そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

北朝鮮に関する「噂」

2017-04-16 10:49:15 | Politcs
北朝鮮がまたミサイルを射ったらしい。
失敗に終わったようだが。

北朝鮮と米国とが、なんらかの形で武力行使の道に進む可能性については様々な意見がありすぎて、何を信じりゃいいのかまったく判断がつかない。
が、大まかな傾向として、専門家ほど武力行使の可能性には懐疑的で、素人に近い「有識者」ほど危機を煽っている感はある。
だけど、Brexitにしてもトランプ大統領誕生にしても、専門家ほど、ありえねーよと言っていたんだよね。
だからますます気持ち悪い。

ところで、今朝の日経新聞コラム「風見鶏」に興味深い話が載っていた。
トランプ政権発足直後、米国が中国に対して、米国への脅威を無くすことを条件に、朝鮮半島の北半分を中国の好きにしてよいという言質を与えたという「噂」があるという。
米国にとって、北朝鮮でクーデタを起こしたり、金正恩を殺害するのはハードルが高いが、よりパイプの太い中国であれば実現性もあるだろう。
そして、金正男の突然の暗殺についても、この米中密約を知った金正恩が焦って実行したのではとも考えられる、と。

虚々実々の「噂」の1つにしか過ぎないが、なんとなく確からしく思えてしまう。
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『三の隣は五号室』 長嶋 有

2017-04-10 23:09:26 | Books
三の隣は五号室
長嶋 有
中央公論新社


久々の長嶋有。

長嶋有は、たしか自分と同い歳なんだけど、やっぱりある程度長い時間を生きてくると、こういう小説を書いたり読んだりすることが心地よくなってくるんだよな、きっと。

主役は、郊外の古アパートの、奇妙な間取りの一室。
この間取りは、実際に著者が暮らしたことのある部屋をモデルにしているという。
1966年に建てられ2016年に取り壊されるまでの半世紀、計13組の住民たちがこの部屋で暮らした生活の断片を紡いでいく。

13組の住民たちの素性は様々だ。
単身者(学生、OL、単身赴任者から、裏稼業の逃亡者まで)が多いが、中には夫婦や家族もいる。
この部屋で生を受けたり、息を引き取った者もいる。
最後の方にはイラン人留学生まで出てくる。

だが、物語の主役は彼らではない。
彼らがこの部屋の変な間取りに戸惑いながらも、その生活環境と折り合っていく様。
部屋の一部に手を入れ、それが後の住民の生活にも影響を与えていく様。
物語はあくまで部屋を軸に展開される。
だから、時系列には進まず、時代を行ったり来たりする。

半世紀もの時間があれば、街の様子も、人々の生活習慣も、少しずつ変わっていく。
住民も入れ替わる。
が、アパートの一室だけはずっとそこにある。
そしてだんだんと老いていって、最期を迎える。

なんとフラットで、ニュートラルな眼差しなんだろう。
人の世の忙しなさに疲れたときに、読むべき小説。
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『トヨタの強さの秘密』 酒井崇男

2017-04-09 23:41:21 | Books
トヨタの強さの秘密 日本人の知らない日本最大のグローバル企業 (講談社現代新書)
酒井 崇男
講談社


Kindle版にて読了。

トヨタはなぜ強いのか?
その秘訣は、「カイゼン」「ジャスト・イン・タイム」などのトヨタ生産方式:TPS(Toyota Production System)にあるとほとんどの人が考えている。

が、著者はそうではないと言う。
TPSに求められている役割は、設計情報を間違いなく実際の製品の形にすること、つまり、製造品質(適合品質)を保証することである。
そして、それを最小の費用かつ、最小の運転資金で、望まれる水準の品質で行う(コピ ー)プロセスを作ることである。
TPSは売れるモノがあった上での話であり、その「売れるモノ」を設計情報として生み出す営みがトヨタ流製品開発:TPD(Toyota Product Development)である。
TPDこそがトヨタの強さをずっと支えてきたのだと。

そして、そのTPDの中心となっているのが、製品の社長である車両担当主査だと言う。
主査は、製品の価値を決める広義の設計者であり、同時に利益に責任を持つ原価企画の責任者でもある。
つまり主査は、製品の価値と利益と実現手段すべてに責任を持っている。
トヨタ内では、生み出される製品が、我々が買う「商品」として価値があり、高く売れるのか売れないのか、あるいは、製品の持つ価値に対して我々がお買い得だと思う価格で提供されるのか、逆に、会社側から見れば、商品の売価に対して、十分に利益が出せる原価構造になっているのか、といったことは、すべて TPDで決められるのだと。

主査は「製品の社長」であり、(本当の)社長は主査の助っ人であるとまで言われている。
主査こそが、利益を設計段階から作り込む存在であると。

だから、他の企業がTPDなくしてTPSだけ真似しても儲からない、そういう失敗例は世の中にたくさんあるそうだ。

TPDで売れるモノを作るために、TPSで資金を捻出して、ますます工場が稼働するようにしていたというのが、TPDとTPSの関係であると。
トヨタというとなぜかTPSばかりが有名になってしまったが、全体のシステムの中で TPSが担っていたのは、売れるモノを生み出すところではなくて、そのための資金捻出のところである。

自分も御多分に洩れず「トヨタ=TPS」だと浅い理解しか持っていなかったクチなので、TPDの話はなかなかに目からウロコだった。
しかも、このTPDを米国企業が取り入れたのがいわゆる「リーン」だそうなのだ。
そのリーンを逆輸入して喜んでいる日本企業は、トヨタという本家本元が国内にいることを何もわかっていない、と著者は不明を断じている。

正直、じゃあ他の企業がTPDを真似できるかというと、クルマのような大量生産品、かつ、世界中で拡販できる商品を持っている企業じゃないとなかなかそのまま当てはめることは難しいかな、という気はする。
だが、主査制度のような考え方は、組織設計や権限設計を考える上では参考になるとは思った。

それ以外のところで興味深かったところを以下備忘のため、引用しておく。

・経済学部ものつくり論で言う「すりあわせ」とは米国のカール・ウルリッヒ教授の言うインテグラル・アーキテクチャとモジュール・アーキテクチャのうち、インテグラル・アーキテクチャを翻訳したものだという。すりあわせアーキテクチャの自動車産業にはすりあわせ型の組織能力のある日本人が向いているなどという議論はもちろん間違いで、自動車はヘンリー・フォードの時代からモジュール・アーキテクチャであり、日本人だからといって、横串の調整機能が得意などというわけではない。TQMの「機能別管理」、会議体、委員会など、特に豊田英二氏らのリーダーシップで取り組んできた横串組織の活動、すなわち、横串の会議体、委員会、前工程と後工程の連携は、日本人だけではなく外国人でももちろんできる。TQMは、設計品質を確保し、製造品質を確保する。TQMはそのためのマネジメントである。

・自動車と違い、パソコンやスマホ、半導体のようなデジタル製品ではすりあわせ力が生かせないので日本企業は弱いなどという議論があったが、それも的が外れていて、パソコンやスマホの設計情報は、すでにインテルやクアルコムのような会社を中心に設計済・企画済であり、日本の家電メーカーはその転写のみ担当している。儲からないのは当たり前である。
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『中国の論理』 岡本隆司

2017-04-02 23:44:53 | Books
中国の論理 - 歴史から解き明かす (中公新書)
岡本 隆司
中央公論新社


世が「嫌中」一色となる中、中国研究者である著者は、自身も中国・中国人が好きか嫌いかと問われれば「嫌い」と答えると言う。
その一方で、こんなにおもしろくて興味をかき立てられる国はないとも言う。
そして、そのおもしろさの源泉を歴史からのアプローチで紐解いていく。

中国的な史書のあり方は「紀伝体」、人物本位で書いた歴史。
客観的事実ではなく、個人個人の事績でドグマを説明しようとする。
その根底には儒教的な思想がある。

そして、上下分離の社会構造。
かつての貴族制は、唐宋以降、科挙を土台にした官僚制へと変わる。
いずれにしても、「士」と「庶」の厳然たる峻別が社会構造を規定する。

さらに、独特の空間認識。
「天下」とは天子が治める範囲を指し、「華」と「夷」から成る。

19世紀に西洋列強の進出によって試練の時を迎え、20世紀の「革命」の時代を経て、21世紀の今、政治大国・経済大国として存在感を高めている中国。
だが、その根底を枠づける社会構造、論理枠組の本質は変わっていないという。
たとえば、人民の間の経済格差がとてつもなく大きいことは、士・庶隔絶の上下乖離構造を引きずっている。
また、理想やイデオロギーを考証・叙述の前提・目的としてしまう論理枠組みは、歴史認識の問題として顕在化する。
そして、南シナ海・尖閣・チベット…中国が数多く抱える領土問題は「華・夷」秩序の反映である。

こうして見ると、複雑怪奇で理解不能に思える彼の国も、その実、単純なのだなと思えてくる。
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