鈴木昭一郎先生(3)


 さて鈴木先生は、最初陸軍士官学校に学ばれたのですが、戦場に出る前に終戦になり、戦後の混乱期に京大仏文に入り直された方です。
 しかしまた、なぜフランス語を、なぜスタンダール研究を志されたのか。
 わたしは、それをうかがったことがありませんでした。
 奥さまさえお尋ねになったことはないのだそうです。
 社会が180度変わってしまった時、いろいろお考えになっただろうことは想像に難くありませんが。

 多感な青年期を軍国主義の真っただ中で過ごされた方が、2011年まで生きておられたわけで、それを思うと、変な言い方なのかもしれませんが、人間はずいぶん長く生きなければならないな、と思ってしまいます。

 先生は、体は少し弱られたとはいえ切れ味鋭い知性は最後まで健在だったそうですから、このたびの原発事故の際の政府の、東電の、そして日本人たちの対応をご覧になり、旧日本陸軍の愚行と本質を同じくするところを感じられ、日本破滅の危機についていま一度、考えをめぐらされたのではなかったかと思います。はからずも軍国オンリー日本の破綻も、経済オンリー日本の没落の始まりも目の当たりにされたわけですから。
 このことも、おうかがいすることはできませんでしたが。

 
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