そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

大学は被害者なのか?

2011-02-28 23:50:58 | Society
京大の入試でYahoo!知恵袋を利用した”ソーシャル・カンニング”が行われた件については、謎が多いこともあって各方面でいろいろと憶測を呼び、なかなか興味深いことになっています。

自分も、最初にこのニュースをきいたときは、こんなに簡単に足がつくようなことするなんてなんとアホなんだろうと直観的に思ったんですが、よく考えればYahoo!にも携帯電話会社にも守秘義務があるので、単に大学が開示要請をしたところで情報提供されることはない。
強制捜査するには警察権力が必要、ということで大学側が被害届を提出、偽計教務妨害の疑いで捜査という事態になっているわけです。

♯本件に偽計業務妨害罪を適用することについての論点は、以下のブログで解説されています。
京大入試問題と「偽計業務妨害罪」(ビジネス法務の部屋)

簡単に足がつく…と思ったんですが、京大以外にも早稲田・同志社・立教でも同じ手口でカンニングを実行しており、京大の件で芋づる式に発覚するまではバレていなかった、ということのようです。
どんだけ手際よく実行したのか、外部に協力者がいたのか、などの詳細はわかりませんが、ここまで容易にカンニングが成功している事態をみるにつけ、大学側の試験監督体制にも相当な問題があるように思えてきます。

この点については高等遊民氏がブログに書いていますが同感です。
入試問題ネット流出事件、犯人の功績(高等遊民のブログ)

大学入試の監督官なんて、大学の教員が駆り出されて嫌々やらされてるんでしょうけど、教室のキャパシティに比して監督官が少なすぎて目が行き届かなかったり、そもそも監視する気もなかったり、ってのが実態なんでしょう。
カンニング事件で信頼を失うのは大学側なわけで、自分たちがしっかり監督してなかったからブランドに傷がつくというのは自業自得のように思います。
被害者面して警察に被害届ってのも違うだろって感じです。
携帯持ち込み禁止だの、金属探知機でチェックだのって話も出てるみたいだけど、真っ当に試験監督してれば防げるんじゃない?

それにしても今回の行為、苦労して(ないのかもしれないけど)ネットにアップしたところですぐに回答がつく保証がない一方で、カンニングが見つかるリスクは大きいわけで、結局のところハイリスク・ローリターンな戦術のように思います。
ホシは、やっぱりあんまり頭よくないのか、それとも愉快犯なのか、どっちかでしょうか…
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成功への道は一つではない

2011-02-27 23:47:46 | Sports
世界選手権は有給休暇で…川内選手は公務員(読売新聞) - goo ニュース

東京マラソン、川内くんの快走はたいへんエキサイティングでした。

不確実性が高まっていく世の中、若い人たちは「他人と同じことをする」ことで身を守ろうとしているように言われていますが、それは逆だと思う。
他人と同じことをしていると埋没するリスクが増すだけ。
いかに「他人と違うか」を見せられるかが厳しい時代を生き抜くポイントだと思う。

成功への道は何通りもある。
川内選手はよいロールモデルを演じてくれています。
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「ビジネスで一番、大切なこと」 ヤンミ・ムン

2011-02-19 22:24:14 | Books
昨日書いた記事にも関係する内容の本。

ビジネスの世界では、どの企業も競合他社との競争に勝ち抜くために、競合との差別化をはかることに全力を尽くす。
ところが、競争のレベルが進めば進むほど、競争している当事者たちが「差別化」だと思っているものが、消費者からみると取るに足らない瑣末な違いにしか見えなくり、その結果消費者はブランドを意識しなくなる。
市場ニーズや競合比較のリサーチを綿密にやって真摯に改善をすればするほど、他社との違いが不明確になるという逆説。
それが現在の先進市場で起こっている状況。

自らマーケティングの専門家である著者は現況をそのように捉えた上で、「例外」として差別化に成功している企業の実例を3つの類型に分けて紹介します。

「リバース・ブランド」
カテゴリー内の拡張傾向に逆行して顧客への便益の提供を削ぎ落してシンプル化する。
Google、IKEA、ビジネスクラスや機内食の無い航空会社ジェット・ブルー、など。

「ブレークアウェー・ブランド」
カテゴリーの境界を飛び越えることで消費者の分類プロセスを切り崩す。
『ペット』としてのAIBO、『日常のファッションアクセサリー』としてのSwatch、など。

「ホスタイル・ブランド」
消費者に媚びず、あえて高感度に背を向ける。
味の不味さや成分に対する懸念を武器にするレッドブル、不快感をもたらすことを恐れないベネトンのキャンペーン、など。

ただし、著者は上記のようなフレームワークとして'How to'として提供することをこの本の目的とはしていないようです。
「差別化とは手段ではない。考え方だ。姿勢であり、傾聴や観察、吸収、尊重から生まれる。それは何よりも、取り組みなのだ。」…と結ばれています。

書かれている内容は真っ当だと思いますが、いわゆるブルー・オーシャン戦略だとか、楠木健さんの著作で書かれていることとも重なるので、新たな知見を得られたというほどではありませんでした。

ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
ヤンミ・ムン
ダイヤモンド社
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最強市場とオーバースペック問題

2011-02-18 23:25:33 | Economics

高等遊民さんのブログを読んでの感想。

日本市場こそが経済大国日本のコアコンピタンスである(高等遊民のブログ)

総論同意ですが、いわゆるオーバースペック問題はやはり軽視はできないのではないでしょうか。
ガラケーが典型だけど、3Dテレビだって明らかに要らないオーバースペックだし(だから売れてない)、コンビニに溢れる商品もその中で本当に欲しいものが果たしてどれだけあるのか。
寸分遅れることのない鉄道ダイヤや全国に時間指定で届けることができる宅配便にしても、外国人は感動するだろうけど、自国でそこまでのスペックを求めるだろうか…

消費市場を維持・拡大することの重要性にはもちろん同意しますが、需要側が強すぎて、供給側がそれに迎合してしまうだけになっちゃうのは問題。
オーバースペックを提供するために酷使される労働者は疲弊し、ひいては消費市場の縮小につながっていく。

では、オーバースペックを起こさないためにはどうしたらよいか。
難しい課題ですが、需要側は提供される商品やサービスの裏にあるコストに思いを馳せること、供給側はマーケティング力を磨いて要らんものを売らないこと。
市民が賢くなるしかない。
つまるところは「教育」でしょうか。

日本人の持つきめ細かさに、戦略的思考が身につけば最強なんですがねえ。

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バカとズルとワル

2011-02-18 22:28:30 | Politcs

またまた溜池通信さんが傑作だったので、ご紹介。
2月17日「かんべえの不規則発言」から。

○以下はある兄弟の歴史である。

1996年:「バカ」と「ズル」の兄弟、天下を目指して旗揚げ。以後、「バカ」と「ズル」が代わる代わる組織のトップを務め、組織は少しずつ発展。

2003年:いつまでたっても天下が取れないことに気づき、外から「ワル」とその仲間を招聘する。

2004~2005:「ワル」は神妙にしている。

2006年:仲間の自爆が相次ぐ。このままでは天下は取れそうにない。万策尽きて、「ワル」に代表をお願いする。

2007~08年:「ワル」の下で組織は快進撃を続ける。「バカ」と「ズル」は、「ワル」に心服する。

2009年5月:「ワル」が自爆。自分の言うことを聞きそうな「バカ」を代わりに据える。

2009年8月:「バカ」が戦いで大勝利を収め、とうとう天下を取る。

2010年6月:案の定、「バカ」が自爆。トップを降りるついでに、「ワル」を道連れにしたら拍手喝采を浴びる。「ズル」がその後を継ぐ。

2010年9月:我慢できなくなった「ワル」が「ズル」に挑戦する。ここでなぜか「バカ」は「ワル」の味方をするが、やっぱり「ズル」が勝利。

2011年1月:「ズル」は我が身を守るために「ワル」イジメに精を出す。「バカ」はまたまた「ワル」の味方をする。

2011年2月?:「ズル」に対する怒り収まらず。「ワル」と「バカ」、組織を割る構え(←今ここ)。


○この三兄弟(トロイカ体制とも呼ばれる)の物語、そろそろ終わりにしてほしいです。あまり生産性が高いとは思えませんし。しかし、こうやって振り返ってみると、いちばん罪が重いのは「バカ」ですな。

こういう辛辣なの書かせると、かんべえ氏は相変わらず絶品です。

いちばん罪が重いのは「バカ」というのも同感ですが、その「バカ」がスポンサー(金ヅル)だったってのがそもそも不幸の始まりですな。
「ワル」は知ってたけど、「バカ」と「ズル」については野党時代はここまでとは思ってなかった。
政権交代はいろんなことを焙り出してくれるものです。

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「一週間」 井上ひさし

2011-02-16 22:05:46 | Books
極寒と恐怖に支配されたシベリア抑留のシリアスな状況が継続するにも関わらず、コミカルな空気が通底。
その軽妙さが却ってブラックな妙味を生んでいます。
惨い私刑だとか拷問だとか、会話の中には登場するけど、登場人物が直接そういう目に遭う場面が描かれないことがポイントなのかも。

それにしても、軍国主義と共産主義の欺瞞に対する強烈な嫌悪感が小説全体から横溢している感じで、井上ひさしという作家の生き様が滲み出ている点では遺作に相応しいと言えるように思います。

もともと文芸誌へ連載された作品で、単行本化にあたり加筆・修正が予定されていたところ、著者の逝去により叶わなかったという事情があるとのこと。
全体の整形がされていればさらにエクセレントな出来栄えになったろうに…と思う一方、この荒削り感が小説の雰囲気には合っていると言えるのかもしれません。

一週間
井上 ひさし
新潮社
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テレビから時代劇が消える

2011-02-12 11:20:03 | Entertainment
今日の日経新聞朝刊終面文化欄によれば、地上波テレビ放送から時代劇が消えつつあるとのこと。
時代劇制作スタッフの後継者育成が問題になっているそうな。

その一方でCS放送の時代劇チャンネルは契約者・視聴者を増やしており、近年は日本映画でも時代劇の興隆が目立つ。
年配者中心に時代劇人気に衰えが出ているわけではないようです。

地上波テレビで時代劇枠が減り始めたきっかけは、世代別視聴率が導入されてからとのこと。
消費意欲が相対的に低い高齢者層が視聴者の中心であることが可視化されスポンサーから敬遠されるようになった、という事情のようです。

こうして、地上波テレビは女性や子供に受けのいい同じような番組だらけになり、”消費力”の低い年寄りや男性は見る番組がなくなってテレビ離れする、という現象が起きているわけですね。
困ったもんだ。

でもまあ時代劇専門チャンネルの例が示す通り、CMに支えられた地上波放送から締め出された層が有料放送に移行していく過程、と捉えることもできるのかもしれません。
テレビCMで頻繁に流れるような一般消費財に金を遣わない分、有料放送に金を払うというのはあながち合理的な構造なのかなとも思います。
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モラルよりもシステム

2011-02-07 23:25:15 | Society
無期限中止「最大の汚点」大相撲が消える(日刊スポーツ) - goo ニュース

理事長の「膿を出し切るまで相撲は見せられない」なんてセリフを聞くと、そんなこと言っちゃっていいの?とハラハラしちまいます。
何度も言うけど、経済的動機がある限り星の融通し合いは根絶できないし、そもそも「根絶した」と証明することは不可能に近い。
『ある』ことを証明するのは容易いけど、『ない』ことを証明するのは極めて困難なのです。

そりゃ、これだけの騒ぎになりゃ、しばらくの間は怖くて八百長なんてやる勇気のある力士は出てこないだろうけど、時間がたてばだんだん緩んでくる。
吊るし上げと見せしめによる粛清では根本的な解決にはならないし、ずっと監視を続けていたらコストがかかってしまってやってられない。

必要なのはモラル頼みではなく、仕組みを作ること。
番付システムや報酬・待遇のスキームを組み替えて、八百長しても意味がなくしてしまうしかない。

結局、そこそこの成績を長く続けていればそれなりの地位を維持できるという今の番付システムに原因がある。
例えば、こんなふうに変えてみるのはどうだろう。

・入幕して一定期間(2年とか)たっても三役に上がれなかったら、地位を失って三段目からやり直し。
・関脇、小結になって一定期間たっても大関に上がれなかったら、地位を失って幕下からやり直し。
・大関になって一定期間たっても横綱に上がれなかったら、地位を失って十両からやり直し(今の温いカド番制度は廃止)。
・やり直し三度目で引退勧告。
・大関・関脇・小結の枠は今よりも多少広き門にする。

さっきちょっと考えて思いついた案なので穴だらけだけど、そこそこの成績を続ける力士よりも顕著な成績を挙げる力士を優遇してスピード出世を促進する方向がよいのではないかと。
要は流動性が低いのが今の仕組みの欠点で、だから談合体質が生まれる。
この点日本の雇用慣行と同根だなあと改めて思うのであります。

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「未来の売れ筋発掘学」 大澤幸生ほか

2011-02-04 16:38:21 | Books
副題は「データマイニングを超えた価値センシングの技術」とあります。
「価値センシング」とは、消費者の言葉や行動など現に存在している情報から、目に見えない潜在的なニーズや価値要求を感じ取り、発掘すること、とでも云えばよいでしょうか。
単に過去のデータの延長線上でITを用いて予測する技術とも違っていて、未来の売れ筋を発掘するのはあくまで人間の感性・センスであり、ITはそれを補助するためのツールでしかない、というスタンスです。
価値センシングは、「思い出す」→「こと語る」→「高め合う」→「感じる」というプロセスをぐるぐると回すことで実行され、各プロセスごとに著者の研究室が開発したツールや技法が紹介されます。

マーケティングの本なのかな…と思って読み始めたのですが、思いのほかアカデミックな内容で、理論と研究成果の紹介が中心になっています。
そんなに難しい理論が語られているわけではないし実例も豊富に登場しますが、実際にツールを使ってケーススタディを体験してみないことには、文字と簡単な図表だけではなかなか全容をイメージするのは難しいなというのが正直なところです。

以下、日常の生活やビジネスに活かせるかもと思ったところを部分的にピックアップ。

・「書く」ことによって価値センシング能力は向上する。
例えばブログは他人に読まれることをどこか意識して書き留めるものであるがゆえ、書いているうちに自他に心情的な接点があることを改めて感じるようになる。
自分と外側の世界の間に確かな関係性があることに気づき、様々な物事や出来事の価値への意識を高めていくことである。
本の中では書かれた文章をキーグラフというツールを用いて構造化・可視化することでさらに価値センシングが発揮しやすくする手法が紹介されているのですが、ただ書くだけでもセンシング向上につながるという見解には共感します。
だからこそこうして細々とブログを続けてたりするのですが。

・「アホ発言」にこそ価値が潜んでいる。
会話の中で唐突に発せられ、他の会話者から反応されず放置されてしまう発言を、この本では「アホ発言」と呼んでいます。
会話の中から「アホ発言」を選別する条件を定めてコンピュータで解析してみると、周りの人に受け容れられず放置された発言にこそ日頃感じていながらその価値が未だ具体化されていない潜在的な価値がありそうなことが分かってくる。
これはちょっと目から鱗でした。

未来の売れ筋発掘学
大澤幸生/東京大学工学部
ダイヤモンド社
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壮大な八百長

2011-02-03 23:59:50 | Society
官房長官、相撲協会の公益認定困難=首相「八百長は国民への背信」(時事通信) - goo ニュース

賭博に絡んでるなら犯罪だが、八百長自体は違法行為でも何でもない。
単なる経済取引。
高い番付を維持することで利得を得ることができるシステムになっている以上、星を融通し合うことで相互利益が生まれる。
経済的動機が存在する以上、八百長が行われてたとしても全くもって不思議はない。

30年以上相撲を観ているけど、7勝7敗のカド番大関が千秋楽で負けるケースはまず見たことがないし、7勝7敗の力士と8勝6敗の力士が対戦した場合前者が勝つ確率はかなり高い。
合理的に考えれば当たり前のこと。
そこで星を譲っておけば、次に逆の立場になったときにお返しをしてもらえる。
そんな相互扶助、社会で普通に行われている。

だからといって相撲の取組がすべてインチキでシナリオが決まっている、とも思わない。
そんなことしたら却ってコスト高になる。
ただ、特定の場面では八百長したほうが得になるケースがある、というだけのこと。

それくらいのこと、ある程度合理的にものを考えることができる人間なら簡単に想像がつくはず。
だけど、この国では、そういう真理には口をつぐんで「けしからん」と怒ってみせることが「正しい」態度とされているらしい。
「正しい」政治家や「正しい」マスコミは相撲協会を糾弾し、「正しい」国民はそれを支持する。
その周りでサイレントマジョリティが白けて傍観している。

国技の名を汚す、などというが、国技なんてどこかに明文化されて規定されているわけでもない。
みんなが国技だと思えば国技だし、国技じゃないと思えば途端に国技ではなくなる。
たいした意味はない。

相撲協会が公益法人なのは、江戸時代からの伝統文化を継承しているから。
八百長してたら公益に反するなんて誰が決めたんだろうか。

なんだか国全体で壮大な八百長をやっている。
滑稽。
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