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パイレーツ・オブ・ソマリア

2012-07-06 | 自衛隊


しばらくコメント欄で「引き寄せの法則」ということについて対話していたのですが、
「あることに関心を持っていると、何故かその情報が向こうから飛び込んでくる」
というちょっとした「(情報)引き寄せの法則」を実感したことのある方はおられませんか?

昨日、「ロータス7」という車の話題をコメント欄に頂きました。
このことについて返事を送って、何となくテレビをつけると、
チャンネルではちょうど「ロータス」のエンジニアのドキュメンタリーをやっていました。

   

勿論、この番組の車は、話題になっていたオールドカーのロータス7ではありませんが、
テレビをつけるなり「ロータス」と聞えて来た、そのあまりのタイミングの良さに驚きました。
しかし、驚くのはこれで終わらなかったのです。



この「トラベル・チャンネル」では、広いアメリカのそこここで起こる色々な事象、
話題の人物や地域の施設や事件なども紹介する番組が多いのですが、
なぜかこの「ロータスのエンジニア」の直後に紹介された話題が、

「ソマリアの海賊に襲われて、ネイビー・シールズに救われた船長と、
現在そこに展示されているそのときのライフボート」

という話題だったからです。

今回、呉で護衛艦「さみだれ」に乗艦して、説明を聞き。
「さみだれ」もまたソマリアに派遣されていたことを知ったというのは大きな収穫の一つでした。
その記事に対して、読者の新さんから興味深いコメントをいただいたばかりでもあったので、
続けざまに軽くびっくりしてしまいました。

この時いただいたコメントは、他にも皆さんにお伝えしたいことが書かれていたのですが、
それについてはまた稿を別にすることにし、
今日はこの「パイレーツ・オブ・ソマリア」について、まずお話をしたいと思います。

まずは新さんのコメントからご覧ください。

ソマリアの海賊について も、放射能と無関係ではない事、中尉殿はご存知ですか?
ある先進某国が合法で、ソマリヤ沖の海峡に放射性廃棄物を大量に投棄したとの事。
そのせいで、ソマリヤの漁民は漁業による生活が出来なくなり、パイレーツになったとの事。
しかし、ホルムズ~ソマリヤ沖は、最重要オイルラインですから、
一体誰が、そんな所 に投棄したんだか・・・。
信じられません。

民主議員の平田健二が(太字にしているのは、この議員の選挙区民へのアピールです)
「お話の中の出来事」とのたまったことについて、非難したこのわたしですが、しかしながら
「なぜ近年このような問題が起きてきたのか、なぜ彼らが海賊になったのか」
までは深く考えたことがなかったので、この話には驚愕いたしました。

今「海賊」となっているソマリア人は、もともとは輸出用のマグロなどを捕って生活していました。
ソマリアの内戦で中央政府が無くなり、そういった魚類の輸出ラインが途絶えてしまった後に、
とくにヨーロッパの船団がやってきて、彼らの漁場で捕獲をするようになり、
すっかり彼らは生活の糧である漁業を失ってしまった、というのが当初の理由です。

そのころ、ソマリアの軍事政府が、おそらくは外貨獲得のために、欧州の企業との間に
「ソマリアの沿岸に産業廃棄物を投棄しても良いという条約」を結んでしまいました。
合法で、内容物を問わず産廃を投棄していいのですから、大国にとってはもっけの幸い。
自国で処理困難な産廃放射性物質含む、を捨てまくったというわけです。

コメントにも書いてありますが、この放射性物質が、決定的に彼らを叩きのめすことになります。
漁民を中心に地域民数万人がこの影響で発病したと言われ、
残った者は海賊になるしか仕方なくなったというわけです。

テレビは、タンカーが海賊に襲われて、船長がライフボートで人質として拉致されそうになった話、



ネイビーシールズが船長を救いだしたヒロイックな行為を紹介していました。



結果として海賊の手から船長は救われ、めでたしめでたしの結末となっていました。
ところで、ここでもう一度我らが海上自衛隊の話に戻すと・・・。



護衛航路はこのようになっています。
実際は海賊の出没地域はほとんどアデン湾であることがわかりますね。
艦船による護衛だけでなく、海自はP-C3二機などの哨戒機を出して、警戒監視をしています。




海賊などに対応するための、米軍との合同訓練における我が海上自衛隊の写真。
映画の撮影の合間に撮られた写真、といっても信じてしまいそう。
それにしても、
圧倒的ではないか我が軍は。(イケメン率が)



これは一般船を空と海から護衛する自衛隊の雄姿です。
ぴったりと寄り添う護衛艦の姿は、守られている人々にはどんなに頼もしく映ったことでしょう。


ところで、今年の1月、ソマリア海賊が貨物船だと思い込んで攻撃した船が、
実はスペイン海軍の艦船でした、という話がありました。
慌てて逃走したパイレーツ・オブ・ソマリアでしたが、軍艦に逆らって勝てるわけもなし。
あっという間に拿捕され御用になってしまっています。

そうかと思えば、あの、ロシア海軍が、小さな漁船程度の海賊船を、
あらゆる武器を総動員して、無茶苦茶に破壊しつくす映像もありますね。
このロシアに見つかったが最後、海賊はもうこの世とお別れの覚悟をしなくてはいけません。
一リットルの水だけ与えられて、舵を壊されたボートで「インド洋に放置の刑」にされ、
別の国の船発見されたとき、海賊は全員死に絶えていたという話もあったそうです。

おそロシア・・・・。


このように、おおむね情け容赦ない世界の海軍さんたちですが、
もし海賊が捕まったのが我が自衛隊であったら、彼らはどうなるのでしょうか?

まず、国際協定に則って、海賊たちは日本の裁判を受けることができます。
身柄拘束中はエアコン付きの快適な房で、三食ご飯付き、勿論拷問なし。
もしかしたら、海賊をしているよりずっと穏やかで満たされた生活が送れるかもしれません。
日本食が口に合えば、の話ですが。
もともと彼らは自分たちが食べないマグロを生活のために仕方なく捕っていたわけですから、
魚の煮つけなんか出されても食べられない可能性は大いにあります。

イギリスもパイレーツと戦ってきた国ですが、何と言っても紳士の国ですし(冗談ですが)
本家「パイレーツ・オブ・カリビアン」でも書かれていたように、海国であるイギリスは
むしろ海賊を圧迫しながらも利用し、雇う側でもあったわけですから、理解があるのか?
これも法律に則った、それなりのちゃんとした待遇で彼らを処するようです。
アメリカは、裁判までは一緒ですが、刑務所生活がかな~り過酷であるとのこと。
中国は・・・・海賊?そんなものいましたっけ?見たことないなあ(独自に解決?)だそうです。

このように、アデン湾での各国の海軍による護衛、反撃活動が広がりを見せるに従い、
海賊たちは活動範囲をインド洋側に移していっているそうです。

今回、こんな画像を見つけました。



「第150合同任務隊」
左からドイツ「F-213 アウクスブルグ」
日本「DD-106さみだれ」 
ニュージーランド「F-111テ・マナ」
日本「DDG-175 みょうこう」 イタリア「F-573 シロッコ」
不明「オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート」
アメリカ「CG-55レイテ・ガルフ」
日本「AOE-422 とわだ」
アメリカ「DD-985 クッシング」

見よ堂々の大艦隊。

ここでふと、以前「陸軍潜水艦まるゆ」について書いたときに挿絵を拝借した、
小沢さとる先生の潜水艦漫画「青の6号」を思い出してしまいました。
国際連合潜水艦隊が、悪の世界組織マックスと戦う、というあの構図。
まさに、現在それがここに実現しているではないですか。

国際組織「マックス」も、「パイレーツ・オブ・ソマリア」も、「絶対的な悪」であり、
せん滅すべき世界共通の敵、という世界の認識のもとに存在しているわけです。

しかし、ここでもう一度、新さんに頂いたコメントに立ち返ってみましょう。

「放射性物質を不法投棄した大国」

これはどこのことですか?
そもそも、最初に、ソマリアが政情不安の無秩序状態であるのをいいことに、
マグロなどを無茶苦茶に乱獲てソマリア漁民の生活を奪ったのは、一体どこの国?

そして、我が日本も、ただ被害者だけと言いきれない部分があります。

これだけロシア始め非情な各国の軍の皆さんが、情け容赦なく海賊退治をしているのに、
どうしていつまでも海賊が無くならないのだと思われませんか?

海自が護衛を派遣することに、案の定、国内でああだこうだとやっている間、
日本所有の船は狙われ放題でした。
一説では、このとき日本は海賊に身代金を三度にわたって350億~600億円の身代金を払い、
この巨額の金で海賊はビジネスとして完全に成り立ち、成長すらした、というのです。

護衛をつける費用は高額で、おそらく、日本に限らず、
「海賊への身代金」=「ヤクザに払うみかじめ料」
というように割り切って支払ってしまう国が多かったという現実もあったでしょう。

とにかく、海賊ビジネスは三日やったらやめられない、ということになってしまったのも、
気前よく身代金を払ってしまう日本のような国のせい、と言えないこともありません。

(そしてそのツケを払うために危険な任務に就かされるのが自衛隊・・・・)


しかし、こうして考えると、海賊にならざるを得なかったソマリア人の事情も大いに同情できますし、
海賊がいつまでも無くならないのも、ロシア軍のように徹底的にやれない日本をはじめとする
多くの国々が、そんなソマリア海賊に対して「アマい」から、とも言えます。
勿論、彼らに対する同情からというわけでもないでしょうが、どちらにしても、
この複雑な世界には、「根源的な理由の無い絶対悪」など存在しないものなのです。
たぶん。


絶対的な悪の組織とされる漫画「青の6号」の「マックス」にも、
パイレーツ・オブ・ソマリアのように、そうなるべき理由があったのかもしれません。
だからって、どちらもやっていいことと悪いことがあるでしょって話ですが。