JAZZ


 さて、興奮と知的刺激に満ちていたスキヤキ2011のお話もそろそろおしまいですが、後期授業が始まる10月まではまだ少し余裕がありますね。

 今日から金沢では金沢ジャズ・ストリートっていうのをやってます。
 初日は金沢大のビッグバンドジャズのサークルMJSが出るので、それだけ見に行きました。一瞬豪雨がきたので金沢駅前の屋根のついたところに場所移動。

 写真は最初のトゥッティの音を出したところです。あっ、左側のベースとドラムスとキーボードの人が入ってませんでした。すみません。

 MJSは、歴代のメンバーが10年くらいずうっとわたしのフランス語初級クラスにいたんですが、今ちょっと途切れちゃってますね。残念。

 彼等、かなりいい音出してると思いますよ。他の大学との交流コンサートに何回か行きましたが、絶対金沢大の方が勝ってました。
 でも、このジャズ・ストリートのプログラム見ると、なんか早稲田とか東京工大とかの方がメインぽい扱いになってますね。こんなんでいいんかね。なんか納得いきませんなあ。
 金大生、もっと厚かましく元気出せ! トリを取れ!(関西ではキンダイというと近畿大学ですが、金沢周辺では当然金沢大学のことですね)

 それはともかく、夏の残りはわたしはジャズ揺籃の地ニューオルリンズの旅でもちょこちょこ思いだしながら静養いたします。


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シンポジウム「アラブ諸国民主化運動と音楽」その5。最終回。女性。


(前のエントリーから続きます)

<粕谷雄一>
 サラームさんはいま最後にうまく全体のお話をまとめてくださいました。いろいろな出来事が連動しているということですね。
 さてそれでは音楽と社会の動きの関連についてほかにご意見をいただきたいと思います。

<アマジーグ・カテブ>
 興味深いことがあります。エジプトでのデモを見ていると女性の多さが印象的です。このような抗議運動が起こるのは、女性がある教育程度に達し、ある程度の解放を得ているということを意味します。母として、配偶者として、女性は社会の蝶番です。
 革命で大事なのはひとびとの「教育」と「文化」のレベルです。チュニジア、エジプトというのはアラブ諸国の中でも女性の社会進出が進んだ国でした。アルジェリアやモロッコよりも女性の解放が進んでいました。先ほどお話に出たようにエジプト政府は若者に文化を与えてなだめようとしたわけですが、文化こそまさに人々を目覚めさせるものだったと思います。文化が人々を、とくに女性たちを運動に参加させたのです。

 チュニジアとエジプトの二つの革命は民衆が起こした、真の意味でアラブの春と呼ぶにふさわしいものでしたが、反動はすぐに起こっています。軍隊が実権を掌握しています。両革命は窒息させられています。西欧の介入もあります。

 リビアでは西欧のおかげで反政府勢力、臨時評議会と呼ばれるものができあがったと言っていいでしょう。その主体は40年間カダフィ体制に従って働いてきた人たちで、それが今回反政府側に寝返ったということです。

 エジプトでムバラクを退陣させたのはCIAです。ずっと辞任を拒んでいた彼がCIAの要請の翌日に辞任したのです。ムバラクはCIAのエージェントだったのでしょうか。
 エジプトからは天然ガスのパイプがイスラエル、シリアに通じています。エジプトとパレスチナの国境には戦略的重要性があります。アメリカ合衆国はエジプトには大変関心があるのです。
 チュニジアは戦略的に重要な意味を持っておらず、アメリカはチュニジアの動きに何の介入もしませんでした。しかしエジプトに関してはそうはいかず、オバマ大統領はアメリカの利益を守るためにムバラクに退陣を要求したのでしょう。

 リビアは石油も天然ガスも豊富に産出し、NATOの利益に関わる国なのです。フランスとNATOを構成する国々はリビアを侵略しています。それは民主主義の名のもとになされた介入ですが、もちろん本当は石油のためです。
 リビアはいまやイラクのような国になろうとしています。メディアの伝えるニュースはあまり鵜呑みにしてはいけないと思います。情報が操作されています。

・・・(ここは少し録画がとんでいるみたいです)

 たとえば治安が悪くなるとか、イスラム原理主義の脅威とかが引き合いに出されます。革命が起こるとその影響がこっちにも及ぶぞ、と警戒心を掻き立てるのです。

 アラブ諸国もほかの国々同様民主化を、より一層の自由を渇望しているのです。しかしその道は平坦ではありません。まだ植民地主義の時代の後遺症が強く残っています。アラブ諸国の独裁者たちは西洋の傀儡でした。アメリカ、フランス、EUなど西洋が彼らを政権の座につけたのであり、今は西洋が彼らを遠ざけているのです。

<橋本正俊>
 音楽には力があると信じます。音楽に力があるからこそここにいるアーチストの皆さんは弾圧にも屈せずにいるのです。アマジーグさんの出演交渉をしていたまさにそのときツイッター情報で彼の逮捕が伝わってきましたが、それは情報操作されたものでした。日本でも震災情報の操作が問題になっているわけで、まったく他人事ではありません。

<ニコラ・リバレ>
 アマジーグさんを呼ぶことを一月に決めて、二月に話が動き出しましたが、三月に震災が起こりました。
 時間がたつにつれて今日のシンポジウムの内容がどんどん大きくなってきました。不思議なものです。アフリカの問題とアジアの問題は関係がなさそうでしたが、シンポジウムを準備しているうちに、共通点もいっぱいあるように思えてきました。どちらも政府への信頼、メディアへの信頼が問題となっているからです。

 短いシンポジウムで一部しかお話しできなかったですが、アルジェリアでも日本でもインターネットを使って情報が流通しているのは同じことですから、北アフリカの事情をアジアがもう少し知ることができれば、一緒にできることがあるかもしれないと思いました。

<粕谷雄一>
 グナワという奴隷の音楽を通じて主張を展開するアマジーグさんの姿勢、またギターという楽器を用いてトゥアレグのメッセージを世界に聞いてもらう活動を展開しているボンビーノの皆さんを見るにつけ、音楽の力というのは強いと感じます。

 それでは、時間はわずかしかありませんが客席の方からご質問をいただけますでしょうか。

<聴講者>
 なぜ女性の方がグナワのトランスに入りやすいのでしょうか?  社会での女性の地位ということと関係があるのでしょうか?

<アマジーグ・カテブ>
 マグレブにおいては女性の役割が大変低いといえます。社会的役割は家庭を守ることに限定されていて自由がなく、家にこもりきりで、与えられた社会的空間は結婚などの儀式の場しかありません。グナワの儀式、リラは女性にとって髪を振り乱し、トランスに入ることを許され、社会的心理療法の癒しを受けられる貴重な場なのです。
 ただ「アマジーグ」(またはイマジゲン)いわゆるベルベルの文化では女性の地位はもっと重要です。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の影響で女性の社会的地位は落ちてしまったのですが、トゥアレグやモーリタニアなどのアマジーグのある種の人たちは母系社会制を保っています。

(通訳のモハメドくんに、英語で!)あなたは日本語を、アルジェリア語を話す時そのままのミブリで話してますね(笑)。

<聴講者>
メディアの情報の正しさを判断するために注意されていることがありますか?

<アマジーグ・カテブ>
 情報の正しさを判断するのは難しいことですから複数の情報を比較することです。
 政府の公式なニュースは経済的、政治的見地から操作を受けていると考えて、言われている内容の背後を読む必要があると思います。警察の殺人事件の捜査では、その殺人でだれが利益を得るか考えるのが定石ですね。それと同じことです。
 たとえば日本では福島原発事故の報道の場合からも明らかなように、経済に対する配慮から報道が非常に操作されています。人間より経済の方が大事に扱われるわけです。
 原発で電気を作らなければならない、電気で機械を動かさねばならない、そうやって経済を動かさなければならない。こういう論理は世界に共通するものです。原発がないところでも同じ論理が、同じように人々を押しつぶしてしまいます。日本では放射能について、そのリスクについての情報が操作されますが、ほかのところでは貧困、悲惨についての情報が操作されるのです。
 粕谷さんが最初に言われたように、経済発展は政治的成長と歩みを同じくしなければならないと思います。人間を視野に入れずに野放図な経済発展を志向することは許されないのです。


<粕谷雄一>
 みなさま、どうもありがとうございました。まだまだみなさまとお話ししたいことはたくさんありますが、残念ながら予定時間を過ぎてしまいました。パネラーの皆さんには十分にご発言いただけなくて本当に申し訳ありません。

 これでシンポジウムを終わらせていただきたいと思います。
 今日は多数ご来場いただきましてまことにありがとうございました。

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 ということで、シンポジウムのご報告、終わりです。
 原発事故の話も関係してきましたが、最後に期せずして「女性」に関心が集中したのも示唆的ですね。
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