ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

自衛隊音楽まつり~陸自音楽隊「桜と、デイゴと、大島椿」

2013-11-18 | 音楽

当日の様子はネット配信されたそうですね。
勿論、ヘタな席に座るならこちらの方がずっと細部まで見ることができるわけですが、
音楽というのは再現性の無いその瞬間、生の音を聴くことが全てです。

どんなに演奏者が豆粒のようでも、そのときにそこで聴くのが一番。
ネットの映像は後でも見られますしね。

という訳で、チケットを手配して下さった方と、青少年参加券を下さった
自衛隊広報のどなたか存じませんが係の方に心の中で手を合わせんばかりの思いで、
この日、わたしは九段に向かったのであります。

いざ靖国、じゃなくてその隣の武道館。

休みの日で寝坊したいところを叩き起こし、

「ちょっとでもいい場所で見たければ、早く並ぶのよ!」

と叱咤する母に向かって、息子はノンビリと

「聴こえるなら、ちょっとくらいいい場所でなくていい」

それを聴くなり、今日二回の公演チケットを持っているわたしとしては、
それもそうだ、と納得してしまい、車を停めた後にこれまたゆったりと
スープストックトウキョーで昼ご飯など取ってから武道館に向かいました。



武道館に入場する列は、1、2、3の列に分かれており、
列の最後尾にはこのように係の隊員さんが看板を持って立っています。
行けども行けども最後尾にたどり着けず、これだけの人が入れるのか?
と心配になるほど。



しかも、並んだとたん後ろにもあっという間に列が伸びて行きました。



この日の北の丸公園は素晴らしいお天気でした。
音楽祭り最終日にふさわしい秋晴れです。



人員整理係の海自隊員。
この日は陸海空から多くの隊員が供出され?警備や整理をこなしていました。
不思議と、整理係は全て陸自か海自からで、空自の制服は一人も見ませんでした。

二回目の公演の入場の際、わたしはこの水兵服の隊員さんに
大変お世話になることになります。(予告)



武道館に近づいて空を見上げると、雲一つない空。
小さく飛行機が見えています。



席は、二階の場合前列と真ん中から順に埋まって行きます。
もう少し上なら真ん中もあったのですが、ここに落ち着きました。
初めてにしてはまあまあの成果じゃないでしょうか。



二階客席部分。
後から思ったのですが、

「二階の最前列」

が、この音楽祭りに関しては最上席ではないでしょうか。
そこそこ客席に近く、フォーメーションもきれいに見られるからです。



今年のテーマは「力」。
パワーフォーピースつまり平和のための力です。

平和を維持するための防衛力は、つまり「武力」。
武力と聴くだけでヒステリーを起こす手合いにも、ひとつ冷静になっていただいて、
その力を平和のために行使するための組織、
それが自衛隊の存在意義であるということを改めて理解していただきたい。
と思って広報はこのようなテーマを決めた訳ではないとは思いますが、
まあいわば1足す1は2くらい当たり前のことでもあるんですね。

さらにぶっちゃけたところを言ってしまえば、

「戦争は常に平和を目的に行われる」

というのが有史以来の真実。
そして、ミリタリーパワーの不均衡は必ずそこに「戦争を生む」のです。

わたし個人の考えに過ぎないかもしれませんが、日本が戦争に突入していった、
その布石になったのは、軍縮条約で日本の武力が大幅に殺がれ、
世界のミリタリーバランスが不均衡をきたしたことでもあるのですから。

・・・という話に突入する前に(笑)コンサートの模様に戻ります。



まず、演奏会に先立ち各制服の音楽隊員たち一人ずつが1列にステージに並びました。
伊豆大島の災害でお亡くなりになった犠牲者、そして、
先日お話ししたフィリピンの台風被害で亡くなられた犠牲者の霊に対し、
全員で黙祷を捧げることから始められたのです。

客席も起立してしばしの祈りを捧げました。





そしてオープニングセレモニー。
国旗入場と国歌斉唱です。
ここにいる儀仗隊員は、第302保安警務中隊と言います。

陸上自衛隊の各方面警務隊直轄の警務科部隊で、この第302中隊は、
市ヶ谷の東部方面警務隊直轄です。

外国の国賓の来日の際儀仗を行うのがこの中隊で、その際、
特別儀じょう隊(仗という当用漢字が無いので、公文書ではこのように表記する)
を編成します。



国旗は掲揚されないので、国旗に対する栄誉礼が行われた後退場です。
儀仗隊長は兵藤幾太郎2等陸尉。

皆ほれぼれするほど姿勢が良く、かっこいいですね。
この儀仗隊員になるには、身長に条件があります。
見たところ、172センチプラスマイナス1センチくらいかな。





この後のオープニング演奏を聴くなり、息子が大興奮。
自衛隊の映像に乗せて流れて来たのは「英雄の証」

なんと「モンスターハンター」の曲です。
この曲ご存知ですか?
映像と音楽があまりにも合いすぎて、いきなりテンションがマックスになりました。



演奏会は4章による構成で、

第1章「大地」、
第2章「大海」、
第3章「烈火」、
第4章「大空」。


まずは陸自音楽隊中心の「大地」からスタートです。

ところでこの形、何に見えますか?
そう、桜の花びらですね。

演奏するのは陸自東北方面隊。曲は大河ドラマ「八重の桜」のメインテーマ。

 

あくまでもイメージですが、陸自音楽隊はおじさん隊員が多い。(イメージですよ)
こういったおじさんが軽やかにステップを踏むドリル演奏。

写真を撮ってみると、一人一人の体型とか顔とかを見てしまいますが、



全体の醸し出す統制美というのは、厳しく訓練された自衛隊ならではです。

この、横一列になって皆で歩んでくる隊形、これが始まると
ぞくぞくして鳥肌が立ってしまうのってわたしだけでしょうか。

この東北方面音楽隊が最初の演奏を行ったのは、震災被害に遭った地だからでしょうか。
背後のスクリーンには壮絶なまでに美しい桜の花びらが降り注ぐ映像が流れました。



そして、例えば海自や空自なら、若い女性隊員にやらせるであろう
旗ふり演技を、おじさんにさせてしまうのが、陸上自衛隊。
(単に女性だけで隊が組めるほど数がいないんだったりして)



別の衣装で旗を投げたりする隊は、若い男性です。



見よこのおじさん隊員たちの華麗なる演技を!

というか、この人たち、音楽隊員じゃないんだとしたら、
一体どこの部署から引っ張って来たんだろう・・・。


この演技をしたのは陸自西部方面音楽隊。
西部、つまり九州、沖縄を統括する方面隊です。
沖縄、つまり諸島部を含むわけで、この演技は「島唄」に乗せて行われました。

「島唄」。
勿論元から沖縄音階(ドミファソシド)を使った名曲中の名曲ですが、
改めて、この曲の良さ、すなわち今まで気づかなかったドラマティックな面を、
この日の演奏でわたしは見た気がします。



これですよ。このとき。

先ほども言いましたが、ドリル演奏でもし「見栄を切る」という部分があれば
まさに、皆が横一列で進んでくる、この隊形だとわたしは思うのですが、
(必ずこの隊形はクライマックスで行われる)
歌詞で言うと最後の「島唄よ風に乗り」の部分です。

わたしの近くに座っていたおばちゃんたちが、やはり同じように感じるのか、
この隊形で進んでくる部分ではなぜか歓声を上げて盛大な拍手をしていました。

・・・・まあ、気持ちは、よくわかる。


「島唄」の歌詞の本当の意味は沖縄戦の悲惨を歌ったものである、
という話を知っている者に取っては、自衛隊音楽隊の演奏するこの曲、
そしてデイゴの花を表すのであろう真っ赤な旗にも意味があるように見えて、
実に複雑な感興を呼び起こされてしまいました。

深読みすれば、東北の桜も、沖縄のデイゴも、かつてそこに在った人々、
そこに在ったがゆえに命を奪われた人々への鎮魂のしるし、と思えます。

この日のプログラムには椿の花の画像に、この日のテーマ曲でもあった
「花」の歌詞が書かれていました。
椿、それは伊豆大島の「大島椿」です。

「花は 花は 花は咲く いつか生まれる君に」


わたしは思うのですが、自衛隊音楽隊の存在とは、ただセレモニーの合間に、
皆に慰安目的の音楽を還元するためだけのものではありません。

伊豆大島で亡くなった人々への黙祷からこの演奏会が始まったように、
自衛隊が護るべきこの国土にある人々の心を励まし慰めること、
それ以上に、この国に在って救いの手も及ばぬ非業によって命を失った人々の、
その魂をも慰撫する役目を担っているのが、彼ら音楽隊なのです。

この二曲の始まりによって、わたしは深いメッセージを受け取ったような気がし、
そして、災害派遣で泥にまみれ雨に濡れながら任務を果たす陸自隊員たちにも、
あらためてその存在に感謝したい気持ちになりました。





しかし(笑)、いい意味で息抜きというか、楽しませてくれたのが、
合間に入ってくる米軍の音楽隊の演奏です。

昨日「海軍の歌姫」と書いてしまいましたが、間違いで「米陸軍の歌姫」でした。
去年真っ白なロングドレスで歌っていた人ですよね?

今年は「歌姫」一人だけでなく「歌王子」との息の合ったデュエットを聴かせてくれました。
曲は「スリラー」に始まり、「ユーアーノットアローン」。
マイケルジャクソンの名曲です。(わたしの大好きなナンバーです)

アメリカと日本の関係、というのも色々とあるのかもしれませんが、ここは単純に
「トモダチ」であることをお互いに感謝し合おうじゃありませんか。

少なくともあの大災害の後、アメリカは、そしてアメリカ軍は

「君は一人じゃないよ」

というメッセージを送ってくれ、日本人は皆感謝しました。
ここで彼らの演奏を聴いていると、それでいいのだ、と思えます。 
 


 

なんと、最後にはEXILEの「ライジングサン」を日本語で歌い、観客大興奮。



続いては陸上自衛隊中央音楽隊。

第302保安警務中隊の儀仗との競演です。
曲は映画「バックドラフト」から、「ショウ・ミー・ユア・ファイアー・トラック」。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」のハンス・ジマー作曲です。
実にヒロイックな曲と、儀仗との競演。

ひらひらと旗を振る女性のトワラーや歌手を繰り出して「スマートな空自」「粋な海自」
という印象であったこの日の演奏会で、陸自はそのイメージ通りどちらかというと
質実剛健、男臭く、無骨な印象すらありましたが、わたしはむしろそれらを
「陸自らしい」と感じ、その陸自カラーにかえって安心感を感じました。 


しかし。

その陸自音楽隊が演奏するは、花の名に秘めた慰霊の歌。
「強くなければ陸自ではない」、「優しくなくては陸自ではない」というモットーそのままです。




そして純白の衣装を纏った儀仗隊の「粋」、そして「スマートさ」。

これぞ陸自、これぞ男、(女性隊員も多いですが、イメージですよ、イメージ)というステージで、
わたしはすっかり陸自ファンになってしまったのでした。


(第2章『大海』に続く)