静かな湖畔/Itsy-Bitsy Spider/Dans la foret lointaine


 札幌行っている間に来ていた新聞(日経)をみていると、22日のに面白い記事を見つけました。

 アーサー・ビナードという詩人の人の書いた「歌の内蔵型自動PR装置」というエッセーです。
 話の最後はパティ・ペイジ歌う『テネシー・ワルツ』が自己言及型構造になっているというものでこれが内蔵型自動PR装置だというわけですが(これ、「文学概論」で自己言及型とはどういうことかと説明したいときに使えそうだな、と思いつきました)その前に、われわれが『静かな湖畔』として知っているあの歌、よく輪唱で歌うあの歌のメロディーが、アメリカではItsy-Bitsy Spider(『小さな蜘蛛』と訳してあります)なる歌だという話が書いてあったのです。

 わたしは、ビナード氏が掲載している歌詞がどうもあの『静かな湖畔』のメロディにのらない気がするんですがそれはともかく、筆者によるとItsy-Bitsy Spiderは輪唱にはなってないし、輪唱には向かない歌なんだそうですね。で、日本で同じメロディーが輪唱になっているのを知ってびっくりしたんですね。
 それでこんなことを書いてます。

「しかし、慣れてくると『静かな湖畔』も実に愉快な歌だ。また、輪唱すると、郭公の鳴き声が森と湖にこだまする感じが出て、『小さな蜘蛛』のパクリではなく、立派な別天地であると、ぼくは認めるに至った。」

 ここで今度はわたしがびっくりしました。わたしは前から『静かな湖畔』は、フランス語民謡の Dans la foret lointaine と関係があるだろうな、とおもっていたからです。メロディはかなり違うけど、まさしく輪唱で歌われるものだし、歌詞はこんなのですから。

 Dans la foret lointaine on entend le coucou
Du haut de son grand chene il repond au hibou
Coucou, coucou, on entend le coucou.

 遠くの森にカッコーの声が聞こえる
 大きな樫の木の上からフクロウにこたえている
 カコ―、カコ―、カッコーの声が聞こえる

 (念のため申し上げておきますが、これ、フランス語民謡を知らなかったビナード氏を非難しようという気で書いているわけでは全然ないです。このように思わぬ類縁関係が思わぬ方向につながっているというのは民謡がらみでは非常によくあることです。わたしも英語の方でそんな歌になっているとは全然知りませんでした)

 Dans la foret lointaineのメロディーはここにあります。
 みなさんもこの曲でなにかご存じのことがありましたらお教えください。
このサイトでは『静かな湖畔』は「スイス民謡」となってますね。わたしは二番の歌詞は知りませんでしたけど、フクロウが出てくるんですね。それならますますDans la foret lointaineとの関連が深まりますね。

 上の写真の左側が、わたしがフランス語初級授業でときどき使っている歌詞の紙ですが(これ、hautとhibouと、アッシュ・アスピレの単語が二つ出てくるのでついでに教えられます)、解説には歴史的研究とかは全く書いてないです。フランス人の悪い癖でこういうフォークロアなものは、昔の歌だ、子供の歌だ、という以上に調べる価値がある、ということになかなか思い至らないんですね。まあ書いた人の手元に資料がまったくなかったんでしょうけど。






 


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