そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「レスラー」と「勤労の義務」

2009-06-30 22:18:42 | Society

山崎元氏がブログで、ミッキー・ローク主演の映画「レスラー」を枕にして「働くこと」について書いています。

「レスラー」を観て仕事の意義を考えた(評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳」2009年6月29日)

「レスラー」は自分も観ましたが、なかなかいい映画でした。
感想はCinemaScapeに書いてます。

さて、山崎氏のエントリは、玄田有史氏と湯浅誠氏の対談への考察に展開されます。

  玄田・湯浅対談に話を戻すと、湯浅氏の「日本社会は働くことが人々のアイデンティティーになり過ぎている」という指摘は正しい。失業の際の喪失感が異様に大きいし、仕事を失うと自分を失ったように思うことが多いというのもその通りだろう。付け加えると、世間も、失業者・無業者に厳しい。こうした社会的な価値観は解毒する必要がある。
 働くことは大切なことかも知れないが、本人は好きで働いているのだから殊更に立派なことではないし、働かずに食えるなら、それはそれで大したものであって、他人がとやかく言うべきものではない。

この点については自分も基本的に同意見です。
自分自身は「仕事をせずに暮らしたい」と思ったことはありませんが、働いていない人間を極端に特別扱いする価値観は、社会を過剰に息苦しくさせるように思います。

ところでふと思ったのは、そういった価値観は日本国憲法にも反映されているのではないか、ということ。
「国民の三大義務」とは、納税の義務、教育の義務、そして勤労の義務であると、誰もが習います。
納税の義務はよく分かる。
教育の義務もまあ分かる。
だけどよく考えると勤労の義務というのは実質的には意味はない。
働いてなくても別に罰せられるわけではなし、要は精神論なんではないかと。
で、精神論であるからこそ、「働かざる者食うべからず」的な価値観を広く一般に浸透させるのに一役買っているわけです。

湯浅氏も、おそらく氏を応援しているであろう護憲政党も、この点についてはどう考えているんだろう?

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「タンノイのエジンバラ」 長嶋 有

2009-06-29 23:07:04 | Books
タンノイのエジンバラ (文春文庫 (な47-2))
長嶋 有
文芸春秋

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「タンノイのエジンバラ」「夜のあぐら」「バルセロナの印象」「三十歳」の4編収録した短編集。
大傑作、とはいかないまでもいずれも秀作揃い。
個人的には「三十歳」が一番好き。

長嶋有の小説は、情景が在り在りと目に浮かぶところがいい。
しかもその情景は何の変哲もない平凡な街だったり建物だったり部屋だったりする。
風景が人の生活や人生と結びつき、情景となる。

「三十歳」に、パチンコ屋の屋上のシーンがあります。
これがいい。
パラレル」にも屋上の場面があったけど、ビルの屋上という場所は、世間から疎外されているようで離れきれない、むしろ世間を俯瞰して眺めてしまったりする、独特の雰囲気をもった空間で、それが小説の雰囲気とばっちり合っています。

もう一つの特徴は、「家族」が描かれていること。
家族、中でも親子や兄弟姉妹といった、子供のころからひとつ屋根の下暮らしてきて、大人になるにつれ何時の間にか「ずれ」が生じてしまったような、微妙な心理的距離を描くのがとても巧いと思います。
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ウラもオモテもない男

2009-06-25 23:25:58 | Politcs

ダイヤモンド・オンラインで、上杉隆氏が鳩山邦夫前総務相について書いています(上杉氏は鳩山氏の元秘書)。
これがなかなか面白かった。

「元秘書の立場から、鳩山邦夫という政治家を語ろう」週刊・上杉隆2009年6月25日

 この頃、筆者は軽井沢に向かう車中で、鳩山氏にこう尋ねた。

 「仮に、明日死ぬとして、政治家としてひとつだけ好きなことを実現させてやると神様に言われたら、代議士は何を望みますか?」

 鳩山氏は、後部座席で「う~ん」としばらく考えていた。その答えは、完全に筆者の予想を覆すものだった。

 「総理大臣」「都知事就任」などと言うとばかり思っていた。だが鳩山氏はゆっくりとこう語ったのだ。

 「日本中の道路や河岸のコンクリートを全部ひっぺがえして、緑にしたいなぁ」

 今回の日本郵政の問題でもそうだが、政治記者やテレビのコメンテーターは、鳩山氏の発言のウラに、何らかの政治的思惑を見つけようとする。

 だが、それは大抵外れることになる。なぜなら、この通り、鳩山邦夫という政治家は、言ったまま、見たまんまの正直な人物だからである。

郵政問題の経緯をみても、この人がどんな行動原理で動いているのかサッパリ分からんかったけど、それもそのはず。
ウラを読もうにも、ウラもなければオモテもない人物だったようですな。
その意味では稀有な政治家、と言えるのかもしれないし、一定層に人気が出るのも理解できなくもない。
しかし、こういうタイプがまかり間違って宰相になることがあったりしたら、そのときは日本はかなりヤバい国になってそうだなぁ。

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「治療をためらうあなたは案外正しい」 名郷直樹

2009-06-21 22:29:22 | Books
治療をためらうあなたは 案外正しい EBMに学ぶ医者にかかる決断、かからない決断
名郷 直樹
日経BP社

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病気を特定し早期発見するために検査を受ける、治療のために薬を使ったり手術を受けたりする、これらは当たり前の常識だと考えがちですが、よくよく考えるとそうでもないかもよ、という本です。

検査には偽陽性・儀陰性ということがあり得るので100%の診断ができるわけではない一方で、身体に負担がかかる。
薬には副作用があるし、手術のリスクは大きい。
そして、いずれについても経済的なコストが発生する。

統計的には、検査で病気を早期発見し、適切な治療を受ければ、病気で死ぬ確率を減らすことができるとしても、個々のケースを見れば、検査して治療しても死んでしまう人もいれば、検査も治療もしなくても結構長いあいだ生き続ける人も意外に多い。

EBM(evidence-based medicine)」という考え方に基づき、臨床データを元に、診療が具体的な数値としてどれほどの効果を上げているのか紹介していきます。
例えば、高血圧を薬で治療すると脳卒中になる確率を10%から6%に減らすことができるというデータがあるそうです。
これを「脳卒中になる危険を4割も減らすことができる」と捉えるのか、「100人中4人しか救うことができない」と捉えるのかは微妙なところ。
もちろん何のリスクもコストも発生しないのであれば当然治療したほうがよいに決まっているけど、副作用もあるしお金もかかる。

勿論、著者自身医者なので、検査や治療なんて役に立たないから係らないほうがいいと主張しているわけではありません。
患者自身の価値観で人生全体を考慮に入れた上で、治療のメリット・デメリットに関する情報をもとに総合的に費用対効果を考えて判断したほうがよい、という話です。
この本で紹介されているデータをどこまで信用していいのかすら分からないし、いざとなったら医者にすがるしかない患者の立場からすると実際には賢明な判断をするのはなかなか難しそうですが、こういう考え方を頭に入れておくのは悪くないなと感じました。

自分が一番印象に残ったのは癌の発見・治療に関するこんな例え話。
癌は早期発見が一番、というのは統計的には正しいけれども、早期癌患者の半分以上は5年経っても進行癌になっていないというデータもある。
人間ドックで早期癌を発見してすぐに胃を切除すれば癌を完全に切り取ることができるが、仮に発見が5年遅れたとしても進行癌になっていない確率は意外に高い。
5年遅れで胃を切除し癌を完全に切除できたとしたら、結果的に前者のケースよりも5年長く完全な胃で過ごすことができたことになる。
そう考えると、早期発見が必ずしも幸せをもたらすとも言い切れない…
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エコポイント買い替えは得策なのか

2009-06-20 21:35:51 | Economics
エコポイント交換商品発表 第1弾271件(産経新聞) - goo ニュース

我が家はいまだにブラウン管のアナログTVなので、普通に考えればエコポイントが付与される来年3月までに買い替えたほうがよい、となりそうですが。
しかし、よくよく考えてみると、エコポイント付与期間が終了したら一気に需要が冷え込んでTVが売れなくなり、家電量販店が値下げとかしそうな気もします。
そう考えると、高値づかみさせられそうなエコポイント期間に焦って買わない方が得策かも。
さて、どうするか。
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分からんことだらけの日本郵政問題

2009-06-19 00:08:05 | Politcs

「かんぽの宿」売却に始まった鳩山前大臣vs西川日本郵政の対立問題は、どうもよく分からないことだらけ。
このブログに何回か書いたとおり、自分はそもそも発端となった「かんぽの宿」売却に対する鳩山前大臣の批判はかなり乱暴なもので、到底納得しかねると思っています(収益を生まない資産に安い値段しかつかないのは当たり前)が、一方で日本郵政側の売却手続きに不透明な点があるなら、それはそれで問題だと思う。

よく分からないのは、鳩山氏も西川氏もどうしてこれほど意固地なまでに退く姿勢を見せないのか、ということ。
鳩山前大臣は、巻き返しを図る旧郵政勢力と結託し、利用されているのではないかという気はするものの、彼自身にそこまでする理由があまりないような気がする(特に郵政族というわけではないようだし)。
また、巷間言われているように、これが小泉構造改革路線の推進派と否定派の路線対立・抗争だとして、政治家でもない西川氏がここまでボロクソ言われて、地位に留まり続ける理由もよく分かりません。
やっぱり美味しい利権があるのではないか、と穿った見方をされてしまうのもある意味仕方がないのでは、などと考えてしまいます。

…といった印象を持っていたら、ダイヤモンド・オンラインで山崎元氏が同趣旨のことを書いていました。
西川・日本郵政社長は、本当に辞めないつもりなのか?(山崎元のマルチスコープ2009年6月17日)

同コラムでは、以前にもこの問題が採り上げられていましたが、この記事がなかなか秀逸。
頭の整理をするのにかなり役立ちました。
「かんぽの宿」勝負は西川社長の負け。但し、勝者は“総務省”(2009年4月8日)

特に卓見だなあと思ったのが以下の部分。

 それにしても、今回の問題の大元は何だったのか。ここから先は少し推測が混ざるが、恐らく「かんぽの宿」は、従業員の雇用を重視したことで、売却条件が悪くなったのではないだろうか。

 個別に売った方が高く売れたが、従業員の雇用をより広く、より長く保ちたかったということが優先したのではないか。メルパルクの事業譲渡の問題にも同様の傾向が見てとれるが、これが「日本郵政側の本音」だったようだ。そしてオリックスがこの本音を(新組織のポストも含めて)一番よく満たす相手だったというのが現実的なところではないのか。

 雇用へのこだわりは、総務省側にもある。日本郵政は従業員の雇用を重視してオリックスを選んだと言っているが、一方の総務省もオリックスへの売却について十分な雇用確保が達成されているとはいえないとし、競合相手の条件のほうがいいように見えると指摘している(読売新聞の記事による)。つまり、両者とも雇用維持に高い優先順位を付けている。

 率直に言って、筆者は、この雇用維持への過剰なこだわりが、今回の問題の大元にあると思う。むろん、通った法律には、雇用に留意するという付帯条件が付いているし(雇用を未来永劫守れとは書かれていないが)、雇用に手を付けると事前に宣言していたら、現場の抵抗で、郵政民営化自体がうまくいかなったのかもしれない。当時者として民営化に苦労した人なら、そう言うのかもしれない。

 ただ、雇用の現状維持が一つの保証条件のような形になっていることが、民営化の不徹底を招いているのではないか。業績次第でリストラも減給もある民間企業のスタンダードとはあまりにもかけ離れている。これでは、郵政民営化は形だけの民営化で、実質的には「親方日の丸」の無駄を、そのまま国民に転嫁しているのではないか。「雇用を重視したから、売却条件が悪くなった」という言い分の意味はそういうことだ。

ところで、麻生首相は何ゆえ鳩山氏を切ったんですかねぇ。
小泉・竹中サイドの巻き返しが利いたと言われているけど、麻生さんにそれに乗る義理はないはず。
それで支持率落してますます窮地に陥ってるってんだから。
単に情勢が読めない、判断が悪いということなのかもしれないけど、まったくもって分からんことだらけですわ。

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国際通貨のワナ

2009-06-16 22:00:06 | Economics

ちょっと日が経ってしまいましたが、13日(土)日経新聞朝刊コラム「大機小機」より。
文責は「富民」氏。

そして国際通貨のワナである。基軸通貨国は自国通貨を印刷し繁栄を享受する特権があるが、貨幣が増えすぎると通貨の下落に見舞われる。ブレトンウッズ体制の発足以来、米国の1人当たり国内総生産(GDP)は29倍になったが、ドルの下落で金換算では65年前の45オンス、国民が1年間働いて買える原油も1人当たり約700バレルに戻った。

我が国は貿易取引の大半がドル決済のため、輸出で稼いだドルを円に換金して持ち帰れば円高になって輸出競争力を失う。 ドルのまま海外に預けておけば、輸出代金が国内に還流せず、いくら輸出しても豊かになれない。変動相場制への移行して以来、35年間で日本の1人当たりGDPは4倍になったが、金換算では約40オンス、原油も同約600バレルとほぼ元の水準に戻った。

素人ながら、ちょっと疑問なのは、金や原油をどれだけ買えるかという尺度だけで「豊かさ」を測れるのかどうか。
金や原油のような有限の資源価格が貨幣供給量?に比例して上がっていくというのは、直感的にそういうものかなという気がするんでするが、金や原油以外のモノやサービスを買える量が増えていれば、それはそれで「豊かになった」と言ってしまえるのではないかな、と。

コラムの結論は、基軸通貨国アメリカの特権乱用により「国際通貨のワナ」に陥っている状況を打開するために、円の国際化を進め、円による国際決済比率を上げるべき、との主張。
だけど、円の国際化って簡単に言うけど、どうやったら実現できるんですかね?
日本からの輸出の決済を円で行なうようにするってこと?
そんなこと輸入国側で簡単に受け入れてもらえるんでしょうか。

それに、上記の引用部分にあるように、基軸通貨国も非基軸通貨国もいずれも豊かになれないというのが正しいとしたら、円の国際化が果たして解決策たりうるのか、そのへんがいまいち理解できませんでした。

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三沢の死

2009-06-14 23:11:27 | Sports
三沢さん悼むテンカウント、涙のファン 福岡で「ノア」(朝日新聞) - goo ニュース

最近では特にプロレスファンというわけではないのですが、やはりこの話題には触れずにはいられない。
リング上での不慮の事故というのはけっして珍しくない世界であることは分かってはいるものの、よりによってあの三沢光晴が、しかもバックドロップという王道中の王道の技を受けて…というところに何だか本当にプロレスと心中したような印象で、表現する言葉も出てこない感じです。
先週だったか、日経新聞夕刊のスポーツ面で、たまたま同姓の新日本プロレス三沢威氏(彼もリング上の事故でレスラー生命を絶たれた)が特集で採り上げられていたのを読んだばっかりだったこともあって、なんだか妙な感慨があります。

自分の場合、プロレスを最も関心があったのが、小学校の高学年の時期、83~85年頃。
当時、三沢は全日本の若手のホープで、ちょうど海外武者修行から帰国して2代目タイガーマスクとして売り出した頃でした。
その後、プロレスからも関心が次第に離れてしまったので、彼が全日本のエースになっていく過程はあまり知りません。
ノアを立ち上げた直後くらいの頃、プロモーションもあってかテレビのバラエティ番組に出ているのを何回かみて、意外なお茶目ぶりにちょっと驚かされたことを憶えています。

合掌
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「市場の変相」 モハメド・エラリアン

2009-06-13 23:39:28 | Books
市場の変相
モハメド・エラリアン
プレジデント社

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正直、今の時点で読むと然程新鮮なことが書かれているわけではないのですが、確かにこれがサブプライム問題序盤の2007年末に書かれたことを考えると、その慧眼には感心させられるし、冷静で客観的な語り口で大局的に展開されるパラダイムシフトへの考察は説得力に満ちており、各方面で高く評価されたことにも納得させられます。

著者は、今の経済社会に起こっている事象を、「昨日の市場」と「明日の市場」との衝突として捉えています。
米国を中心とした先進国のみが実質的なプレーヤーであった世界は、新興国の存在感が重みを増すことで急速に様変わりする一方で、金融商品の高度化により投資の常識が覆される。
「昨日の市場」で通用していたセオリーは、「明日の市場」では機能しない。
仮に「明日の市場」の姿を見通すことができたとしても、そこに至る通り道では経験則に頼り過ぎ「ブラックスワン」の罠に陥るリスクが頻発する。

著者の現職は債券運用会社ピムコのCEOですが、IMFでアナリストの経験もあるということで、本の中では投資家・政策担当者・国際機関といった各プレーヤー向けの指針も示されます。
自分はこのへんには直接携わるものではないので、そんなもんかと思いつつ読むだけでしたが、例えば、「ノイズの中からシグナルを見つける」ことの重要性(「緊急ではないが重要なこと」「緊急ではないが重要なこと」を見極める)や、テールリスクを如何に切り捨てる判断をできるか、など一般的に参考にできるような話も多々盛り込まれています。
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HVかEVか

2009-06-12 00:18:40 | Economics

車離れして以来、ますます車事情には疎くなってしまったのだけれど。
プリウス、インサイト人気で注目のハイブリッド車。
が、ハイブリッド車を超えて一気に電気自動車へのパラダイムシフトが進むのではないか、という見方もあるみたいです。

昨日(10日)、今日(11日)と日経新聞朝刊「経済教室」は「クルマ近未来」の特集が組まれていました。
10日の村沢義久・東京大学特任教授は、電気自動車が今後の主役になるだろう、という見方。
そしてそのことが産業の大変化をもたらすだろうとの見解。

しかし、進化の行き着く先である電気自動車の時代には、状況は一変する。極端にいえば、モーターとバッテリーさえあれば走れるため部品点数が大幅に減少し、開発コストも削減される。モーターとバッテリーは汎用性が高いため調達は難しくない。これらの要因のため、新規参入がはるかに容易になるのだ。それが、「素人集団」テスラ・モーターズの大成功につながった。自動車産業に劇的なパラダイムシフトが起きているのである。

電気自動車の一歩手前のプラグイン・ハイブリッドでも同様である。中国やカリフォルニアの新参メーカーが採用する「シリーズ・ハイブリッド型」はモーターだけで走る仕組みで、電気自動車に「航続距離延長装置」としてエンジン駆動の発電機を付加したコンセプトであり、構造的にも簡単である。

<中略>

ここに、大手メーカーにとってのジレンマがある。シリーズ・ハイブリッドの採用も電気自動車の導入も難しいことではないが、それは、自らが長年にわたって培ってきたガソリンエンジン技術の放棄を意味するからだ。しかし、方向は決まっている。問題は、いつ決心するかである。

旧来型の自動車産業が、既得権益を守る立場になるということか。
米国のGM、クライスラーの救済をみると村沢氏が「いつ決心するかである」と語るほどパラダイムシフトは簡単なことではないような気もしますが。

電気自動車の普及に向けた最大の課題は、やはり電源の確保と電池の性能みたいです。
11日同欄の松島憲之・日興シティグループ証券マネジングディレクターは、当面ハイブリッド車が優勢との見解。

アゴラにも、本件に関するエントリがありました。
日本は国策としてEV(電気自動車)産業にコミットするべき(後編:HV vs EV)-小川浩

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