フランス語圏マンガのまとめ方

 先のエントリーでアメリカ・コミックが「外国の悪いもの」とみなされているだろうという認識を書きましたが、ここはちょっと議論の余地があります。
 なぜなら、フランス語圏マンガ自体、原点はやっぱりアメリカにあると思われるからです。十九世紀にフランスでは数多くの挿絵入り雑誌が出ていましたが、マンガの祖国はやはりアメリカです。ディズニーのミッキーは世界を席巻したわけで、フランスもその例外ではないです。公式的にはジャンルとしての「マンガ」は「吹き出しの組織的使用」によって成立した、という認識になっているようです。だからマンガ生誕の年はアメリカで Yellow Kidが登場した1896年です。アングレーム世界漫画祭でも1996年にマンガ誕生百周年を祝っています。

 シュぺールデュポンがアメリカで活躍する巻もあるんですが(レーガン大統領御用達のワインがひどい味になった。何かの陰謀だ。ワインならフランス人だ・・・てんでシュぺールデュポンが呼ばれるんです)、彼とアメリカン・ヒーローたちは実に友好的です。

 ちなみに現時点でフランス語圏マンガの全体像を考えるときの総括の仕方について考えるなら、四つの国の影響がその成立を支えているという考え方でそれができないかなと思うのですが、いかがでしょうか。
 四つとはつまりアメリカ、ベルギー、フランス、日本です。
 圧倒的なアメリカ・マンガの影響の下からはじめてフランス語圏マンガの独自性をうちたてたのはエルジェHerge'をはじめとするベルギーの人たちだったと思います。それにフランス共和国籍の人たちが刺激されるわけですが、例によって移民系の活躍する部分は大きいです。Superdupontを着想したゴットリブGotlib(1934年生)も両親はユダヤ系ハンガリー人で、父親は強制収容所に入れられている、という人ですね・・・
 そこに今、日本マンガ(+韓国manhwa)が洪水の如く入って既にいろんな影響を与えているわけです。これはたとえそのうちブームが去ったとしても疑いなくフランス語圏マンガの上になんらかの痕跡を残すでしょう。浮世絵がジャンルとしては滅びてしまってもフランス絵画に多大な影響を残したように。

 日本ではどうも、フランス人のアメリカ嫌い神話を誇張して面白がろうとする傾向がありますが、そういうのがなくはないにしても、今の世界のありのままの現実を知ろうとするなら、むしろ調査・勉強しなければならないのはフランス人の大きな「アメリカ好き」のあり方なんだと思いますよ。
 これは、別にサルコジ大統領誕生を待つまでもなく、ずっと前から存在している傾向です。
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コメント
 
 
 
フランス人は英語を喋らない (midi)
2007-07-26 17:12:08

「フランス人はアメリカが嫌い」と、「それゆえに英語はできても話さない」。この二つってずいぶん根強く定着していたように思います。

初めてフランスへ行ったのはもう二十年以上前なんですけど、飛行機で乗り合わせた女の子が「フランス人って英語喋らないそうだから」と「フランス語旅行会話」という本を見ながら飛行機に乗ってる間中、暗誦し続けてました。
彼女と到着当日のみパリ散策を一緒にしたんですが、郵便局の場所をある紳士に尋ねたら、実に流暢かつゆっくりした丁寧な英語で教えてくれました。彼女は「なんだ、フランス人も英語喋るじゃん」。
そりゃ喋りますよねえ(笑)。
(で、当の彼女は英語がぺらぺらで、件の紳士と話が弾んでましたよ)

私の知っているフランス人で英語を話「せ」ないのはかなりの高齢者と、家庭の事情でリセに行かなかったクリストフ君(現在35歳)だけ。話せるのに話そうとしないフランス人は皆無ですねえ。
 
 
 
それで (mid)
2007-07-26 17:22:36
何がいいたかったかというと「アメリカ嫌い」のポーズを取るフランス人は確かにいるけど、いやもしポーズじゃなくてほんとに嫌いだったとしても、食わず嫌いじゃないんですよね。
マクドはまずいっていうくせに、みんな入ってるし。
「嫌い」といえるほど、「嫌い」になれるほど、米国(のアニメや漫画、ハリウッド映画)の影響をまずはたあっぷり受けているわけで、下世話ないい方しますけど「嫌い嫌いも好きのうち」みたいな感じじゃないんですかね。違うかな?
 
 
 
言えてます (raidaisuki)
2007-07-26 17:33:39

嫌い嫌いも好きのうち、てのは言えてるかもしれません。
それから、フランスの大事な文化というのは、なんか不便だな、と思う場合も多いわけで、そのへんでフランス人がやせがまん張る機会が多くなっちゃいますね。

たとえばフランス料理はフランス文化の華かもしれないけど、毎食フルコース食べるわけにもいかない。時間も金もかかる。
マクドは(まあ、わたしも美味いとは思わないですけど・・・ (^_^;) )なんといっても便利で早い。
フランスで少し生活された方ならおわかりだと思いますが、昼休みの、時間のないときにうどんでもさっとかきこんでとりあえず腹を満たす、みたいなことができない。クレープでも食べるしかないです(あれ案外胃にもたれる。(T_T;) )。
 
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