そもそも論者の放言

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「これから10年、新黄金時代の日本」 ビル・エモット

2007-05-02 00:05:35 | Books
これから10年、新黄金時代の日本

PHP研究所

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ビル・エモットといえば、1990年に「日はまた沈む」で日本経済のバブル崩壊を言い当てたイギリス「エコノミスト」誌の元編集長で、近著「日はまた昇る」では日本経済に”復活宣言”を与えた(自分はどっちも未読)。
本書は新書版の新刊だが、ここ3年くらいの間に日本の雑誌に書いたコラムを集めたもので、書き下ろしではない。
書かれている話題も、本のタイトルにある日本経済の復活をテーマにしているのは最初の50頁ほどで、残りはアジア、アメリカ、ヨーロッパなど各地域の経済・政治状況に満遍なくスポットを当てて論じている。
やっつけ仕事で作られた本、という感じもしなくもないが、まあ新書なので仕方がないか。
ちなみに、本書中でも語られているが、目下著者の最大の関心事は中国経済で、日中の関係性をテーマにした著作を準備中とのことなので、近々発刊されるのかもしれない(ハードカバーでババンと)。

著者の立ち位置は、市場主義経済・自由貿易の信奉者で、生粋のグローバリスト。
日本の”復活”についても、経済・社会の”改革”が為されたがゆえのものであり、今後も市場経済を通じて徹底的な生産性の向上が実現されることを条件に”繁栄”を予言する。
目指すべきは、超長期の経済繁栄を続ける英米の姿、とする。
そういう点では、あまり目新しさを感じる考え方ではないのだが、世界の最貧国を救うためにも自由貿易は実現されるべきとの主張は自分に新しい視点を与えてくれた。
保護主義については、先進国や中進国相互の問題、あるいは、国内問題として捉えがちだけど、忘れてはならない視点だと思った。

それにしても、特筆すべきは著者の徹底的な自由主義経済に対する確信だろう。
グローバリズムと市場経済至上主義については、左右両方からの異論も多いけど、ここまで確信的に語られると力を帯びて見えるのも確か。
心情的にはグローバリズムには肩入れしたくない気持ちが自分にもあるのだが、一方で情緒に走らない形でのアンチテーゼの提示は現代においてもなかなか確立できていないようにも思う。

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