4月2日付け日経新聞朝刊「経済教室」、ロバート・ディークル(南カリフォルニア大学教授)の記事より。
日本では、製造業に比べてサービス業の生産性が低いが、両者の生産性の差が円高を誘発する方向に働くことの解説。
またこの場合に円高になるのは、いわゆるバラッサ=サミュエルソン効果として知られている。製造業がつくるモノの価格は、貿易を通じて国際市場で決定される。国が豊かになると、サービスに対する相対的な需要が高まるため、サービス業の価格は上昇する。しかし製造業の方は、国際市場で価格押し下げ圧力を受けるため、さほど上昇しない。
このため、10~15年といった長いスパンでみれば、日本のサービス業の価格が米国のサービス業の価格に対し相対的に上昇するので、日本の物価水準自体が米国に比べ上昇する。そして極めて長期的には2国間の為替レートは購買力平価により2国間の物価比率に等しくなるか、円は対ドルで上昇することになる。
製造業/サービス業の生産性差が為替レートに影響するとは新鮮な視点でした。
本稿の結論としては、適正水準を越えた行き過ぎた円高は雇用と経済成長に下押し圧力を加えるので、円高によって製造業からサービス業への雇用移転を促進しようという考え方は採るべきではなく、サービス部門の規制緩和の推進によりサービス業の生産性を向上させればバラッサ=サミュエルソン効果により長期的には円安に結び付く、というものでした。