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 子供のかかりやすい感染症には、インフルエンザ、はしか(麻疹)、三日はしか(風疹)、水疱瘡(水痘)、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)、手足口病、感染性胃腸炎、肺炎球菌感染症などがあります。感染症にかかるのを防ぐには、衛生意識を身に付けて、手洗いをこまめにするなどの対策が有効ですが、ワクチンの接種という手段もあります。

 小児用の肺炎球菌ワクチン(ワイス社(Wyeth Pharmaceuticals Inc.)、2009年10月にファイザー(Pfizer Inc.)が買収)の7価肺炎球菌結合型ワクチン「プレブナー(Prevnar)」)は2009年10月、厚生労働省が正式承認しました。急性中耳炎、肺炎、髄膜炎、菌血症など重症の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)感染症を予防できるワクチンは、アメリカ、イギリスなどの十数か国が既に定期接種化しています。日本でも2010年2月下旬に生後2カ月以上9歳以下が対象で、任意接種となります。

 子供のかかりやすい感染症の一つ、感染性胃腸炎(Infectious gastroenteritis、Infectious diarrhea)は、発熱、下痢、嘔吐、腹痛などが現われる(熱が出てから、嘔吐や下痢などの腹部症状が遅れて出ることもある)症候群です。細菌(病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ、カンピロバクタなど)、ウイルス(ロタウイルス、ノロウイルス、腸管アデノウイルスなど)、寄生虫(クリプトスポリジウム、ランブル鞭毛虫、アメーバなどが)が感染性胃腸炎を引き起こします。



 感染性胃腸炎の発生状況は、ノロウイルスによるものが12月のピークを形成し、ロタウイルスによるものが春のピークを形成しています。過去のデータから見ると、例年、10月始め頃から増加し始め、12月頃に第1のピークを、1月から3月初旬に数度のピークを迎えた後、3月の中旬から減少傾向になり、夏休みの8月の中旬に報告数が最も少なくなります。

 2010年の感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第1週から2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多いそうです。都道府県別では宮崎県(20.8)、愛媛県(18.5)、大分県(17.7)、島根県(16.7)が多いのだそうです。

 2009年12月には例年と比べて感染性胃腸炎の発生報告が非常に少なかったのですが、それは新型インフルエンザの感染予防のためにとった「手洗いの励行」などが感染症予防に功を奏したと考えられており、今年に入り、感染性胃腸炎の発生報告が例年より多いということは「手洗いの励行」が疎かになってきているためとも考えられ、これは新型インフルエンザの再度の流行の下地を作ることにならないか心配です。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」では、子供を守ることはできないのです。

 ロタウイルスによる感染性胃腸炎の予防のための子供用の経口生ワクチン(商品名:RotaTeq、RV5)が、アメリカ合衆国では、2006年にアメリカ食品医薬品局(FDA)によってワクチンとして認可されており、2007年からは、アメリカ合衆国の子供の定期予防接種に加わっています。

 生化学者“Morris Selig Kharasch”が作り出し、特許権を得た「エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム(sodium ethylmercurithiosalicylate)」は、アメリカの製薬会社「イーライ・リリー社(Eli Lilly and Company)」によって、「メルチオレイト(Merthiolate)」という商品名で製品化されます。それが「チメロサール」です。

 チメロサール(thimerosal)は、水銀を含む(質量ではおよそ49%)有機化合物で、その殺菌作用から、いろいろな薬剤に添加されて保存剤・防腐剤として使われてきました。薬剤に病原体が混入して薬剤の使用で感染症となってしまうのを防ぐためなどの目的で使われてきました。インフルエンザワクチンの保存剤としても水銀化合物であるチメロサールが従来から用いられてきました。

 “Vaccines, Autism and Childhood Disorders: Crucial Data That Could Save Your Child's Life”(2003年3月) の著者「バーナード・リムランド(Bernard Rimland)」は、2000年4月にチメロサールが原因で自閉症を起こすという仮説を発表します。世界保健機関(WHO)のワクチン安全性委員会(Global Advisory Committee on Vaccine Safety)は、「ワクチン中のチメロサールと子どもの神経発達障害の因果関係を示す決定的な証拠はない」と報告しますが、そのような見解がある限り、「チメロサールをできるだけ添加しないワクチンの使用を早急に進めていくべきである」ともいいます。日本においては、厚生労働省が製薬会社に対してチメロサールの除去あるいは可能な限り低減化した製品の開発を要請しました。

 インフルエンザもワクチンによって(感染は防げませんが)重症化を防ぐことができるといわれています。国産の新型インフルエンザワクチンは、比較的小規模の4団体のみが製造しています。その4団体とは、財団法人化学及血清療法研究所(熊本市、「化血研」)と財団法人阪大微生物病研究会(大阪府吹田市、「微研会」)、学校法人北里研究所生物製剤研究所(埼玉県北本市、「北研」)、デンカ生研株式会社(東京都中央区、「デンカ」)です。

 2009~2010年シーズンの季節性インフルエンザワクチンのチメロサール含有量は、(1)化血研:1mlバイアル(無添加)、(2)デンカ:1mlバイアル(4ppm)、0.5mlシリンジ(4ppm)、(3)ビケン:1mlバイアル(8ppm)、0.5mlバイアル(無添加)、0.5mlシリンジ(無添加)、(4) 北研:1mlバイアル(5ppm)、0.5mlバイアル(無添加)、0.5mlシリンジ(無添加)です。全部で9種類ありますが、チメロサール除去製品は、化血研の1mlバイアル、ビケンの0.5mlバイアルと0.5mlシリンジ、北研の0.5mlバイアルと0.5mlシリンジの5つです。ここにいうppmは、1mlに1マイクログラム(1000分の1ミリグラム)含有するということです。

 バイアル(vial)製剤は、小瓶に薬液が充填されている製剤で、必要量を注射器で抜き取ります。抜き取る頻度が多いと、病原体で薬液が汚染される可能性があります。しかし、1mlは成人の2回分で、当日中に使用されないときは廃棄することになっていて、汚染の可能性はごく小さい。シリンジ(syringe)製剤は、あらかじめ注射器に薬液が充填されている製剤です。病原体による汚染の可能性はないので、防腐剤チメロサールを無添加にできます。



 季節性インフルエンザワクチン「化血研1mlバイアル」は、昨シーズンより、保存剤としてチメロサールの代わりにフェノキシエタノールが用いられるようになりました。これは新型インフルエンザワクチンの「化血研1mlバイアル」でも同様です。「フェノキシエタノール(phenoxyethanol)」は海外での使用実績は長く、国内でも6年前から使用されているそうです。フェノキシエタノールは、防腐殺菌剤として化粧品に使われる成分のひとつで、安全性に問題はないと言われています。殺菌作用が強くないことから避けられていた面があります。

 保存剤としてチメロサールを含んでいるワクチンの接種により、過敏症(発熱、発疹、蕁麻疹、紅斑、痒みなどが現われたとの報告があるために、チメロサールを減量したワクチンが増え、チメロサールをワクチンの保存剤としてできるだけ添加しない方向にあります。

 1928年のオーストラリアでの予防接種事故(ジフテリアの予防接種の注射薬液に病原体が混入して注射を受けた子供の多数が死亡した)以降、細菌の増殖を抑えるのに十分な殺菌剤を含むものでなければ、細菌が増殖可能な生物製剤は多人数用の容器に入った製品としてはいけないという意識が高まり、2人分に使用される「1mlバイアル」には、殺菌剤(保存剤)が含まれます(1人分の「0.5mlシリンジ」には無添加)。すべて、シリンジにすればよいのですが、コストの問題があります。しかし、やがて、すべてプレフィルドな(prefilled)シリンジ(「薬剤充填済み注射器」)になるとは思われます。

              (この項 健人のパパ)

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