟を結ぶ既存の新幹線はご存じのとおり「上越新幹線」という名称であり、北陸新幹線に「上越駅」ができてしまうと、「上越新幹線が通らない上越駅という新幹線駅」になってしまうので紛らわしい、との趣旨。

確かに紛らわしい。
というか現在の上越新幹線の「上越」とは「上州と越後の頭文字をとったもの」であるということをこれまであんまり意識したことがありませんでした。
むしろこっちの新幹線の名前を変えるべきでは、という気もします。
だって北陸新幹線だって上州(群馬県)と越後(新潟県)を通るわけですからね。
例えば、今の上越新幹線は「新潟新幹線」としてしまうとか…
群馬県の人は反対するかもしれないけど、今だって上越新幹線の「上」が上州の「上」だってこと、ほとんど知られてないような。

で、新駅のほうは、地域も市名も「上越」なんだからシンプルに「上越駅」でいいように思います。
ブログ主さんは「謙信駅」を推してるけど、あんまりセンスよくないような気がします…

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「昭和天皇とワシントンを結んだ男」 青木冨貴子

2011-08-20 16:11:51 | Books
昭和天皇とワシントンを結んだ男―「パケナム日記」が語る日本占領
青木 冨貴子
新潮社


トマス・コンプトン・パケナム、終戦後の占領期に「ニューズウィーク」東京支局長を務めた一人の民間人。
偶然に、彼が遺した日記を入手した著者は、コンプトン・パケナムが単なる特派員ではなく、宮内省の幹部(松平康昌)を通じて日本の皇室と繋がり、当時公職追放されていた鳩山一郎や岸信介といった後に首相となる大物政治家とも懇意の仲であったことを知ります。
一方で、「ニューズウィーク」本社の外信部長の役にあったハリー・カーン(後にダグラス・グラマン事件において贈賄計画に関わったコンサルタントとして名前が挙がることになる人物)を通じてワシントンとも繋がり、トルーマン大統領の特使として訪日し、後にアイゼンハワー政権の国務長官となるジョン・フォレスター・ダレスの情報源になっていたことも明らかになります。
パケナムの日記には、来日したダレスを鳩山と引き合わせた件りなどが生々しく記されています。
終戦翌年の1946年に東京に赴任したパケナムは、マッカーサーの占領政策を批判する記事を書いたことでGHQに睨まれて一旦は日本から追放(再入国拒否)されますが、1948年末にはワシントンの後ろ盾を受けて東京に再赴任します。
ちょうど冷戦が始まるという国際情勢の変化の中、米国の占領政策が方針変更され始めた時期と重なります。
マッカーサー解任から講和条約締結・独立といった一連の流れの中で、パケナムは裏ルートでの日米政界の橋渡し役を務めていきます。

そんなパケナムの出自が、日本生まれの英国人であったというのがまた面白いところです。
パケナム家は元はアイルランドの貴族の系統。
コンプトン・パケナム自身は、神戸の在日英国人商人家庭に生まれ、第一次大戦では英国軍に従軍し、米国に移民して大学の教員や音楽ライターの職を経て、「ニューズウィーク」のジャーナリストとして再来日を果たします。
生涯に四度の結婚をし、最後の妻は日本人のオペラ歌手。
伯父は、日露戦争で英国の幹線武官として司馬遼太郎の「坂の上の雲」にも登場する「ペケナム大佐」であることも明らかになります。

著者は、日米英の血縁者や文献を隈なく調べ上げて、コンプトン・パケナムの数奇な人生を紐解いていきます。
1957年にパケナムが急死した際に「ニューズウィーク」誌に掲載された彼の死亡記事に記されたプロフィールにも事実と異なっている点が多くあることが明らかになります。
終章で、多磨霊園に眠るパケナムのもとを著者が訪れる件りには感慨が溢れていて感動的です。

それにしても、このような名もなき民間人が、日本の戦後の行く末を左右する占領期の政策決定に深く関わっていたという事実には、日本人としてやや複雑な思いも湧いてきます。
パケナムのような数奇なプロフィールを持つ人物がもしいなかったとしたら、日本の戦後はまた違ったものになっていたのでしょうか。

さらに言えば自分のような戦後世代からするとついつい軽視しがちな占領期という期間が、戦後日本を形作る上で決定的な時代であったことを改めて思い知らされます。
在日米軍や沖縄の問題を考えれば、この時代に為された政策決定が、今日的な問題に繋がっていることを否応なく意識させられます。
公職追放解除も、朝鮮戦争も、講和条約も、日米安保も、けっして必然ではなかった。
何か一つ歯車が狂っていたら、まったく異なる戦後日本が実在していたのかもしれません。
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「電力料金が安すぎる」

2011-08-20 09:01:00 | Society

「料金安すぎで損害」 韓国電力の株主が代表訴訟(日本経済新聞)

韓国電力公社の株主13人が19日までに、「電気料金が安すぎて会社に損害を与えた」として、同社の金雙秀(キム・サンス)社長に2兆8千億ウォン(約2千億円)を会社側に賠償するよう求める株主代表訴訟を起こした。最近3年の電気料金が原価割れの水準のまま放置されていることによって会社に同額の損害が発生したと主張している。韓電は海外に頼る燃料費の高騰が原因で2008年から赤字経営が続いている。段階的に料金を値上げしているが、燃料費上昇などのコストを賄えない状態は変わっていない。

好調韓国経済もいろんなところに歪みをもたらしているんだろうなあ、ということの一端が窺える話であり。
一方で、こんな話を聞くと、日本の電力会社の株主って、なんと大人しいんだろう、という気も。

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細る国民貯蓄

2011-08-17 23:34:03 | Economics

8月16日付け日経新聞朝刊「経済教室」、小黒一正・一橋大学准教授の稿より。
以下、向学・備忘のため引用。

だが、もはや日本経済の国債消化は限界に近付きつつある可能性が高い。国民総所得(GNI)に対する「国民貯蓄」(民間貯蓄と政府貯蓄の合計から固定資本減耗を除いた純貯蓄)の推移をみると明らかだ。バブル崩壊後の90年以降、少子高齢化の進展で国民貯蓄は次第に減少し、2009年にはついにマイナスに転落した。「次世代への富の移転」ともいうべき国民貯蓄がマイナス(赤字)に陥ったのは、政府貯蓄の赤字幅が民間貯蓄(固定資本減耗を除く)を上回ってしまった結果だ。

なお、政府貯蓄は、一般政府(国、地方、社会保障基金)における政府収入(税や保険料など)と、社会資本整備などの政府投資以外の政府経常支出との差額をいう。基本的に政府貯蓄の赤字幅は赤字公債の発行規模に相当する。

その際、貯蓄・投資バランス(ISバランス)に基づけば、「国民貯蓄=(投資―固定資本減耗)+経常収支」という関係式(以下「ISバランス式」という)を導ける。日本の国民貯蓄は赤字で経常収支は黒字だから、もはや日本経済が資本ストック(企業の生産設備や住宅、堤防や道路などのインフラの合計)の更新費用を賄えない状況(投資<固定資本減耗)に陥っている事実を示す。

<中略>

米国の場合、国際市場の支払い手段として他国が基軸通貨であるドルや米国債を保有する動機があり、経常収支の赤字を維持できるので、国民貯蓄がマイナスでも比較的弊害が少ない。すなわち、前述のISバランス式において「国民貯蓄の赤字幅<経常収支の赤字幅」という関係が成り立つ限り、「投資<固定資本減耗」となり、民間で資本ストックの更新費用が賄えない状況には陥らない。

しかし、基軸通貨国ではない日本やギリシャは異なる。特に、経常収支が黒字である日本の国民貯蓄がマイナスのまま継続するということは、資本ストックの食い潰しが進むことを意味する。

日本の資本ストックを維持するため、国内投資を過去の蓄えである対外純資産(累積経常収支)の取り崩し(または海外からの借り入れ)で賄うこともできる。しかしその場合、国内投資の収益率が借入利子率より低ければ、恒常所得の低下を意味する。また資本ストックの維持には最低限、その固定資本減耗に見合う投資が必要であるが、国民貯蓄がマイナスの場合、ISバランス式で無理に「投資=固定資本減耗」とすると、国際経済において日本の「富」の象徴であった経常収支は赤字となってしまう。

要するに、資本ストックを維持しようと投資を拡大すると経常収支は赤字に転落し、経常収支の赤字を回避しようとすると資本ストックが食い潰され国内の生産が縮小していくというジレンマに陥る。前者を選択すれば、ギリシャのような財政・経常収支の「双子の赤字」に直面し、日本経済の弱体化が進むだろう。

いくぶん静的な分析に傾いているような印象もありますが、書かれていることは概ね理解できました。
特に社会インフラの老朽化が言われていることを鑑みると、事態は深刻化するように思います。

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失業率45%って…

2011-08-16 23:54:34 | Economics

本日の日経朝刊国際面のフィナンシャルタイムズ翻訳記事「若者の高失業率と社会不安」から。

若年層の高失業率が社会不安につながるという理屈を裏付けるできごとが最近、相次いだ。最も劇的だったのは中東・北アフリカに広がったアラブ民衆の蜂起だ。若者の40%以上が職に就けないような状況を生んだ体制への不満が理由だった。
北アフリカだけではない。先週、暴徒による略奪行為が各都市に広がった英国では若者の5人に1人が職を持たない。米国の状況もこれと大差ない。欧州大陸はさらに厳しく、スペインでは若者の45%強、ギリシャでは38%が失業中だ。

若年失業率45%なんて聞いてしまうと、就職氷河期だ世代間格差だと云われている日本もまだまだ幸せなもんだと思えてきますな。
日本の15~24歳の失業率は8%だそうです。

しかしこの彼我の差ってどこからくるんだろう?
失業率って求職してないと分母に算入されないから、そのへんの数字の拾い方の違いもあったりするのかな。

それにしても45%って…どうやって生きてるんだろう?
働かざれども暮らせるくらい福祉が厚いってことだろうか。

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世界同時株安を読み解く視点

2011-08-09 23:41:42 | Economics

世界同時株安が止まりませぬ。

これに関連して目を引いたブログ記事を2本ほど。

政治が本当に悪いのか?(ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ)

ただ、感覚的なことを言わせてもらうと、バブル崩壊後の日本の停滞は世界の先進国のその後の停滞を先取りしたものであったのかもしれないと思い始めている。

そして、それが明らかになれば、日本の停滞の原因は政治でも金融政策でもないということが明らかになってくるだろう。そして、政府の力というのがいかに無力でむしろ有害であるかを人々が知るようになるだろう。

世界的に中央銀行がマネーをばら撒き、財政赤字を垂れ流すような時代が到来しそうな気配もある。日本一国のみがそれをやっていた時代はよかったが。。。。そうなれば行き着く先は低成長とインフレという非常に苦しいものになるかもしれない。

世界中の国が「失われた20年」に突入しちゃったら…オソロシイけどあり得そうになってきた…

もう1本は処方箋。

FOMCを読む!(株式は非常識:変化をつかめ!)

一つだけ、一発逆転ホームランがあります。

それは、中国に人民元を切り上げさせることです。
世界は中国からデフレを輸入しているのです。逆に言えば、中国はインフレを輸入しています。
だから、中国のCPIは、利上げしても、なかなか落ち着きません。
今日の日経3面の伊藤忠商事の岡藤社長のインタビュー記事がすべてを物語っています。
アメリカでは、ちょっとのインフレ(生活必需品が中心に値上がり)で、消費者の購買力が落ちるのです。
中国も、度合いは違うかもしれませんが、インフレは、消費を落ち込ませるでしょう。
それが、今、始まっているのです。
そりゃ、豚肉が値上がりすれば、他の物を買う余裕はなくなりますよね。
中国も、成長のためには、通貨切り上げは避けられません。
プラザ合意のような急激な切り上げが、受け入れがたいのであれば、今のペースを2倍、できれば3倍、4倍にすべきでしょう。
現状では年率たったの5%です。
ここが変われば、世界は変わります。

 

「世界は中国からデフレを輸入」「中国はインフレを輸入」…言い得て妙。

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マネーの行き場

2011-08-08 23:33:12 | Economics
しかし、債務問題で米国債が格下げされたことをきっかけに世界同時株安が起きているというのに、米国債自体は買われていて長期金利も下がっているってホントわけわからん。

日本だって、こんだけ財政赤字、国債残高の累積が云われているにも関わらず、長期金利暴騰なんて気配もないし、円は買われてるし。

いくら信用が毀損されているといっても、他に行き場がなければマネーは流入するってことですね。
コモディティ市場だって、無尽蔵にマネーを吸収できるはずもなく。

一つの市場カテゴリーに閉じた世界での理屈では、もはや事象を説明できない時代になっているということなんだろうな。
カテゴリーのボーダーをマネーは自由に乗り越えて行き来する。
その動きに翻弄されてオーソドックスな理論は力を喪う。

そう考えていくと、「日本の財政破綻は待ったなし、今こそ増税による財政再建を」っていう一見まともそうに聴こえる議論も、「日本は内国債比率が高いのでギリシャのようにはならない。まだまだ国債発行しても大丈夫」って強気な議論も、どっちも頭デッカチで的を外しているような気にもなってくる。

結局は相対論。
絶対基準での経済の良し悪しよりも、他の市場と比べて「マシ」かどうかで、破綻が訪れるかどうかは決まるのでしょう。

まあ、いつまでもゆでガエル状態でいるのが幸せなのかどうかは別として。
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マネタイズされていない観光地

2011-08-01 22:58:36 | Diary
今回旅行してみて改めて実感したのは、北海道では普通の道や、そこらへんに立っている木が、そのまんま観光スポットになってしまうということ。

普通の道や木だから、当然のことながら通ったり見たりするだけならお金は一切かからない。
簡素な無料駐車場があるだけだったり、無ければ短時間なら路駐したっていい。
今回訪れたぜるぶの丘かんのファームは一応観光地化してるけど、基本的には花畑なので、カートに乗ったり食べ物を買ったりしない限りタダ。

すべからくマネタイズされた観光地に慣れた身からすると、そのリーズナブルさ加減はけっこう衝撃的です。
旭山動物園だって、市営だから子供は中学生まで無料だし。

行くのには飛行機代がかかるけど、行ってしまうとホント天国のようなところですな。
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