私はいったい、何と闘っているのか | |
つぶやきシロー | |
小学館 |
芸人が書いた小説としては、これまで読んできた劇団ひとり、太田光、又吉直樹らのものと比べても、個人的には一番面白いんじゃないかと思う。
ごく平凡な小市民の煩悩や間の悪さを可笑しみをもって描いていくあたり、芸人としての著者の芸風そのものだが、あくまで優しさで包み込んだテイストになっているのがよい。
特に、主人公の家族との意外な関係性が解き明かされる中盤の展開にはよい意味で意表を突かれるし、それが終盤に向けて一層の暖かみを作品に与える効果が巧みに生み出されている。
個々の表現にも質の高さが感じられるところも多い。
掘り出しもの。