そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

暴走する”政治主導”

2010-04-14 22:35:01 | Politcs

故後藤田正晴氏が警告した“政治主導の落とし穴”にはまった民主党(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース

ダイヤモンド・オンラインの辻広雅文氏のコラムはいつも正鵠を射ていて感心させられることが多いのですが、今回も秀逸と思います。

後藤田氏が警告した”政治主導”の危うさは、民主党政権において「一国の政治を支えられるものではなくなるほどに劣化」してしまっている。
とりわけ目も当てられないほどの暴走ぶりを露わにしている亀井大臣の郵政改革。

 ここで問題にしたいのは、亀井改革案自体のずさんさよりも、なぜあまりに合理性を欠き、数字の検証が一つもなく、非常識とすらいっていい制度設計案が4月中にも閣議決定されようとしているのか、という政治の意思決定システムの問題である。亀井郵政・金融担当相は、非正社員を正社員化するとまでいいだし、だが、その費用の捻出方法には触れない。郵貯の預入限度額引上げが、民間銀行の預金流出を招くという批判を浴びると、バランスを取るために民間銀行のペイオフ限度額を引き上げようとする。まさにパッチワークである。

 こうした点についてメディアが質問すると、亀井郵政・金融相は、『君は日本人か。信じられないことを聞くんだな』などとまともに答えようとしない。論理的検証もないままに、この亀井案で閣内を統一してしまったのだから、鳩山首相の本質も同じである。民主党政権は、誠意を持って政策を決定、展開しようとはしていない。誰のための政策なのか、決定プロセスの透明性は失われ、説明責任力は低下し、意思決定システムは、自民党政権時代に比べ明らかに劣化した。ひと言で言えば、民主党政権は不真面目である。

そして、大竹文雄氏の著作を引用しながら、郵政問題の本質を日本独特の共同体社会の在り様に求めます。

 大竹文雄・大阪大学教授の最新刊である「競争と公平感~市場経済の本当のメリット」(中公新書)では、先進国のなかで、日本が市場競争に信頼を置かないと同時に、政府による再分配機能も重視しない(「自立できない貧しい人々の面倒を見るのは国の責任である」という考え方に賛成する人々が他国より少ない)、極めて珍しい国であることが明かされ、その理由がさまざまに検討される。その一つに、「地縁や血縁による助け合いや職場内での協力という日本社会の慣習が、市場経済も国も頼りにしない、と言う考え方を作ってきたのだろうか。狭い社会で良く知ったもの同士、お互いを監視できるような社会でのみ助け合いをしてきたのが日本人社会の特徴かもしれない」という観察がある。

 この部分に、郵政事業体を重ね合わせるのは、私だけだろうか。地縁、血縁、職場、狭く互いを監視できるがゆえの助け合い――郵政は日本独特の共同体の色彩を色濃く残し、将来も維持し続けたいと組織員、そしてことのほか亀井郵政・金融担当相が強く望んでいるのではないだろうか。自らの信念を貫き通すのは政治家としてあるべき姿かもしれないが、そうしたいのだといい続ければ経済合理的根拠を決定的に欠いていても実現するのだとでもいうような政治家は、撒き散らす害毒の方がよほど大きいのである。

自分も日本人の端くれなので、伝統的な共同体へのノスタルジーを頭から否定はしないが、共同体を解体して都市化・国際化を進めてきたのは日本人自身が選択したこと。
今さらセンチメンタリズムに駆られて二兎を追おうとしてもけっして幸せにはなれないということを自覚しなければならない。

コメント
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