Sukiyaki 2017 良かったねー Bilan 03. Klô Pelgag. Poésie. Traduction --- Mode d'emploi.


 クロ・ペルガグの「詩」について。長文になります。すみません。 

 クロさんの話題が続きますが、明日(8月30日。なぜかわたしの誕生日。(^o^) )の彼女のスキヤキ東京本番前に、対訳担当者として彼女の詩について、とっかかりの持ち方のヒントと思われるものだけ書かせていただきます(写真はスキヤキ最終日、コンサートのあとのサイン会で最後のお客さんへのサインが終わったところ。膨大な人数をこなしているうちに、クロさんはスキヤキ名物のフィナーレの熱狂を経験しそこねてしまいました。ちなみに通訳は金沢大学国際4年の山口さんです)。うーんわたし、クロさんから出発して『グローバル時代の詩とその訳の扱い方』みたいな本を書きたくなっています。      

 スキヤキ二日目の午前に吉本秀純さんのインタビューがありまして(吉本さん、インタビュー内容が載るのはLATINAですね、楽しみです)、またわたくしが通訳をつとめることに。この機会を利用させていただいて二、三、訳の疑問点を作者クロさん本人に聞いてみました。まあ時間が短かったのでほんと二、三点だけですが。             

 そのうちのひとつ、ファーストアルバム5曲目『トンネル』について。この「トンネル」って何なのかいまいちピンと来てなかったので聞いてみたんですが、クロさんによるとこれは、その向こうがある意味で「死」であるようなそういうトンネルなんですね。これはたぶんホントです(創造、create する人は往々にして「まともに」答えないものだと思いますが。そういうのはクリエイションに差し支えるんだと思うのです)。言われてみれば、ここはこれしか読みはありえないですね。まったくわたしはもの分かりの悪い人間で、へんな思い込みで実に頻繁にものが見えなくなる(このあと書いていることはおおむね「合ってる」と思いますけど)。
 まあそれはいいとして。だから「トンネルをふさげ」なんです。このアルバム全体、死からの生還、あるいは再生がテーマなんですから。タイトルの「錬金術」からして、日本語だと「錬金術」しか訳しようがなくてどうにもならないんですが、alchimieって不老不死の薬の開発術も意味してますからね。もちろん愛、エロスも入ってます(いかなる詩人が愛を歌わなかったであろうか・・・)が、そこにナマの肉体的接触(オープニングが「皮膚」の歌ですね)とその正反対の、真逆の、物理的接触によらない力=「磁場」「エックス線」などが入って「平衡」をとる、というできあがりでしょうか。ということでテーマ、全体構造自体はファーストアルバム、セカンドアルバムで繋がっていると思います。
 あと文学的暗示、レフェランス、引用などいくつも考えられるのですが(とくに ブルトン André Breton!)、それをがしっと立てると、現代においてはいわば大学で教えられるべき権威になってひとを拘束しにきてしまいますから、それこそシュルレアリスト的な心、クロさんの心にもとることになってしまうかなと思います(クロさんが名前をあげた文学者は、カナダの詩人ゴヴローClaude Gauvreauだけでした。クリエーターとしてはこれで十分なのです)。やっぱり日本の文科省が「文系の学問って何の役にたつんだ!」と難癖をつけるのも、「今の、日本の、大学における」という意味ならば、そしてとくに文学の、とくに(グローバル時代の)詩の取り扱いについての問いかけならば、まあ、わからんことはない、ですね。まあ話の仕方次第なのですが・・・     

 というわけで橋本委員長がちょろっと「難解」?と言われたクロさんの詩ですが、日本語でふつうに「難解」というものとは違うと思うので、まあ読んでみてくださいと申し上げておきます。対訳は十分直訳的で、でも字義的意味は通るように注意したつもりですので。読んでいるうち、ときに「あ、これは『あれ』かな」とふっと感じられて、それを反芻していくうちに心が「詩的」になるなら、それでいいいんだと思います。少なくとも「世界音楽の聴き方」が音楽の聴き方のベースとなったグローバル時代の詩の生かし方としてはそれでいいはずです。
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