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預言者伝29

2011年12月29日 | 預言者伝関連

100.如何にしてムスリムたちに不運が回ってきたか:

  多神教徒たちはこのようにして負けた後、女性らに追い付くと逃げて行きました。その様子を見たムスリム軍の射手たち(弓を射る人たち)の幾人かが、ムスリム側の勝利を確信し、持ち場を離れました。射手軍の長であるアブドゥッラー・イブン・ジュバイルがアッラーの使徒(平安と祝福あれ)の忠告を思い起こさせても、彼らは耳を貸さず、多神教徒たちはもう戻って来はしないだろう、と思い込んだためでした。ただアブドゥッラーの忠告に留意した数名だけが、その場に留まりました。このような状態にあったムスリムたちの不意を突こうと、多神教徒たちが彼らの背後に現れました。そして一人が叫びました:「ムハンマドは殺された!」と。後退するムスリムたちを多神教徒軍が一撃することで戦況のチャンスは奪われました。確かにこの日は災難の日でした。そして敵軍はアッラーの使徒(平安と祝福あれ)ただお一人に狙いを定め結集すると、投石により彼(平安と祝福あれ)の頭、唇が負傷し血が流れ出しました。そして預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は言われました:「自分らの主へと導く預言者の顔から血を流させる民が如何に成功するのでしょう!?」

  ムスリムたちは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)がどこにいるのか分からずにいました。アリーが使徒さま(平安と祝福あれ)の手を取り、タルハが彼の身を起こすことで預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)はやっと両足で立つことができました。それほどまでに預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は負傷されたのでした。

  これらの出来事は決して敗北を意味するものではありませんでした。軍隊が遭遇し攻撃を再開するきっかけでしかありませんでした。ムスリム軍内に起きた後退や災難、士気の乱れ、イスラームとムスリムたちの大きな力となっていた勇者たちの殉教すべては、射手たちのわずかな不注意と、アッラーの使徒と交わした約束を最後の最後で破ってしまったこと、そしてアッラーの使徒によって任せられた持ち場を放棄してしまったことが原因でした。次のアッラーの御言葉にもあります:「本当にあなたがたが、アッラーの許しの下に、敵を撃破した時、かれはあなたがたへの約束を果たされた。だがかれが、あなたがたの好むもの(戦利品)を見せられた後、しりごみするようになり、事に当って争いはじめ、ついに命令に背くようになった。あなたがたの中には、現世を欲する者もあり、また来世を欲する者もある。そこでかれは試みのために、あなたがたを敵から退却させられた。だがかれは、もうあなたがたを許された。アッラーは信者たちには、慈悲深くあられる。」(イムラーン家章152節)

 

101.愛と犠牲の素晴らしさ:

  アブー・ウバイダ・イブン・アル=ジャッラーフは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の顔に刺さっていた二つの環の一つを取ると、前歯が抜けてしまいました。もう一つを取ると、残りの前歯も抜けてしまいました。またアブー・ドゥジャーナは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を守るため、放たれる弓をその背で受け止めました。サアド・イブン・アビー・ワッカースは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に渡される弓を放ちながら、「私の両親をあなたのために犠牲に捧げましょう。」と言うのでした。

  クターダ・イブン・アン=ヌウマーンは目に傷を負いました。頬まで垂れ下がり飛び出た目玉を預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)がその手で元に戻すほどひどいけがでした。

  多神教徒軍は預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の殺害を狙っていました。アッラーが望み給わないことを実現させようと躍起になっていました。そして10名ばかりの敵が預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を囲いましたが、タルハ・イブン・ウバイディッラーが彼らと争いました。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を守りとおしたその手は負傷し、腕は痺れました。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)がある岩の上に登ろうにも傷のために出来ずにいると、タルハは彼の下に座って預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を登らせました。そして礼拝の時間には、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は座ったまま礼拝を先導し、皆と祈りました。

  人々が敗北によって倒れていた時、アナス・イブン・アン=ナドルだけは立ち続けていました。彼は預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の召使であるアナス・イブン・マーリクの父方のおじにあたる方です。このアナスに会ったサアド・イブン・ムアーズが話しかけました:アブー・アムル、どこに行くのだ?アナスは答えました:天国の香りへと。サアドよ、私はすでにそれを見つけた。アナスはムハージルーンとアンサールの男たちが集まっているところに行くと言いました:「君たち、どうして座っているのだ?」皆が言いました:「アッラーの使徒さまが殺された」アナスは言います:「じゃあ彼がお亡くなりになった後、君たちは一体どうするつもりなんだ?さあ立ち上がり、アッラーの使徒さまがお亡くなりになったが如く、死のうじゃないか。」そのまま彼は敵に向かって行き、殺されるまで戦い続けました。彼の甥であるアナスは次のように言い残しています。:彼には70ほどの傷跡があったのですが、彼の姉だけが指先から彼であることに気づくことが出来ました。

  このほかにも様々な教友の話が残っています。

 

(参考文献:「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P233236

 

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