同業者の批判にこたえて


 金沢大の授業も二週目に入り、ようやく落ち着いてきました。 (^_^)y

 ところで文学部文学科のオリエンテーションでわたしがよく話す内容について、いろいろ批判をちょうだいしたりするんですよね。
 これはいまの日本の大学の現状を知っていただくためにもよいと思われるので、ちょっとわが同業者の批判と、わたしの感想(反論とまではいきません)を書いておきます。

 批判というのは主に、文学部文学科に来てこれから日英米独仏中に言語学の7つのコースからどれを専攻しようか選ぼうという一年生にわたしがよく話す内容は、ちょっとまずいんではないかい、というものです。

「『日本で接することのできるフランスって非常に限られているので、誤解が非常に多い』というようなことをあなたは言うが、誤解以前に何も知らないのが現状。『誤解』などと、否定的イメージを持つ語をなぜ使用するのか」

「『フランスについてはいくつか諸君も体験があると思います』などとあなたは言うが、聞く方はフランス体験など何もないのだ。だからプレッシャーに感じて、フランス関係はやーめた、と最初からひいてしまう可能性がある」

「今、大学に入ってくる人たちにフランス語の文化なんて言っても何のイメージもない、と思った方がいい。フランスという国がどこにあるのかも知らないかもしれない。高校での世界史未履修が問題になったが、地理だってあまり習っていない。大きなスポーツ大会でフランスの選手の優勝などがあれば、そういう国もあるなあ、と判るくらいである」

「つまり彼らにとってはフランスさえ銀河の果ての存在みたいなものなので、あなたみたいにいきなりアラブ・アフリカがどうのこうの言っても、おそらくてんで結びつかないのではないか」

 さて。(^_^;)

 いまの学生さんたちが例の「ゆとり教育」等で甘やかされ基礎教養を欠いている、という認識は一般的なものとなっています。わたしへの批判は大きな意味でこの認識から来ていると思います。
 そういう認識には、あたっているところがあるかもしれません。
 だから、たしかにわたしが話すことは、現時点で「フツブン」にお客を呼ぶためには逆効果なのでしょう・・・

 でも、それを認めた上で、やっぱり言っておきたいことがわたしにはでてくるのです。
 つまり、これって見方を変えれば、日本の進むべき方向性みたいなものを指し示してい気もする、ということです。
 なぜなら、もし今の若者たちが教養を欠いていると言えるなら、これまで日本の知識人と呼ばれる人たちに業病のごとくまつわりついていた妙な西洋崇拝もない、ということのはずですから(無自覚な対米崇拝傾向の方はもちろん健在だし大問題ですが)、彼らがどんどん関心と知識を「横に」伸ばすようにするのがいいのじゃないか、ということです。

 第二次大戦以前だったら「オーベーショコク=先進国」の思想、技術を必死にとりいれて追いつく努力をするたけでよい、いわゆる先進国以外の国々に目をやる必要はない、という態度でいけていたのかもしれません。

 でも、いまは違うんじゃないでしょうか。
 たとえば今日誰がアラブ世界の、イスラム世界の地球的重要性を否定することができるでしょう? あんまりこの国々のなかに「先進」国を見る人はいませんが。
経済方面だってとっくに、欧米だけ見ているのではすまない時代に入ってます。BRICs のつぎには VISTA が来るかどうか、というのが既に関心の対象になっている段階ではありませんか。

 去年、国際交流基金主催で開催された「アラブ音楽講座」、こんなにたくさん来られるとは、と驚いてしまうほど大盛況でしたね。(このリレー講座は、内容が本にまとめられて出版される予定になってます。もちろんアルジェリア音楽はわたしが担当してます。乞ご期待。 (^_^)v )
 それだけ心ある人は「自分はアラブのことを知らない。これではいけない。勉強しなければ」と考えているのです。
 これこそ正しい態度というべきだと思います。
 こういう心がけの人は若者の中にもいるはずだし、そこまで自覚してなくてもそういう傾向をもつ人は必ずたくさんいるはずですね。

 だから、

 お客の呼び込みには不適当かもしれないですが、やっぱりアラブだ、アフリカだという話は、場を考えながら続けていこうと思います。
 それと同時にフランスについても、あまり学生さんたちになじみがないのなら、こっちも最初から「おフランス」のフランスはパスして、わたしの知っているナマのフランスを語ろう、と思うのです・・・ となると、わたしの場合やっぱりフランスはアラブだ、アフリカだ、となっちゃうところがあるんですね。(^_^;)  どうしましょうかね?

 それはともかく一般論として、世界の実勢は変化するものなので、教育もその変化に対応していくよう努力するのがよいはずです。
 そうやって努力して日本の国と、世界とに貢献したいじゃありませんか。


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