そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『日本史の謎は「地形」で解ける』 竹村公太郎

2015-05-21 21:52:02 | Books
日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)
竹村 公太郎
PHP研究所


Kindle版にて読了。

超絶面白い。
目から鱗とはまさにこのこと。

元・建設官僚の著者は、思想・哲学・宗教・政治などの「上部構造」ではなく、地形と気象という「下部構造」から歴史を鮮やかに読み解いていく。

関ヶ原勝利後、なぜ家康は江戸に戻ったのか?
なぜ頼朝は鎌倉に幕府を開いたのか?
赤穂浪士の討ち入りはなぜ成功したのか?
なぜ徳川幕府は吉良家を抹殺したのか?
なぜ吉原遊郭は移転したのか?

こうした多種多様な日本史の「謎」が地形と気象という観点から解釈できるのだから驚きである。
もちろん著者オリジナルの仮説であり、果たして鵜呑みにしてよいのか、という疑いを差し挟む必要はあろうが、自然環境という絶対的事実をベースにしているだけに説得力が窺われる。

何より白眉なのは、「奈良から京都へ」「京都から江戸へ」という日本史上に二度のみ発生した「遷都」の理由を明快に断じた件りである。
さらにその延長線上の議論で、邪馬台国の所在地を推論したり、東京からの遷都があり得ない一方北京からの遷都は現実味を帯びていることを論じたりまでされるのだから唸らされる。
その理由は…ぜひご一読いただきたいので、ここでのネタバレはしないこととする。
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ブログ開設10周年

2015-05-16 13:35:10 | Weblog
2005年5月16日に開設した本ブログ、本日10周年を迎えました。

最近は更新が滞ることも多く、すっかり閑散としてしまっていますが、細々とでも続いていることは我ながら奇跡のように思っております。
思えば、10年前、自分は33歳、結婚した翌年でまだ子供もおりませんでした。
個人がネットで情報発信することへの希求がありながらも、ウェブサイトを自ら開設するまでの手間をかける余裕もない中、当時大ブームを迎えていたブログサービスの利用に踏み出したのでありました。

初期の頃は、毎日のようにエントリを書き、内容も雑多で多岐にわたっていましたが、その後他のSNSが勃興する中、世間の出来事へのツッコミはTwitterで、プライベートな発信はFacebookで、と役割分担が自然とできてくると、果たしてブログに何を書けばよいのか、というのはなかなか難しくなってきます。

また、ブログ勃興期はまだ界隈に仄々とした雰囲気が流れており、ご縁のあった他のブログ主さんとコメント欄で交流したりというのもありましたが、スマホ時代を迎えてネット民の質量両面における爆発的な拡大するにつれ、よく言えば秩序、悪く言えば暗黙の掟のようなものがネット世界に行き渡り、以前のように自由闊達にものを言い合うことが躊躇われるような状況に変わってしまったのは確かかと思います。
もちろん単に更新が途絶えてしまったブログも多いという事実もありますが。

…というような背景もあり、このブログも最近ではブックレビューとサッカー関連のエントリくらいに収斂してしまっておりますが、基本読んだ本のレビューはすべてこのブログに記録しており、そのブックレビューのエントリが300本を超えたことはそれなりに誇れることではないかと密かに自負しております。

仕事のほうはお陰様で相変わらず(というかますます)気が休まらない状況で、なかなか落ち着いてブログ執筆というわけにもいきませんが、このブログ開設後に生まれたコドモたちも2人とも小学生になり、これから段々と持て余す時間が増える可能性もなきにしもあらずかとも思います。
もしあと10年継続して開設20周年を迎える日が来たとしたら、自分は53歳。
その頃どのような心境になっているかと想像すると少々楽しく感じたりもします。
できるところまで続けられればと。

末筆ながら、もしこの閑散としたブログの記事をお読みいただいている方がいらっしゃるとしたら、心より感謝申し上げることで記念のエントリと致します。
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『合理的なのに愚かな戦略』 ルディー和子

2015-05-15 23:56:40 | Books
合理的なのに愚かな戦略
ルディー和子
日本実業出版社


顧客志向、ブランディング、プライシング、など、マーケティングの教科書に載っているようなセオリーを、表面的に鵜呑みにせず本質を考えてみよう、というのが趣旨。
あまり論理的に説明するテイストではなく、著者独自の考え方というよりドラッカーやポーターなど著名な経営学者の教えを引用し組み合わせながら辛口に日本企業の経営戦略を切り刻んでいく、どちらかというとエッセイに近いような印象である。

いろいろと面白いことが書いてあるのだが、日本企業・日本人のコミュニケーションの下手さ、というかコミュニケーションをサボる悪癖を指摘したあたりは的を射ていると感じた。
自社が提供する製品・サービスの価値を伝えることができない、或いは伝えることをサボっているがため、安易に低価格化で競争に勝とうとする企業。
自社のブランド価値を直接消費者に訴えることができない、或いは訴えることをサボっているがため、大量のTVCM投入や系列小売店・代理店向けの営業に注力してしまう企業。
なんだか耳が痛い。

しがらみ=インセンティブ構造(どのようにすれば他人が思うように動いてくれるかが解るからこそ、自分も他人の期待に合わせた言動をとってしまう)という捉え方も興味深い(これも著者オリジナルのアイデアではなく紹介だけど)。
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『財務3表一体分析法』 國貞克則

2015-05-06 23:19:22 | Books
財務3表一体分析法 朝日新書
國貞 克則
朝日新聞出版


Kindle版にて読了。

『決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法』の続編。
BS/PL/CSの仕組みと関連性を理解できたら、次はそれを読み解いてみよう、という自然な展開。
前作に続き、基本的なことが極めてわかりやすく解説されています。

財務諸表を読み解く、著者流の手法と順序は以下のとおり。

1.BSの右側を見て、どのようにお金を集めてきているかをチェックする。
2.特に有利子負債の額がどの程度あるかを見ておく。
3.利益剰余金の額を見て、その会社が過去に利益をあげていた会社かどうかをチェックする。
4.BSの左側を見て、集めてきたお金が何に投資されているかをチェックする。
5.その際に、「流動比率」「固定比率」「長期固定適合率」「自己資本比率」などの指標を感覚的にイメージでつかむ。
6.BSとPLの高さを比べて、投下した資産をいかに効率良く使って売上高に変えているか、つまり総資本回転率をチェックする。
7.売上高からいかに効率良く利益を出しているか、またその利益をどのように出しているか(営業利益なのか営業外利益なのか特別利益なのか)といった利益構造をチェックする。
8.キャッシュフローの8パターンのうちの、どれに当たるかをチェックする。
9.主要な財務分析指標「ROE」「レバレッジ比率」「総資本回転率」「当期純利益率」の数字をチェックする。



ただ、財務分析の常として、1社1期の財務諸表だけ眺めていても何もわからなくて、同業他社との比較や期間比較は必須だんだよね。
だから手間がかかるんだけど…
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『鳩の撃退法』 佐藤正午

2015-05-05 22:41:38 | Books
鳩の撃退法 上
佐藤 正午
小学館


鳩の撃退法 下
佐藤 正午
小学館


傑作。

交錯する時間軸と登場人物、コミカルなセリフの応酬、魅力的な舞台設定と鍵を握るガジェット。
内田けんじの映画(『運命じゃない人』『アフタースクール』『鍵泥棒のメソッド』)と似ている。
個人的には、こういうのは映画よりも小説の方が向いているように感じる。

いきなり最初の2章での人称のすり替え方の鮮やかさに度肝を抜かれる。
そして虚構の中に虚構を構築するメタ構造。
もちろんこの『鳩の撃退法』自体が虚構なのだが、その虚構の中に事実と虚構(与太話)が不連続に織り込まれるのだ。
上下巻合わせて900ページを超える大作だが、構成力が素晴らしいのでまったくダレない。
その上で構成力を支える筆力(文章力)の確かさ。

1つ前に読んだミステリ小説が、構成力と筆力の点であまりに貧しかったので、この作品の秀逸さが際立つ。
やはりこういう作品に出会えるから小説読みはやめられないのだ。
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ベン・E・キングが亡くなった

2015-05-02 06:55:01 | Entertainment
ベン・E・キング氏死去=「スタンド・バイ・ミー」が大ヒット―米(時事通信) - goo ニュース

ベン・E・キングが亡くなった。
この人のことは『スタンド・バイ・ミー』以外ほとんど何も知らなかったが、まだ76歳だったそうだ。
正直、もっと上の世代だと勝手に思い込んでいた。

映画『スタンド・バイ・ミー』が公開されたのは1986年、日本での劇場公開は翌1987年。
自分が中二から中三になる春のことである。
映画自体を観たのはたぶん数年後、レンタルビデオが出てからだと思うが、劇場公開時に流れたCMで、"When the night..."で始まる掠れているが力強い印象的な歌声に魅了された。
すぐにレンタルレコードショップへ行って、ベン・E・キングの古いアルバムを借りた記憶がある。
その時初めて、ああずいぶん古い歌だったのだな、と認識したのだが、改めて調べてみると、キングが『スタンド・バイ・ミー』を歌ってヒットしたのは、映画に先立つこと25年の1961年。
ということはキングがまだ22~23歳の頃のことだったのだな。

考えてみれば、映画『スタンド・バイ・ミー』自体、中年になった主人公が少年時代の出来事を回顧するお話で、回想の舞台はおそらく1950年代の後半、30年くらい前を思い出している設定だ。
で、その映画が作られ、初めて観てから30年近くの時が経過し、当時中高生だった自分もこうして中年になり、当時を回顧しているのである。

こうして時は流れていくのだな。
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