そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「江戸の大普請 徳川都市計画の詩学」 タイモン・スクリーチ

2008-03-29 20:51:41 | Books
江戸の大普請 徳川都市計画の詩学
タイモン・スクリーチ
講談社

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イギリス人の日本研究家である著者が、徳川幕府による首都たる都市・江戸の街づくりを語った一冊。
といっても、都市計画を技術的に論じたものではなく、サブタイトルに「詩学」とあるように、精神的な、或いは象徴的な意味での都市づくりがいかに行われたのか、そして江戸に暮らす人々はそのようにしてつくられた都市に対して実際どのような意味を解釈していたのか、そのことについて現代に残されている浮世絵などの美術作品を鍵にして読み解いていく、といった風合いの文章です。

例えば、それまで荒涼たるド田舎でしかなかった江戸の地に新生・日本の大首都たる権威をもたらすために徳川幕府が精神的な意味での「街づくり」をいかに行ったのか。
当時盛んだった陰陽道においては北東が鬼門とされており、悪い「気」の流入を防ぐためには北東に山があり、しかもその山に寺院があるような場所に都を置くことが理想だったわけです。
京都の北東には比叡山があり、そこには延暦寺が建っている。
それと同じ形をとることができなければ、江戸が新都としての体をなさなくなってしまう。
徳川家が江戸に移るずっと以前からある寺院としては浅草寺がありましたが、浅草は江戸の北東ではないし、山でもない。
そこで、ちょうど北東方向にあった上野の山に寛永寺が建立された、ということです。
そして、吉原の遊郭や瓦町・刑場などはその鬼門の外に配置されたのです。

このほか、日本橋は、橋の上から川沿いに西方を眺めると江戸城と富士山が並ぶよう見える位置にかけられたことだとか、江戸の男たちが吉原へと向かう道すがらにどのような光景を目にしたのかだとか、なかなか興味深い話題が次々と繰り出されます。
学問というよりも、著者の想像による解釈をきかされている感じですが、面白いのは間違いない。
読んでいて、外国人が書いたもの、という印象を受けるところは全くないのですが、異邦人だからこそ逆にこのような独創的で生き生きとした解釈ができるのかもしれません。
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東条英機邸跡

2008-03-29 15:52:03 | Diary
「東京裁判」の中で、1945年9月11日の逮捕当日、東条英機が自邸でピストル自殺未遂したエピソードが紹介されてたんですが、その東条邸というのは用賀にあったんですね。
我が家から歩いて行けそうな場所なので、ネットで詳しい場所を調べて散歩がてら行ってみました。
246からちょっと入った場所、今は立正佼成会の施設がある場所にひっそりと石碑が立っていました。
用賀のこのあたりは、今ではマンションもたくさん建っていますが、よく見るとかなり古くから建っていそうな敷地の広い家もあったりもします。
それでも、当時はけっこう田舎だったんじゃないかな。

散歩がてら桜をみてまわってきましたが、東京は今週末まさに満開。
今日は花冷えというかちょっと肌寒く、午後は少し曇ってきてしまい、絶好の花見日和とは残念ながらいきませんが。
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「東京裁判」 日暮吉延

2008-03-29 10:49:47 | Books
東京裁判 (講談社現代新書 1924)
日暮 吉延
講談社

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極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判を様々な角度から克明かつ実証的に論じた一冊。
著者の立場は、「東京裁判史観」といわれる肯定論に立つものでもなければ、単純な否定論に与するものでもありません。
「あとがき」から引用すれば、

東京裁判の「意図」よりも、政策としてどうだったかという「結果」を評価し、そのさい「連合国側から見た場合」、「日本側から見た場合」と目線を変えることが有用であると考えている。

と、明快に宣言されています。

章立ては以下の通りです。

第一章 東京裁判をどう見るか
第二章 東京裁判の枠組みはいかにして成立したのか
第三章 連合国は何を告発したのか
第四章 日本はどのように対応したのか
第五章 判決はいかにして書かれたのか
第六章 なぜ第二次東京裁判は実施されなかったのか
第七章 戦犯釈放はいかにして始まったのか
第八章 なぜA級戦犯は釈放されたのか

裁判の成立過程から、逮捕・起訴、審理の過程、判決、後処理まで一連のフェーズに分け、また、判事団・検察団・弁護団それぞれのグループの構成や内部での路線対立など事細かに論証されていきます。判事側にしても、弁護側にしてもまったく一枚岩ではなく、個人個人の信条やそれぞれの出身国の国内事情、あるいは個人的なレベルでの好き嫌いも含めて深刻な路線対立が存在したことが明らかにされており、そのことからだけでも東京裁判を一元的な肯定/否定で評価することが不適切であるということができると思います。

これを読むと、東京裁判が「裁判」という形を取りながら、まぎれもなく「政治」であったことがよくわかります。
連合国側がドイツのニュルンベルグ裁判とのバランスに腐心したり、裁判に参加した連合国側各国がそれぞれに異なる国内世論の影響に配慮する必要があったり、冷戦構造が確立していく中で東京裁判が東西両陣営の駆け引きの場になったり、と枚挙に暇がありません。
また、戦犯に対する日本国内世論も時代につれて変遷していく過程にも興味深いものがあります。終戦直後は戦犯に対して非常に厳しい世論があったものが、裁判の長期化・占領の終了を迎えるにつれて同情論へと変化し、そして戦犯釈放が完了し高度経済成長を経て経済的に豊かになるにつれ戦前否定の考え方が一般化するとともに戦犯に対するネガティブな見方が支配的となった、と解説されます。

これまでまったく知らなかったトリヴィア的知識も得ることができました。
たとえば、
・A級、BC級といった戦犯の区別は、悪質度や重責度でABCと並べたといった序列関係にあるものではなく、単に裁判所憲章第五条の(a)項(b)項(c)項に該当するというだけの意味しかない。
・占領終了後、巣鴨プリズンが日本政府管轄になって以降は、「一時出所」の制度が相当緩やかに運用され、A級受刑者においても「3、4日外泊して帰ってきて一晩監獄で過ごしまた帰宅する」なんてことも珍しくなかったり、「職業補導」名目で企業に毎日「通勤」するBC級受刑者がいたりなどした。といった話。

克明に記述された大作なので読むのはちょっと大変ですが、東京裁判の全体像をイデオロギーから離れて客観的に知りたい、という人にはお勧めの一冊です。

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澱んだ水槽

2008-03-27 06:58:36 | Sports
日本、バーレーンに敗れる=後半に決勝点許す-サッカーW杯予選(時事通信) - goo ニュース

酷い試合だった。
負けたから酷い、と言ってるわけではありません。
たとえスコアレスドローに終わっていたとしても、或いは、日本が幸運な得点を入れて勝っていたとしても、やはり酷いと感じたと思います。
とにかく観ていてまったく面白くない。
結果はどうでもいい(もちろん勝ってほしいけど)から、もう少し楽しいものを観させてほしい。

3-5-2の陣形を維持したままジリジリ前進しようとしている感じで、素人目にも流動性やダイナミズムが一切感じられない。
いつもの中盤でのパス回しが見られず、早いタイミングで相手のバックラインの背後に精度の低いロングパスを放り込むばかり。
流れの中から得点を上げる雰囲気は皆無でした。
(バーレーンの攻めも同じようなものだったけど。)

後半、遠藤を投入してからは多少良くなったように見えたので、攻守の要である彼がスタメン落ちしていたというのも大きかったのでしょうか。
システム云々は言いたくないけど、CBを一枚増やした分スタメンから押し出されたのが遠藤、というのも果たしてどうだったのか。

とにかく覇気の無さ、というかコンディションの悪さが目につきました。
気温33℃、湿度18%という気候条件でのアウェー戦、という点はもちろん考慮すべきとは思いますが。
何だかジーコ時代の悪いときを思い出させる、狭くて澱んだ水槽の中でサッカーしてるみたいな印象。
岡田監督が継承すると言っていた「人もボールも動くサッカー」はどこにいってしまったのでしょうか。
Jリーグの試合を観てるほうが、よっぽど面白い。
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「RUN」 小宮良之

2008-03-24 22:37:50 | Books
RUN
小宮良之
ダイヤモンド社

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1977年生まれ、FW。
習志野高校から超高校級ストライカーとして当時アーセン・ベンゲル監督が率いていた名古屋グランパスに入団。
入団直後から得点を重ねる活躍を見せて若い世代の日本代表にも名を連ね、ワールドユースやシドニー五輪予選に出場(柳沢敦や戸田和幸と同世代)。
が、入団数年して結果を残せなくなり、FC東京~ベガルタ仙台へと移籍するも成績は低迷。
2004年に日本では馴染みの薄いパラグアイ・リーグのグアラニに移籍。
南米最高峰リベルタドーレス杯で得点を記録。
その後はメキシコ(パチューカ、イラアプト)、スペイン2部リーグ(カステリョン、ヌマンシア、ラス・パルマス)とラテンの国々のクラブを転々としながら、06-07シーズンまでの4シーズンで合計44点を稼ぎだす活躍を見せている…

福田健二は、そんなサッカー選手です。
この経歴だけみても、欧州リーグに所属する他の日本人選手とは明らかに違っている。
この本を読んでも、異国の地で闘志をむき出しにして奮闘する彼の姿がまざまざと伝わってきます。
そんな日本人離れしたハングリーさのカギになるのが、彼が少年時代に味わった体験。
小学五年生の時、女手ひとつで彼と兄を育てていた母が突然の自殺。
彼には「好きなサッカーで 世界に胸を張れる 選手になって下さい」というたった三行の遺書だけが残されたのです。
「家族」を知らずに育った男が、妻と娘2人の「家族」だけを味方に見知らぬ土地で闘う、その姿に熱いものを感じ取らずにはいられません。

福田健二という選手のことはある程度以上のサッカーファンでなければ知らないと思いますが、これはサッカーのことをよく知らない人でも感銘を受けることのできる本だと思います。
特に、福田夫妻へのインタビューを交互に配した「二人のキモチ」の章は珠玉。
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ペースの違い

2008-03-23 20:57:33 | Diary
さて、今回はヨメの実家がある新潟に車で行ったんですが、いつものことながら彼の地と東京との、運転文化の違いを実感してしまいます。
とにかく、ノロノロ走ってる車が多い!

基本的に片側一車線の道路ばかりなので、前にそういう車がいるとどうしようもなくなる。
家族を乗せてりゃ、そう気にもならないんですが、一人で運転してるととにかくイライラする。

車社会なので、都会じゃ運転しないようなタイプの人まで公道に出ているのでこうなっちゃうんでしょうか?
いや、それよりもやはり流れてる時間の速さが違うんだと思います。
東京の人間は速いペースでの生活に慣れ過ぎてしまっている。

今回、片側一車線の道で、反対車線に出ての追い越しを何度も何度もやってしまいました(もちろん追い越し禁止のエリアでは自重しましたが)。
地元の人であんなことする人は皆無なんでしょうな。
追い越された方もさぞかし驚いたことでしょう。
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ブルーな夜

2008-03-23 20:43:38 | Diary
さて、とうとう日銀総裁は空席となってしまい、高校野球より先にプロ野球が開幕するなど、よくわからんことになっている今日この頃ですが、金曜に休みをとって四連休とし、里帰り中のヨメとコドモのもとへ行ってまいりました。

うん、やはり家族揃って、というのはいいですね。
何がいいのかは表現しかねますが、あっという間に日が経ってしまいました。
こうやってしばし楽しき時を過ごした直後、仕事のことを考えるのは憂鬱…。
しかも忙しいのに一日休んでしまって、余計に仕事も溜まってるだろうし。
ブルーな夜を過ごしています。
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堕ちていく日本

2008-03-18 22:30:02 | Politcs
日銀総裁、空席確実に…田波氏就任に民主が不同意方針決定(読売新聞) - goo ニュース

要するに、根本的に人材不足だということはよく分りました。
この国に、総理大臣や知事が務まる人間はゴマンといても、中央銀行の総裁を任せられる人材は数えるほどしかいないということなんでしょうかね。

こうなったら白川氏が総裁に昇格するという線しか落とし所はないような気がするんですが、いったいどうなるやら。
ここまできたら、トコトン大混乱に突入しちまえ、という気にもなってきます。
元はといえば、こんな低レベルな政治状況を招いたのも、選挙における「国民の選択」なのだから、このまま世界の笑いものになったとしても、不況で生活レベルが堕ちまくっても、その責めは日本国民が負うべきなんでしょう。

…などと頽廃的なことを言っちまってはいけませんね…。
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風雲急を告げる

2008-03-17 23:10:48 | Economics
日経平均1万2千円割れ、1ドル95円まで円高も(朝日新聞) - goo ニュース

米JPモルガン、1株2ドルでベアー・スターンズ買収(ロイター) - goo ニュース

カーライル・キャピタル社も清算へ(朝日新聞) - goo ニュース

一方で…

政府、日銀総裁人事の再提案できず…民主との調整が難航(読売新聞) - goo ニュース

まさに世界は風雲急を告げる、という感じ。
それなのに日常は何事もないかのようにいつも通り過ぎていく。
何だか不思議だ。
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高橋尚子失速についての世間話

2008-03-15 18:07:27 | Sports
今日は髪を切りに行ってきました。
いつも行ってるところの美容師さんは、マラソンが趣味で、パリマラソンやボストンマラソンなど海外も含めてレース出場経験は豊富。
先月の東京マラソンにも出場して、3時間5分くらいのタイムを記録したそうな。

で、先週の名古屋国際女子マラソンで失速した高橋尚子の話題に。
美容師さんは皇居あたりで練習しているときに、よく彼女に遭うことがあるそうなんですが、以前とはずいぶん変わってしまったとのこと。
以前は一般の人が声をかければ愛想よく手を振ってくれたりしていたのに、最近では無視するようになったらしい。
精神的な余裕を失ってしまったのでは、という話でした。

それと、マラソン選手は体をギリギリまで絞り込むので、女子選手の場合ある程度の年齢を過ぎると生理的な不調が生じる。
結婚して出産したりすると安定が保たれる(言われてみればラドクリフもヌデレバも出産経験者ですね)ので、小出監督はそうすることを勧めたのに、Qちゃんはそれを拒んだ、という話も聞きました。

どこまで本当の話なのかはわかりませんが、小出監督との決別が負のターニングポイントになってしまった、という感じはしますね。
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