そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

インバウンド

2016-05-25 21:58:45 | Diary
銀座の吉野家に入ったら、客(団体)も店員も中国人で、中国語でメニュー説明して応対していた。
すごい時代になったもんだ。
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『青い光が見えたから 16歳のフィンランド留学記』 高橋絵里香

2016-05-21 22:32:31 | Books
青い光が見えたから 16歳のフィンランド留学記
高橋 絵里香
講談社


小学生の頃に読んだトーベ・ヤンソンの「ムーミン谷」の物語に感銘して、フィンランドという国に留学することを夢見た少女が、中学卒業して実際にフィンランドの高校に単身留学して過ごした四年間を振り返った記録。

いくら何年もの間憧れを抱き続けた国とはいえども、16歳の少女が言葉も通じない極北の国にひとりぼっちで降り立った時の心細さといえば想像を絶するものがあっただろう。
が、暖かいホスト・ファミリーや教師・クラスメートに囲まれ、彼女は一つ一つ壁を乗り越え、フィンランドという国への愛を深めていく。

彼女の決断を、何の抵抗もなく受け容れ支援した両親からして、彼女自身そうした資質を養う家庭環境に育ったのだろうが、横並びの均質性と空気を読む協調性が尊ばれる日本社会とは正反対のフィンランド社会が、きっと彼女に合っていたのだろうとは思う。
自由と個人主義を尊重するフィンランド社会では、それと裏腹に厳格な自己責任と徹底した自由競争が求められる。
高校生でも、自ら望むキャリアを設計してカリキュラムを組み立て、それに沿って計画的に単位取得し、厳しい卒業試験をクリアしなければならない。
この本を読んでいると、穏やかで思いやりと愛情に溢れた人々ばかり登場するので、フィンランドという国が理想郷のように感じられてくるが、そうした自己責任と競争に馴染めない人には暮らしづらさもあるのだろうとは思う。

この本は2007年に発刊されたもので、当時フィンランドで進学して大学生だった著者も現在は30歳を過ぎているはず。
今、どこでどのような生活を送られているのだろう。
本書の中でも夏休みの帰国中に母校である中学校(彼女にとっては苦しい中学生時代を送った場所)を訪れて後輩たちにフィンランドでの留学生活を紹介する場面が出てくるが、彼女が得た貴重な体験を日本社会に還元してよい影響を与えてくれていたらいいな、と思う。
これからの日本社会には、そういった具体的で現実味の詰まったグローバル化が必要だろう。
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『シェアリング・エコノミー』 宮崎康二

2016-05-11 23:14:22 | Books
シェアリング・エコノミー ―Uber、Airbnbが変えた世界
宮崎 康二
日本経済新聞出版社


Uber、Airbnbに代表されるP2Pシェアリングサービスの概観・特徴・世の中に与える影響についてコンパクトにまとめられている。
著者は1993年生まれで昨年大学を卒業したばかりとのこと。
記述形態が学生が書いた論文っぽい感じだが、その分平易で理解しやすい。

ここでは、カーシェアリング、クラウドファンディングからBitcoinまで、シェアリング・エコノミーをかなり広い概念で捉えている。
シェアリング・エコノミーの最大の利点は、遊休していた資産や労働資源を有効活用して資源配分の最適化を実現することにあると考えるが、一方でホテル・旅館業界やタクシー業界など国からの規制を受けながらビジネスを行っている既存の事業者との間の利害衝突という点が解決すべき最も大きな障害となる。

ホテル・旅館やタクシーの事業者に対して政府が規制をかける最大の目的は消費者保護であろう。
情報の非対称性により消費者が不利益を被ることを未然に防止するために、政府が事業者の有資格性を予め保証するのだ。
一方で、シェアリング・エコノミーにおいてはインターネット上のプラットフォームがSNSなども活用して評判メカニズムを働かせることにより、情報の非対称性を排除する。
過去の取引における態様の評価を参照することにより、シェアリングサービスの参加者は、政府など公的機関によるお墨付きが無くとも取引相手の信用度を知ることが可能となる。

このように考えると、シェアリングサービス事業者に対して、既存事業者と同じレベルの規制をかけることが不合理であることがわかる。
既存事業者からは、ビジネス上の競争条件が不平等であると抗議がなされるだろうが、情報の非対称性防止という観点ではダブルスタンダードに合理性があるのだ。
なお、そこまで考えると、既存事業者もシェアリングサービスの評判メカニズムに乗っかってしまえば、政府による規制が不要になり、競争条件の公平性も担保できるのではないか、という気もしてくる。
実際、既存事業者側にもシェアリング・エコノミーに参入しようとする動きはあるようだが、現状すべての消費者がネット上の評判メカニズムを活用できるだけのリテラシーを備えているわけではないことを考えると、既存の公的規制をすぐに撤廃するのは難しいのだろう。

いわゆる「市場の失敗」のうち、情報の非対称性については以上のような感じだが、外部不経済については考慮の必要がある、というのが著者の見解である。
シェアリングサービスが、直接の取引関係者以外の第三者に、治安の悪化や騒音などの損害を与えたり、宿泊税などの税金を払わないことにより不当に競争上の優位性を得ることは防がなければならず、そのためには既存事業者に対するものとはまた異なる規制を設計して実行する必要がある。

このように、著者は、せっかくのシェアリング・エコノミーの登場による恩恵を損なうことのなきよう、経済性を考慮した合理的な規制のあり方を提唱しており、その点で好感が持てる。
とかくこの手の話は、既得権益に対する是非を問う政治的イシューになりがちだが、それを理性により乗り越えられるかどうかが世の中を上手に変えていくポイントになるのだろう。
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『元素周期表で世界はすべて読み解ける』 吉田たかよし

2016-05-05 22:35:24 | Books
元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち (光文社新書)
吉田 たかよし
光文社


Kindle版にて読了。

大学受験で文系に行ってしまった自分だが、教科としての「化学」にはそんなに拒否感を抱いたことはない。
ただし、化学の何が面白いのかはまったくピンとこないままで終わった。
化学といえば、やっぱり化学実験の印象が強く、色が変わったり泡や煙が発生したりして、これはこういう化学反応なんですよ、と化学式で説明されると、それはそれで解るのだが、なんだか現象を元に理論を説明するという帰納的なアプローチが個人的にはしっくりこなくて。
まず体系的な理論があって、その理論によって、身近なものも含めて様々な現象を説明する、という演繹的なアプローチの方が全体感が見えて安心(感心)するのだが。

この本は「宇宙、地球、人体の成り立ち」まで「世界はすべて読み解ける」と銘打っているので、自分が求めているアプローチに応えてくれるのではとの期待をもって読んでみた。
が、結局は断片的な事例を元に遠大な世界を導こうとする帰納法に終始した印象で、ちょっと期待はずれ。
まあ新書版の入門書ということを考えれば、無理もないのだが。

著者(元NHKのアナウンサーで医師、タレント活動もしてるらしい。知らんけど)によれば、「周期表とは、量子化学の結論を、数式に頼らず表すもの」とのこと。
面白い、と思えるまで深く理解するには、量子化学についてある程度見識を持たなければいかんのだろう。
少なくとも、この本の【発展コラム】で解説されている「電子の軌道を決める4つの原則」くらいは腹に落とさないと。
あと、文中にも何度か出てくる「エネルギーが安定」とか「原子核が不安定」とかいう「安定」という概念がよくわからん。

ただ、興味深く読んだ部分もいくつもあって、たとえばナトリウムとカリウムは、いずれも周期表上で一番左の縦列(アルカリ金属)にある元素で性質が似ている。
人体はその類似性を活かして、筋肉や神経の働きにナトリウムとカリウムを利用している。
また、同じアルカリ金属に属するセシウムをカリウムと間違って体内に取り込み内部被曝を引き起こしやすい。
…なんて話を読むと、なるほどと思わされるし、興味も惹かれる。
こうやって理屈から入ってくれると化学の面白さもわかりそうな気がするのだが、難解でない説明で理屈の全体感を教えてくれるような本がどこかに無いだろうか。
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