そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『ブロックチェーン革命』 野口悠紀雄

2018-08-11 23:44:15 | Books
ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現
野口 悠紀雄
日本経済新聞出版社


Kindle版にて読了。

自分が読んだのは今年の2月頃、ちょうどコインチェックの流出事件があった直後で、仮想通貨バブルがまさに弾けんとしていたタイミング。
本書が刊行されたのは昨年(2017年)の初めだが、既にブロックチェーンを仮想通貨とは切り離して、その画期性を論じている。
元々はビットコインの中核技術として生み出されたブロックチェーンが、基盤技術、或いは基盤思想として汎用性をもって注目されているというのも、技術の発展過程として面白いなと思う。

著者は、ブロックチェーンにより実現される社会の仕組みを表現する言葉として"trustless system"を紹介する。
ここで"trustless"とは「信頼に欠けた」ではなく、「個人や組織を信頼しなくても安心して取引ができる」という意味。
信頼を担保するためのコストが不要になる、また、人間が介在して管理したり運営したりするコストが不要になることで、圧倒的に低コストな仕組みで取引ができるようになることを、著者は強調する。
信頼が不要になるが故に、大企業や有名人でなくても取引に参加するハードルが下がり、システムは民主化するのだ。
決済についての叙述も多くあるが、後半部分で紹介される、保険やレンディングや教育・医療などの個人データ管理、そしてIoTの世界でのスマートコントラクトの事例などの方が、より興味深い。

今のブロックチェーンは、黎明期のインターネットみたいなものなのだと思う。
メールができて、Webブラウザができて、皆がインターネットを使うようになった。
やがて、検索サイトやWeb広告、ECサイトが出現し、インターネットに繋がるデバイスがPCからスマホに変わって、SNSを皆が使うようになり、今のメガ・プラットフォーマーが支配する世界ができあがった。
まず草の根で広がり、次に商業化し、ネットワーク効果でまた利用価値が増大していく、そんな広がり方をブロックチェーンも繰り返すのではないか、と個人的には思う。
だとすると、ブロックチェーンにおける「Webブラウザ」は一体何なのか、まずそれを考えるべきなのかもしれない。

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